投手のスタミナについての考え②

前回の内容も踏まえてまた話を進めていきます。前回は3つのエネルギー供給系統を紹介しましたが、じゃあピッチングってどこの系統が優位になるのでしょうか?もうお分かりですね。

投球動作は10秒もかからずに終わりますのでATP-CP系が優位になると考えていいと思います。ここが前回の最後に言った種目に応じたエネルギー供給ってところですね。まずはここをおさえます。

次に冒頭に出てきた持久力の話をします。持久力っていうのは大きく二つあり、有酸素性持久力と無酸素性持久力というものがあります。

有酸素性持久力というのは酸素摂取によって有酸素系の系統からエネルギーを供給しながら運動を持続する能力です。有酸素性持久力の優劣は酸素摂取能力で決まり、1分間の最大酸素摂取能力(VO2max)を計測することで評価します。

また運動の強さを増していくとき、筋肉のエネルギー消費に必要な酸素供給が追いつかなくなり、血液中の乳酸が急激に増加し始める強度の値である無酸素性作業閾値(AT)を計測して酸素摂取の持久能力を評価するというものもあります。

有酸素性持久力のトレーニング方法としては
・バイク20〜40分
・30分程度のランニング
などなどあまり負荷が大きくなくて、かつ長い時間動き続けるものです。ここはイメージとして持ちやすいと思います。

無酸素性持久力というのは酸素摂取に頼らない、解糖系の系統よりらエネルギー供給しながら運動を持続する能力です。優劣は乳酸をどこまで許容しながら運動を持続できるかという酸素負債能力や乳酸が作られ始めるポイントとなる乳酸性作業閾値(LT)などが指標となります。


ただここで大切なのは全身的な無酸素性持久力と局所的な無酸素性持久力がある(体力トレーニングにおける基礎理論 中垣征一郎著 より)ということです。ここでいう局所は投球でいう肩肘付近の機能のことを指します。

なので中垣氏は著書でインナーマッスルのトレーニングも15〜20回程度反復可能な低強度から中強度で短いレスト(60s程度)で行うことが有効と記しています。

無酸素性持久力のトレーニング方法としては
300m(rest180s)×3〜4セット
100m(rest90s)×4〜6セット
などがあります。

また今流行りなのはタバタ式トレーニング

(http://www.ritsumei.ac.jp/rs/category/tokushu/151106/)

などのHIITトレーニングというものも人気が高まっています。僕もやっていました。

最後に自分なりにメリット、デメリットについて書きます。

有酸素性持久力
・試合やトレーニング後の疲労回復能力は有酸素性持久力によるところが大きい(酸素供給量が多くなれば栄養の供給量が増えたり、老廃物の除去が早まる)
・長い練習をしても疲れにくくなるので様々なトレーニングを効率的に行うことができる(練習量が多い高校生は特に)
・エネルギー不足だと筋肉の分解も進み、必要な筋肉が削がれてしまう(マラソンランナーに身体がゴツい人がいないことからもわかる)

無酸素性持久力
・投球動作の特異性として無酸素性持久力がウェイトを占めるため、より長いイニング投げる身体的能力を身につけられる
・比較的短時間のトレーニングなので有酸素よりも筋肉が分解されにくく、有酸素性持久力の評価となるVO2maxも高めることが可能
・トレーニングが全般的に強度の高いものでキツいため続けすぎるとオーバーワークになったり、ケガのリスクも高い

ここまで長々と書きましたが、どのトレーニングが種目に応じたものであるか?またそのトレーニングのメリットとデメリットは何か?などを考慮する必要があるよということを伝えたいです。

長距離ランニングが否定されている世の中ですが、それはやり「すぎている」からであって=必要ではないわけではありません。
バランスとトレーニングの目的意識を大切にしてパワーアップを目指しましょう!

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