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ベテランスペイン撮影コーディネーターのぶらり旅4-3 スペインのディープな食とお酒の旅

5月7日 3日目 サラゴサテルエル

 マラガから8:25発の電車AVEでサラゴサに12:34着。830kmの距離は車で約9時間。この電車では乗り換えなしでその半分以下の時間で着く。料金は一般が52,30、私はシルバー割引で39,25ユーロ。

サラゴサ駅の天井

 サラゴサはアラゴン州の州都。ローマ時代から栄え、カスティーリャ王国と並んで今のスペインを作ったアラゴン王国の古都。
今までにも何度か訪れているが、2016年にスペイン人のこの辺りの同世代の地元女性4人の案内で来たのが最後。普段仕事でもプライベートでも、希望やテーマを聞いて私が案を出すことが多いが、この旅は多分生まれて初めて自分は全く旅程に関与せず、連れて行ってもらった旅なので、事前情報は行き先のみで、あとは行ってのお楽しみというとても新鮮な体験をした楽しい旅だった。

ゴヤ美術館

 駅でサラゴサ生まれの友人Sと合流。まずはタクシーに乗って、前回は改装中で見ることができなかった昼休みの閉館間近のゴヤ美術館へ駆け込む。ゴヤはこの地方出身のスペインを代表する18世紀の宮廷画家。趣のある階段を上がっていくとLa Tauromaquiaと書いたモダンな黒いスペースが現れる。「裸のマハ」などの油絵の主要作品はマドリッドのプラド美術館にたくさんあるが、これは19世紀初頭の闘牛をモチーフにした版画。闘牛ファンだったゴヤが記憶をたどって描いたというのだが、緊迫の一瞬を写真も見ずに記憶をたどって書いたとは思えない躍動感。白黒の版画を薄暗いモダンな飾り気のない黒い部屋で見せることで、版画の世界に入りやすい。他には別のシリーズの版画やゴヤの自画像といくつかの宗教画など油絵14点が、この時代の他の作家の作品と共に展示されていた。「閉館です」と追い出され、街に繰り出す。アラゴン地方ではイスラム様式を取り入れたスペイン建築様式ムデハル様式の10の建築物が世界遺産になっているが、この街にある3つの内のひとつ巨大なヌエストラ・セニョーラ・デル・ピラール聖堂の外観を見ながらローマ、ムスリム、ゴシックなど異なった時代の貴重な建造物の前を通って、市場に入る。こちらは20世紀の歴史的建造物。ナバラ地方名産のホワイトアスパラガスが「とても柔らかいよ」と書かれていて、なんと1kg 2,98ユーロ。後ろ髪を引かれながら立ち去る。Sの生家、学校などの前を通ってしばらく歩いてからバスに乗って、二つ目のムデハル様式の世界遺産アルハフェリア宮殿に向かう。

宮殿外観

ここは前回地元の人が連れてきてくれた、知る人ぞ知るランチスポット。宮殿はこの時間、5ユーロ払って入る観光客向けには閉まっているが、守衛さんのいる所に書かれている電話番号にかけ、席が予約できればレストランまでの限られた場所は通ることができ、写真撮り放題。予想通り席はあり、私達だけで建物をゆっくり鑑賞してから食堂へ。実はここはアラゴン州議会として使われていて、公務員の食堂でもある。定食は前菜3種、メイン3種から選べて、パン、ワイン(最近めったに見ないテーブルにボトル一本飲み放題。もちろん公務員も食事をおいしく食べるために飲む)、デザート付きで10,50ユーロ。テーブルにはリネンのクロスがかけられていて、この世界遺産の建物の中で食べられるという素晴らしさ。3人それぞれ違ったものを頼む。私はホワイトアスパラガスの生ハム添えと鶏肉だが放し飼いにしていて、小さめで油が少なく味が濃いもも肉2本。デザートをコーヒーに変えてもらって、完食。とても正統派のスペイン料理だった。腹ごなしに時間もあるので景観を楽しみながらバス駅まで歩く。
ホワイトアスパラと生ハム

 サラゴサから200km弱をバスで2,5時間位かけてあちこち止まりながらテルエルへ。ここは山がちな地形で、他の街から比較的孤立していて交通の便が悪い。しかしその昔ユダヤ商人で栄えたこの街は、アラゴン地方の世界遺産の4つのムデハル様式の建造物をはじめ、モダニズムなど美しい建物も多く、生ハムと陶器が有名。Sは最近テルエルに引っ越してきたが、以前テルエルに転勤で住んでいたこともある元獣医さん。彼女によるとこの街は文化イベントが多く、高齢者に優しい街だそうだ。
バスを降りて早速名所をざっと見ながら、旧市街から古い水道橋を渡って彼女の家まで歩いていく。段々日が暮れてきて、ライトアップの電気がつき始める。撮影用語でマジックアワーと呼ばれる空が美しい群青色になる時間、街はより輝く。

テルエル

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