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澄む

初夏の御岳山。繁茂した緑が眩しい。
野鳥がどこかで鳴いている。
羽虫が耳元で羽ばたく。
清流は涼やかに下り、微風は青葉を揺らす。
純粋な営みとしての音が生き生きとして、
全てが澄んでいる。
自然の摂理に浸る最中、言葉はいらない。
ここでは沈黙こそ語れる気がする。
ある人は情緒と云った。
また、ある人は詩心と表現した。
大自然の共通言語はそのようなものらしい。
例えば、人々は祈りを捧げる。
詩をつくり、歌を歌う。
時折酒を飲んでは酩酊し、舞い踊る。
人間同士、粋な振る舞いに惚れ合い、
思いやりに静かに気づき、ひとり傷つき、
不意に虚しさが押し寄せれば、 
夜空を見上げたり、海辺の風を感じたり、 
深い森に誘われたり、
花々の美しさに息を呑むだろう。  

そして、私たちは澄む。





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