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ぜひ全ての人に知っていてほしい「バイスティックの7原則」⑴ 〜個別化〜

「バイスティックの7原則」って?

バイスティックの7原則とは、アメリカのケースワーカーのフェリックス・P・バイスティックさんが、著書である「ケースワークの原則(1957)」の中で示した、ケースワークの基本的作法のこと。

これは、利用者と援助者の間でラ・ポール(相互に信頼関係がある状態)を形成するための作法で、以下の7つから構成されています。

①個別化 ②受容 ③意図的な感情の表出 ④統制された情緒関与
⑤非審判的態度 ⑥自己決定 ⑦秘密保持

この原則は、福祉に関する内容の書籍の中で示されてはいますが、福祉に従事している方に限らず、今この文章を読んでくださっているあなたにとっても、生きていく上で他の人とラ・ポールを形成できるかどうかというのはとても重要なことだと思います。
という訳で、ここでは全ての人に知っていてほしいバイスティックの7原則についてお話したいと思います!

今回は第1回ということで、7原則の1つ「個別化」に焦点を当ててみました。

「個別化」とは?

福祉的意味)
利用者の状況は例え似ていたとしても人によって少しずつ違っていて、それに対して感じる困難さや抱える問題も異なっています。

そのため、利用者の人格や周りの環境について自分なりに決めつけること(ラベリング)や、同じような問題を似ているからといってまとめ、他の利用者と同じ方法を取って解決すること(カテゴライズ)はしてはいけません。

つまりその人を「その人」として捉え、他の人と分けて、見たり接したりするということです。下の具体例から、捉えていきましょう。

「個別化」の具体例

全盲(両目とも目が見えない)の女性。「近所のスーパーまで行けるようになりたい」という思いがある。
以前全盲の男性に、1週間に1回自宅からスーパーまでの行き来を手伝ってくれるヘルパーさんを提案したら喜ばれたので、今回も…!
しかし、その計画を提案しても女性は曇り顔でうつむくだけ。
続けて話を聞いていくと、女性は「自力で歩いてスーパーに行きたい」ということだった。

「スーパーに行きたい」という同じ思いをもつ利用者さん。
全盲だからという理由で、1人でスーパーまで行くのは無理だと無意識的に判断し、他の利用者さんのケースから勝手に決めつけてしまうという例でしたが、なかなかありえそうな例だと思いませんか?

「個別化」からみた、ラ・ポール形成への課題

福祉の現場だけでなく、私たちは他の人とコミュニケーションをとるとき、無意識的に自分が今まで体験してきた事柄や出会ってきた人々、育ってきた環境から、自分なりの判断や勝手な思いこみをしてしまい、それが原因で相手のことを間違って解釈してしまうことがあります。

そして、間違っていることに気づかないまま過ごしてしまうことも多く、話の内容が噛み合わなくなったり、後々トラブルの元になってしまったりと、問題を引き起こしてしまうこともしばしば……。

思いこみへの対処

先ほども言った通り、思いこみは無意識下で行われています。
思いこみをしないようにすることは本当に難しいですが、「自分は思いこみを無意識にしているかもしれない」という自覚をもつことで、自分の思いこみに疑問をもつことができます。
そしてその疑問が思いこみを減らすことに繋がります

その簡単な例を1つあげると…

納豆×〇〇

テレビなどでもよくあるテーマですが、あなたなら何を入れますか?

一般的に醤油やカラシなどは納豆の中に付属として入っていることが多く、普通だと思う人も多いと思いますが、人によっては「砂糖」をかけて食べるのが普通です。

このように自分の「普通」と他の人の「普通」が異なることがあります。
それは、その人が育ってきた環境が「その人の世界」となり、「その人の世界」が「普通」であると考えてしまうからです。

「普通」とは、多文化社会において多数派の考えを言います。
つまり、納豆に醤油やカラシをつける人が多いから、それが「普通」だと捉えられてしまっているのです。
ちなみに私の家では「醤油」もしくは「岩のり」をかけて食べます。
友人に「納豆に岩のりをかける」と答えると驚かれたり、「イワノリって何?」と聞かれることがあるので、一般的ではないのだろうなという自覚があります。

このように「自分の世界が必ずしも普通ではない」「他の人には他の人の世界がある」ということを自覚し、意識的に相手のことを知ろうとすることが思いこみを減らすことに繋がるのではないかと考えるのです。

まとめ:キーワードは「意識的に」

コミュニケーションをとるときに注意すべきことは、自分で自分の考えをコントロールして意識的に「個別化」することです。

今回の話をまとめると以下の3点になります。

・意識的に相手のことを知ろうとする姿勢を持つこと
・同じ物事に対する自分と他の人の考えや捉え方が違っているかもしれないという疑問を持つこと
・解釈が間違っているかもしれないと思ったときはそのままにせず、きちんと相手に自分の捉え方が合っているか尋ねること

あとがき

私は去年、ある福祉施設での実習を通して、利用者さんを個別化して捉えることの重要性と自分の思いこみを取り払う難しさを実感しました。

ぜひ、皆さんにも「自分が他の人を個別化できているのか」「勝手に思いこみをしている部分はないだろうか」など、意識的に考えながらより良い関係を築いてほしいなと思います!

次回予告

次回はバイスティックの7原則、2つ目と3つ目の「受容」「意図的な感情の表出」について説明したいと思います。
「受容」はまだしも、「意図的な感情の表出」とは何なのか。
また、いくつかの例とともにお話ししますので、次回もお楽しみにしていてください!

見てくださったあなたへ

見てくださってありがとうございました!
しかしこれはあくまでも私自身の考えです。感想や自分の考えなど、コメントでたくさんの方と意見を交流することができればとっても嬉しいです。
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