伯父と会った話 無職日記#4
伯父と12/23に会った。ちょうど3日前のことだ。他の週は暖かいのになぜこの日に来たのか、今でも少し謎だ。
伯父は関東付近に住んでおり、数年に1回のペースで来る。
ちょうどその時期で来た。
もう年齢は50も過ぎている。ちょうど僕の従姉妹にあたる娘がおり、彼女は大学院生。
伯父は日本では誰もが知る大学を卒業している。
職業とか肩書きはあまり興味がなかったので、近況について話した。
以前、僕に才能があると言われたことがあり、その件ついて詳しく話してみた。できる限り、覚えてることについて書こうと思う。
「なんで才能あるって言ってるの?」
「え?だって、A高校通ってたんでしょ?」
A高校には高校受験で合格して入った。偏差値は平均して70。
偏差値70がどのレベル帯かと言うと上位2%。
「もうその時点ですごいよ。うちら兄弟は誰もそこに行ってないもん」
母と伯父含め、5人兄弟だが、その高校には誰も行ってないが、昔は伯父が通っていた高校が1番だったらしい。
しかし、今では志望者数は少ない。
自分は「○○大学に行ってるのに…」と心の中でぼやく。
「他の高校はどこ受けたの?」
「いや、BとかC高校とか…」
「なんかランクあったよね?」
「ああ、Aかなあ。特待だったかも。でも、覚えてない。多分特待」
「BもCも?」
「多分どっちとも特待か授業料免除だったかな」
後から聞くと、授業料免除のB判定だった。
「え、それはスゴすぎるよ…。勉強どれぐらいしてたの?」
「最後の方かなり追い込んでたから、平均週45時間かな」
「やっぱり、うちら兄弟に持ってないもの持ってるね、藤屋くん」
確かにそうかもしれないが、自分の周りのメンツはえぐい。それと比べると、自分はそんな人たちとは程遠い。
1人目:Sくん
東大志望 スポーツもできる文武両道マン
2人目:Rくん
九州大学志望 雰囲気が落ち着いてて話しやすい。一番仲がいい。
3人目:Kくん
横国1年生。彼は現役で行った。飄々としてるが一番才能があるのは彼だとRは言う。
4人目:Nさん
地元の国立大学1年生。確か教育学部に行ったと思う。
5人目:藤屋
現役受けてない。今年も受ける予定は無い。
この4人を見たらとんだ恥さらしだと思ってしまう。
確かに中学校の勉強は困ったことは1度もない。だが躓きがすごすぎたのか鬱になり、受験の勉強はあまりする気もないし、したらちょっと危ないかもと主治医に言われている。
なので受験は辞めることにした。仕方なく。
「なんか肌ツヤ良くなったよね?」
「え?」
「なんか血が通ってる感じで、元気になったね」
「まあ、うん」
調子がいい日が多くなり、活動的な日が増えたことがあったからだろう。
「そういえば、読書家とは聞いたけどなんの本読むの?」
「結構ジャンルレスで、ほんとに色々」
詩や海外文学なども読んでいる。だが、最近は小説はあまり読んでいない。
「おじさん、藤屋くんに買ってあげようかな?」
「え!?何を?」
「サピエンス全史」
ちょうどピッタリ自分の欲しかったものだ。
「ほんと!?あ、いや、でも…」
なんでそうなったかと言うと、もう成人してるからだ。
「ハードカバーと文庫。どっちがいい?」
さすがにハードカバーは高い。後に書店に行くが村上春樹先生の新刊(ハードカバー)はおよそ2800円(税込)だった。
しかも、文庫でさえ上下買おうとなると2000円もするし、良くないと思った。
さらに、本棚が部屋を占有しすぎてるので、さすがにもう買えないと思っていたが、伯父は既に玄関で待っていた。
「わかった。お言葉に甘えます。でも、文庫ね?ハードカバーより文庫派だから」
「わかった!よし、行こう」
最終的に上の方しか買わなかった。理由はミートするか分からないから。
伯父とのコミュニケーションで驚いたことはアニメや漫画を見ないことだった。
あの時代を席巻した鬼滅の刃でさえ知らなかった。
「仕事終わったあと何してるの?」
と聞くと、ジムに行ってるらしい。
まあそういう人もいると思った。落胆したが、自分の常識の範囲外にいる別世界の人と話すと、刺激的で面白い。
こっちはアニメは見るけど、伯父は全く見ない。
逆に、伯父は政治に詳しいけど、僕はそもそもニュースすら見ない。だから面白いんだと思う。
企業間取引のBtoBのことなど色んなことを教えてもらった。
そして最後に、僕たち家族が帰る時に伯父さんはこう忠告してくれた。
「藤屋くん、スマホは程々にね。しっかり自分で考えないといけない時代だから」
確かにそうだと思った。
情報超絶スーパーウルトラ飽食時代の中、あえて便利な物を隠して、自分と向き合ってはどうかとさらにつけ加えて言った。
だからこそ、読書が良いと。
ひとつの本につき、ひとつの人生を歩める。
そして、著者と対話する。
あの人はどこでどんな風に生活していて、書いていたのだろうか。
その人生を歩んで、己と対話していく。
自分はどう思ったのか。どう感じたのか。さらに、思ったことや感じたことをどういう形で人生に活かしていくのか。これが重要だと伯父は言う。
「計画を立てなければ、人生という時間は流れないよ」
地元にある祖母の家を出ていくときに伯父に言われた最後の言葉。ハッキリと鮮明に色濃く残っている。
計画。
勉強のToDoリストを作ってそれをやるとき、初めてちゃんと時間が流れたように感じた。
ただ、呆然と過ぎ去っていくものではなく、ちゃんと意味のあるものだった。
意味のある時間。
そう考えてみると、「意味のある時間」=「幸福に繋がる時間」はスマホの中にないような気がする。
ではどこにある?
現実の中にあるのではないだろうか。
デジタル世界の中にはあまり無いと思う。そっちの方が良いという人もいると思うが、僕はアナログな現実の方にあると思っている。
だが、アナログとデジタルがごちゃごちゃになっているのが今の世の中。綺麗に水と油に分けられない。
両方を上手く使いこなす必要があるだろう。
しかし、最悪なことに僕はスマホ依存症だ。
「原神をやってて楽しいか?」
「楽しいっちゃ楽しい。けど、何かおかしい」
「YouTube見てて楽しいか?」
「うーん…」
こんな心の反応をするということはつまり、あまり楽しめてない。微妙だということ。やってる時は楽しい。けど、のちのち微妙な反応になる。
そして、この「何かおかしい」。ここが大事だと思う。
この「何か」さえを掴みあげ、言語化できれば意味のある時間を過ごせるはずだ。
ヒントは伯父の言っていた「便利なものを隠す」ことだろう。挑戦してみようと思う。
無職日記#4はここまで。次の記事で出会えることを楽しみにしている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?