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ドミノッッッ

感想って言うよりビブリオ

 立てていく間の緊張感。
 間違って倒してしまったときのイライラと落ち込みと一緒に組み立てた仲間に土下座したくなるほどの申し訳なさ。
 負の連鎖を止めてくれた人の神々しさ。
完成した瞬間の達成感。
 倒すことを考えたときのなんかもったいない感。
カタカタと音を立てて崩れていく光景を見たときの爽快感。
 傍から見ると地味すぎる光景の中で,人の感情が溢れていくあのゲームの中,皆さんもこんなことを感じたことはあるのではないでしょうか。
 今回紹介する本は,恩田陸さん作,『ドミノ』です。

 こんにちはフウ鬼です。読書の秋、ということで、私が読んできた数ある面白い本の中で、『ドミノ』という本を紹介しようと思います。感想よりビブリオっていうほうが正しいです。よろしくお願いします!

 人生における偶然は、必然である。という言葉で始まるこの物語。
 舞台は東京駅周辺。主人公は,名前が付いている人全員。
 出てくる人全員が主人公と言っても,過言ではないかもしれません。
その主人公たちの間で目まぐるしく変わる視点の中,ひとりひとりの個性がはっきりと描かれています。

 ここで,その個性豊かな主人公たちを少し紹介したいと思います。
一億円の契約書を待つ締切直前のオフィス。
 ミュージカルのオーディション中に下剤を盛られた子役の少女。
推理力を競い合う大学生。
 別れを画策(かくさく)する青年実業家。
東京駅の人混みの中,待ち合わせに行き着けない老人。
 その老人の句会仲間の警察OBたち。
無理矢理過ぎるホラー映画監督。
 何かを企てる男……など,総勢27人と1匹。
そうです,主人公の人数は27人と1匹
 主人公だけで。
27人と1匹。
 多い。
名前とか,覚える気すら起こらない。
 1匹って,なに?
そんな人たちのためにかは分かりませんが,作者さんは普通こんな文庫本に書いていないようなものをいれました。
 この本を初めて読んだ文学賞選考委員の,お偉い先生方が眉をひそめ顔をしかめるようなもの。
 青い鳥文庫などの小・中学生向けの小説や,漫画の単行本などで見るあれ。
さて,それはなんでしょうか?答えは…
 
 読んで眉をひそめてください。
 
 この本の見どころ。それは,多すぎる登場人物たちや普通このような文庫本に無いようなものだけではありません。
 私が感じたこの本の見どころ。
それは,ドミノ倒しのスピードです。
 この本の中で,皆さんが行なったことのあるような,木やプラスチック製の札を並べるゲームがされているわけではありません。
 偶然に偶然に偶然が並べられ,それらが全て綺麗に繋がった瞬間,次々と倒れていく,この本の中で起こる『人間ドミノ』のことです。
 スピーディーな伏線回収と,止まることなく倒れていくドミノの札たち。
読み終わった瞬間に感じる,「読み切った」という爽快感。

 ずっとこの本を持ち歩いていると,ドミノピザ,ドミノピザと言われ,
「もうこれドミノピザやわ。表紙のカラフルなとこ,ピザの具に見えてきた」と思っていたらまさかのピザ要素も出てきたり。

 どらやは爆弾の元
虚言癖あれば夢想あり
 サースティであれ,愚か者であれ
ぶっ飛ばせOL
 少女たちよ大志を抱け!

抱腹絶倒,スピード感溢れまくり,パニックコメディの大傑作,恩田陸 作
『ドミノ』。
 皆さんも,この人間ドミノに巻き込まれてください!

読んでいただきありがとうございました

#読書の秋2022 #ドミノ #恩田陸

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