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見栄のために走る:インスタ映えするランニングの嘘と本音

ランニングが一大ブームになった昨今、街中ではランニングウェアを身にまとった「ランナー」たちがあふれかえっている。見るからにプロっぽいシューズに、最新のスマートウォッチ。そして「これ、絶対高いでしょ?」と言わんばかりのスポーツサングラス。その姿はまるで、走ること自体がファッションショーの延長であるかのようだ。実際に彼らが求めているもの、それは「インスタ映え」だ。今日はその裏側に潜む、見栄のためのランニング事情を暴いてみよう。

早朝、まだ陽が登りきらない時間に「#朝活」なんてハッシュタグをつけた投稿がインスタに上がる。そこには「今日も5キロ走りました!最高の朝!」なんてコメントが添えられているけど、実際のところ、5キロ走るのは彼らのスマホだけだ。ランニングアプリを起動してスタートボタンを押し、ベンチに座ってカフェラテをすするのが本当の朝のルーティン。時折、足をストレッチするふりをしてランニングしている風景をパシャリ。その一瞬を切り取って「汗をかいた自分」を演出することに全力を尽くしているのだ。

また、ランニングコースには「映えるスポット」がしっかりとリストアップされている。海沿いの道、街のアイコニックな橋、そして落ち着いた公園の中。走りに行くというより、写真を撮りに行くためにシューズを履いているといっても過言ではない。ランニングの実力よりも「どれだけ美しく走っている風に見せられるか」が勝負の分かれ目。さっそくスマホを手に持ち、自撮り棒でカメラアングルを調整。背後に綺麗な景色を入れてシャッターを切る。ランニングポーズは、オトコジュクーポーズのように力強くなければいけない。なぜなら、その一瞬が「どれだけ頑張っているか」を証明するための最高の証拠写真なのだ。

しかし、現実はもっとシビアだ。特に日曜の朝なんて、本当はソファとポテチとコーラが最大のライバルだ。そんな怠惰な自分を打ち消すための「やってます感」を求めて走る。ソファに沈み込みながらも、インスタには「走りました」の投稿を忘れない。そこには美しいサンライズの背景に、汗一滴もかいていないけど妙に爽やかな笑顔が写っている。画面越しには見えないけれど、その横にはしっかりとアイスコーヒーとドーナツが控えている。

一方で、「今日はあんまり走る気がしなかったけど、頑張りました!」なんて投稿もあるが、実際にはそのランニングの時間は、カフェで友達と長話していた30分とイコールだ。アクティブな自分を演出するために、スマートウォッチの「アクティビティ時間」を伸ばすことが最優先。友人と盛り上がった話題がそのまま投稿内容に反映され、「ランニング後のスムージー、最高!」なんてコメントがついているが、そのスムージーは走る前からテーブルに置かれている。

見栄のために走るランナーたちにとって、最も大切なのは「リアルなランニング」よりも「リアルに見せるランニング」だ。彼らの実際のランニング距離は、インスタにアップされる一枚の写真で補完される。疲れた表情、乱れた髪、そして服に付いた汗のシミ…。その全てが彼らの「ランニングライフ」の一部であり、インスタというステージでの演技なのだ。

だからもし、あなたが街で颯爽と走るランナーに出会った時、こう考えてみてほしい。「この人、本当に走っているのか?それとも、ただのポーズなのか?」真実は彼らのスマホの中に隠されているのかもしれない。

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