ポジティブなDNFとは?あなたは全力をだしてそこに行き着いたのか

ある日、ひとりのランナーが語ってくれたのは、「ポジティブなDNF」についての話だった。DNF、つまり「Did Not Finish」という言葉は、普通ならランナーにとって悔しさや無念さを意味するが、彼女の話は少し違っていた。むしろ、それは自分の力を出し切った証として、誇らしげでさえあったのだ。

彼女が挑戦したのは、八方尾根ゲレンデという、なかなかの難コース。走るというよりは、もはやゆっくりとした登山のようなペースで、何度も「ゲキサカ」ポイントで立ち止まりながらも、自分の足でそのゲレンデを登り、降りてきたという。景色やコースの細部にまで目を向け、その場その場の瞬間を楽しむことができたのは、他のランナーよりも遅かったからこそ。誰よりも時間をかけて景色を味わい尽くし、まるでそれがレースの醍醐味であるかのように語っていた。

時間切れが宣告されると、周囲のランナーたちも同じくゴールには間に合わなかったことを知る。「失格でも最後まで走りきろう」と声をかけ合い、励まし合う姿は、タイムや順位には代えがたい貴重な経験だったという。完走メダルや公式の結果は得られなかったが、それ以上の達成感と仲間との一体感があった。

彼女は「このDNFは、自分にとって誇らしい結果だった」と笑いながら言った。たとえゴールできなくても、自分のペースで全力を尽くし、景色や仲間との時間を楽しんだことこそが、最も大切だったのだ。そして、次の挑戦ではもう少し速く走ることを目指しているけれど、たとえまたDNFになっても、「それはそれでポジティブに受け止める」と話してくれた。

「ポジティブなDNFとは、結果以上にそのプロセスをどれだけ味わったか、どれだけ自分を誇れるかのことなんだ」。彼女の言葉は、完走という結果だけが全てではないことを教えてくれた。

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