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やめときゃよかったかな

中学以来仲の良い友人グループがある。

男女2人ずつのグループ。勿論、僕もそこにいる。

4人のうち2人は中学時代、僕達が4人が仲良くなった頃から付き合っている。無論、僕では無い。

つまりは長年付き合ったカップルと
僕と
もう1人の女の子 (長いのでA子としよう)   
という4人で
よくある訳ではなくとも特別珍しくもない関係だと思う。

夏ごろ。
A子を誘って一緒にスイーツを食べに行った。

ここでA子について。
個人的な感情を抜いて、世間一般でみてもかなり
美人な部類に入ると思う。
背は低いが、物腰が柔らかく、聞き上手。
ある程度接すれば、誰もがその可愛らしい見た目とは裏腹にはるかに大人びた印象を持つだろう。

もうバレているだろうから白状するが
僕は彼女に多少なりとも惹かれているのだ。
けれど、

以前A子が言っていた。
「1度友達になった人をそれ以上の関係値で見るのが難しい。」と。
これも珍しく話では無い。共感できる人も多いのではなかろうか。
僕には出来なかったが…

という訳で話を戻すと、
このスイーツを男女で食べているデート擬きの時間は、あくまで僕がA子をを友人として誘い、彼女も僕を友人として見てOKしてくれているに過ぎない。
他愛もない話をいつも通り繰り広げて楽しんでいた。

ふと
僕とA子の携帯に通知が来た。
同時に、ということはつまり
4人のグループに連絡が来た、ということだ。

【来年の頭に籍を入れるから、証人の欄を2人に書いて欲しい】

勿論2人もとても大事な人だ。そんな彼らが僕を選んでくれた。素直に嬉しかった。とてもめでたい。
人生で初めて得た境遇の尊さを噛み締めていると

A子が言った
「この子達を見てると、憧れるよね。」
その感情は分かる。心から頷いた。

「でも私は恋愛向いてないからなぁ。相手に気持ち返してあげられないし。クリスマスやバレンタインを家族と過ごすのにも慣れたし、1人で歩いてても気にならなくなっちゃったしねっ笑」

今となってはなぜこの会話の後にこんな事を言ったのか分からない。が、事実としてこの台詞は僕の口から出てしまった。

『クリスマス、お互いぼっちで予定空いてたら一緒にどっか行こうよ』

口説き文句としてはあまりにも使い古されたような。我ながらダッサい誘い方だったと思う。
というか、どこへ消えた。友人関係でも満足だと、弁えていた僕は。
少しだけ驚いたA子の表情と共に、時間が止まった。

あ、やらかした。

僕はそう思った。
けれど、もう少しだけこの話は続く。

「そう?まぁ、、ほんとにお互い予定がなければそうしよっか。笑」

思ってもない返事。けどこれ以上沈黙の時間は作りたくない。脳をフルに回して、自然に、自然に。

『ほんと?まぁでも実現されちまうとそれはそれで悲しいし、お互い恋人がそれまでにできたら無くなるかもな笑』

顔は出来るだけ下心などない風を装って、あくまで友人の会話を。
内心は、、、まぁ言わずもがな。察してくれ。

その後彼女を家まで送り、軽い足取りで帰った。
浮かれていた僕を笑ってくれても構わないが、
大抵の男なら、
いや想い人とクリスマスを過ごせるのだ。
大抵の人なら、似たような反応になる筈だ。

さてそして。だんだんと12月が近づいてきて。
休みを取るにもそろそろちゃんと予定を決めなければいけない時期になってきた。
しかし彼女にも相手ができたかもしれない。
一先ず連絡しなくては。携帯に手を伸ばした。

『よう。こないだの件なんだけど。クリスマスまだ空いてる?』

この時、別の言い回しをしていれば。
            変に飾らず、素直に誘っていたら。
            直接会って話をしていたら。
たらればの話というのは、後悔した時に使いがちだなと感じる。

結論から言えば、予定はなくなってしまった。
仕事があるのだそう。
よく聞く話だ。たとえそれが真実でも、僕を傷つけずに振る優しい嘘なのだとしても。
そして実は、それはどちらであっても意味は変わらない。

本当に一緒に過ごしたいと思っているのであれば、クリスマスに仕事を休むことは、可能な筈だから。

まぁ、落ち込んだ。相手に気を使わせた事や次に顔を合わせる時の気まずさなど、そういうことを一頻り考えて自己嫌悪して、思い出したことがあった。

あ、婚姻届の件、もうすぐだ。

何がとは言わない。どうすればよかったかも検討もつかないし、でも、口に出して言わずにはいられない。
          
『はぁ。やめときゃよかったかな。』

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