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走るより大事!ウォームアップで完走気分を味わう

ランニングと言えば、汗をかき、心拍数を上げ、足が疲れ切るまで走るイメージがあるかもしれない。しかし、世の中には「走る」よりも「走る準備」が好きな人たちが存在する。彼らにとって、ウォームアップは単なる前菜ではない。むしろ、それがメインディッシュなのだ。

ウォームアップ愛好者たちの朝は、早くから始まる。まだ朝露が光る中、彼らは公園に向かい、まずは深呼吸。目を閉じて、新鮮な空気を鼻から吸い込み、口から長く吐き出す。これで一日をスタートする準備ができる。次に、軽くストレッチ。ここで「軽く」が重要だ。決して筋を伸ばしすぎてはいけない。彼らにとってのストレッチは、筋肉をほぐすというより、精神を落ち着かせるための儀式のようなものだ。

その後、彼らはウォーキングに移る。ランニングではない、ウォーキングだ。公園の周りを軽快に歩きながら、リズミカルに腕を振る。この時点で、心の中ではすでに10キロ走破した気分だ。風が顔を撫で、朝日が肌を温める。もうこれで十分ではないか? 彼らの頭の中には、もうすでにフィニッシュラインが見えている。

ウォームアップが進むにつれ、さらに興奮が高まる。ゆっくりとジョギングに移ると、ついに「ランナーの気分」が全開になる。周囲のランナーたちはガチンコで走っているが、ウォームアップ愛好者たちは彼らを横目に、自分のペースを守る。何があっても、彼らの目的は「完走気分」であって、実際の完走ではないのだ。

面白いのは、このウォームアップ愛好者たちが「走る」ことについて一切ストレスを感じない点だ。彼らは、自分が何のために公園に来ているのかをよく知っている。健康のため? もちろんそれもあるが、彼らの主な目的は「走る」という行為そのものを避けつつ、「走った気分」を味わうことなのだ。言うなれば、無駄なエネルギーを消費せずに、達成感だけを手に入れるという、究極のエネルギー効率の追求である。

ウォームアップも終盤に差し掛かると、彼らはさらに高度な技を見せる。それは、インターバルウォーキングだ。少し速めに歩き、その後ゆっくり歩くという繰り返しで、まるで自分がアスリートであるかのような気分に浸る。これを数回繰り返した後、彼らは最高潮に達する。「今日はよく頑張った」と、さもフルマラソンを走り切ったかのような顔で、清々しい表情を浮かべる。

最終的には、クールダウンと称して、ストレッチをもう一度。終わったら、満足げに水を一口飲み、「お疲れ様」と自分に声をかける。帰りの道中も、彼らの足取りは軽やかだ。なぜなら、彼らは今日もまた「完走気分」をしっかりと味わったからだ。

このように、ウォームアップに全力を注ぐ人々にとって、ランニングそのものは重要ではない。重要なのは、いかに「走った気分」を手に入れるかであり、それは走ることなく達成される。彼らにとって、ウォームアップこそが真の勝者への道なのである。これからも彼らは、全力でウォームアップをし続け、完走気分を味わうだろう。走ることなく。

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