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【青いダイヤモンド】~怪盗紳士からの手紙~

《むかしむかし、あるところに金髪の夫人と、リュパンと、ガニマールという人がありました。ところが、悪者のガニマールは、美しい金髪夫人を苦しめようとし、善人のリュパンは、そうはしないつもりでした。

そこで、善人のリュパンは金髪夫人をクロゾン伯爵夫人と親しくさせようと思い、その夫人にド・レアル夫人と名のらせました。これは金髪で青い顔をしたまじめな女商人の名前―ほとんど同じ名前でした。

そして、善人のリュパンはこう考えました―《もしも悪人のガニマールが金髪夫人を追跡するとしたら、まじめな女商人を追跡させることになって、わたしはたいへん便利だろう!》

賢明な配慮で、効果をあげました。悪人のガニマールが読んでいる新聞に掲げた小さい記事、ほんものの金髪夫人が、ボーリヴァージュ旅館へわざと置いてきた香水瓶、そのほんものの金髪夫人が、旅館の宿町に書いたレアル夫人の住所氏名―これで芸当は完了しました。

どうかね、ガニマール?ぼくはこの冒険を詳しくお話ししたかった。
なにしろ、きみの才気をもってすれば、誰よりも先に笑い出すのは、きみだろうしね。
事実、これは気がきいている。白状するが、ぼくとしては滅法たのしかったよ。では、ありがとう、親愛な友よ。デュドゥーイ氏によろしく。

                       アルセーヌ・リュパン》

引用:モーリスルブラン「青いダイヤモンド」


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