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本日は、お日柄もよく

やっぱりビブリオ(2)

 世の中には、大勢の前であるにもかかわらず、めちゃくちゃノロノロ話す人っていますよね。

えー、あー、う〜んと、まぁ、おー、えっと、そのぉ……

 こういった言葉で詰まったりごまかしたりする人の話って、なんだか聞く気が失せてしまって、眠たくなりませんか?
そんなの、内容なんてかたほうの耳から入ってもそのまま反対側の耳から抜けていく、気づけば話が終わっていた、なんてことおきて当たり前ですよね。
 そして、こんなことが多発するものといえば、どこのだれ、とは言いませんが、先生のお話、お偉い方のスピーチ、講習、あるいは結婚式のスピーチとか。

 主人公の二ノ宮こと葉が最悪の気分で出席していたのは、自分が片思いしていた相手の結婚式。そのシチュエーションだけでもげんなりするのに、それに重なり、来賓である牛丼屋の社長が詰まりまくりでなんの面白さもない祝辞をしてきたのです。

 想像してみてください。ろくに寝ていない状態で、片思いしていた幼馴染の結婚式へ。式場内の大賑わいで目が覚めたと思ったら、自分の会社のPRばかりする牛丼屋の社長の長ったらしい祝辞でまた襲ってくる眠気。気分は最悪。
 こんな状況で、貴方は背筋を伸ばし、笑顔で幼馴染の門出を祝うことはできますか?

無理ですよねw
残念ながら、こと葉も例外ではありませんでした。

 ガシャン、

隣で鳴った不吉な音に母親が目を向けると、そこには、眠気に耐えられず、出されていたスープ皿に顔面を突っ込んだ娘の姿。
 ああ何という悲劇。こと葉にとって、まさに『最悪』を体現したような結婚式。

 しかし、この最悪の結婚式が、ある人の、涙があふれるほど衝撃的なスピーチにより、こと葉にとって黒歴史となりながら、最高の結婚式となるのです。
 そのスピーチは、こと葉がスープ皿に顔を突っ込んだ後に行なわれた、伝説のスピーチライターと呼ばれる久遠久美によるもの。空気を一変させる言葉に魅入られたこと葉は、久遠久美に弟子入りすることに。

 そこからかくかくしかじかで、権力にふんぞり返った与党に政権交代を叫ぶ野党のスピーチライターに抜擢され、
そこからまたかくかくしかじかあーだこーだてんやわんやあって、最悪の結婚式から最高に幸せな人生へと、こと葉は進んでいくのです!
 かくかくしかじかの部分が一番気になるところかと思いますが、もちろんそこは読んでからのお楽しみ。

 スピーチの極意十箇条、季語のない俳句、こと葉が握った秘密のメモ、アメリカ大統領選挙の行方、こと葉の前に現れたコピーライターの男、「えー」を繰り返していた社長は良いスピーチができるようになるのか、政権交代は実現するのか、スピーチで世界を変えることはできるのか、個性豊かな人々が送る、最高のお仕事小説であり、改めて言葉の大切さを知ることができる日常小説、
 
 題名は、『本日は、お日柄もよく』

キーワードは、『”CHANGE”を”CHANCE”に』

ぜひ読んでみてください!
ありがとうございました。

#読書の秋2022 #本日はお日柄もよく #原田マハ

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