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「魔法使いの決心」製作裏話 #6

面接

ラストのサビは今回の歌詞とは違うものを用意していた。それを入れたらある程度形ができる。こととき10月10日だったので、作業さえすれば15日のボカコレ には間に合う。いい感じだ。11日(月)の山にも登れてしまうかもしれない。よーし頑張るぞ〜と思っていた。

そうしたら、「ちょい、ちょい」と後ろから私の袖を引っ張る者がいる。誰だと思い振り返るとテリアだった。テリアが小さくてギリギリ聞こえる声で「わたしこんなこと言わないし、心にも思っていない。」と言った。

あ〜出た。これね。めがねシリーズのときにあった中のキャラたちが自分勝手に動き出すやつね。あのときもちょっとまいったが、彼や彼女が言うことにして正解だった。今回もテリアの言うことを聞いてあげることにしたのは、私が迷宮でさまよっていたからかもしれない。

以下「風」が風月、「テ」がテリアです。
 「そんなことを言わないってどういうこと?」
 「文字通りです。わたしはこの歌詞のようなこと思っていないし、言いたくもないんです。」
 「でも、こういう流れってよくあるし、そういうふうに納得する人もいるんじゃない。」
 「やっぱり心にもないことを言うのは嫌です。」
 「はっきり言うねぇ。そこれへんはテリアらしい。」
 「歌詞を変えてもらえませんか?」
風 「今から?もうボカコレ に間に合わないかもしれないし、できればこのままで行きたいんだけれど。」
 「それでも今のわたしの気持ちを伝えて欲しいんです…。」
 「彼のことは好き?」
 「…はい。」
 「魔法を失っても?」
 「……」
 「それがあなたの気持ちなんだね。わかった、なんとかしよう。」
とまあ勝手になんとかすることを約束した。

え〜、でももうボカコレ直前だよ。大丈夫かなぁ。こんなときは山を歩いて色々整理するといい。やはり人間悩んだときは歩く方がいいという持論があるので、山に行くことにした。もしかしたら心の中が山で占められていただけかもしれない。

決心

次の日が雨だったら山に行かずに籠る予定だった。でも前日の天気予報で11日だけ晴れ、そこしか晴れはないみたいなことを言われた。もうそうしたら行くしかない。ということで行ってきた。午後には帰ってきて動画を作り始めないといけない。そこで歩きながら気持ちを整理してみることにした、私のとテリアのと両方の。

もうそろそろ1000m超えたところは秋色になっているだろう。でも登ると大変なので、お手軽に行けるところを歩くことにした。1200mまで車で行けるので、本当に散歩みたいなものた。着いて車を降り開口一番、「寒い!」だった。気温は14度、寒いはずだ。少し防寒をして歩き出した。

ゆっくりと歩き出し、秋色に染まった景色を眺めながらテリアの気持ちを思い出していた。初めはサリアに彼をくっつけるために近づいたんだけれど、自分が恋に落ちてどうしようもなくなっている。テリアにとって魔法はもう自分のアイデンティティーそのものだろう。それを無くしても彼を好きでいることはやめないのだろう。もし今この楽しい作曲やDTMを捨てろと言われたらできるだろうか?

好きなことをやめてまでもその道を選び、成就することなどないかもしれないけれどこの気持ちを大切にしたい。そんなふうに見えた。あの感じだともう心は決まっているようだった。では創造主としてその気持ちを大事にしてあげたい。ということでタイトルも「魔法使いの決心」となった。この結末で行くと私も決心したのだ。

目の前の青い空とあったかい濃褐色の珈琲を前にしてそんなことを思っていた。


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