映画『シン・仮面ライダー』を見てノスタルジィに浸る平成ライダー世代の感想
前評判にかなり賛否があって見に行くか悩んでいた映画。
ネタバレは踏まないようにしていても、期待外れとか、興行収入がよくないとか、庵野の悪いところが……のような声はネットをやっていれば入ってくるもので。
ダメ押しにNHKの高度なネガキャン(にしか見えない何か)が放映されたことにより行く気が失せてしまったんだけど、
ためにし公式くんのPVを見てみたらすっごい良い感じだったので、速攻で手のひら大回転して最寄りの映画館まで車を出したのだが――実に良い、良かった。
じんわりと、心に温かみが残る映画だった。
さいきん上映がはじまった劇場版名探偵コナンとどっちが面白かったか聞かれると、コナンと即答せざるを得ない。
けど、どちらをもう一度見たいか聞かれれば、シン・仮面ライダーと迷わずに答えることができる――そんな魅力のある映画だった。
以下は、適当にネタバレを含んだ感想になるので注意されたし。
キャラクターについて
ビジュアル最高の1号
自分はクウガ~ファイズあたりの直撃世代なので、1号に対する印象は仮面ライダーのアイコン的なイメージが強い。
村枝先生の漫画は無印の最終巻までは読んでいたけど、年月が経ちすぎて本郷猛と藤岡弘とREDのイエロウの印象がゴチャ混ぜになってしまっているレベルで記憶がないし。
そんな状態で見たシンの本郷猛の印象は、すごい説得力あるコミュ障だった。
エヴァのゲンドウくん然りだけど、庵野監督はコミュニケーション苦手な人間を描くのすごくうまいなぁって。
このコミュ障という要素があるおかげで、(結果的に)口数が少なく寡黙な本郷や、怒りを外に出せず震える本郷、優しさが行動に出てしまう本郷が表現されていたの本当に好き。
蝶オーグ戦の前に、2号に勝算を伝えていなかったのも頭良いのに抜けてる人間感があってマジで好き。
役者の池松壮亮はすごいハマり役で、メイキング動画とか見ると素の状態がコミュ障を克服した、あるいは過去に悲劇がなかった本郷にしか見えなくなってくる。
アクションもすごいなーとか思いながら池松さんのwiki見ると、
とか書いてあって、マジでハイスペックで成績優秀運動神経バツグンの本郷感(ただし無職ではない)を後押ししてくるのすごくない?
仮面ライダー1号の見た目という点では、最高に良いビジュアルをしていると思う。歴代新旧1号の中で、いちばん好き。
デザインワークスを読んで、たどり着くまでの経過を見ることができたので、そういったサイドストーリー的にも「これしかねぇ!」という感じでたまらなく好きです。
キャラ立ちしまくった2号
自分がシン・仮面ライダーの劇中で一番好きになったキャラ。
出番が半分よりも更に後からなのに、めっちゃ濃い。
ショッカーに改造されると幸福感をバグらされて精神汚染されるのも関わらず、変身をお見せしてくれる。他人を心配して、敵対している1号のこと気にかけてフェアな勝負をする。記憶が戻って泣いちゃってもすぐに立ち直り。ペンと剣を持ち替えショッカーと戦う。
――イケメン俺ツエー要素がありすぎるのに、まったく嫌味がないというか、清涼感すら感じるのすごい。全体的に暗く閉塞感ある作品にもたらされる光で、登場する前後で作品の雰囲気がめっちゃ変わる。
これだけ陽の人なのに、孤独を愛するという設定でコミュ障陰キャで孤独になってしまった本郷さんとの比較が映えることよ。
フラグ回収も圧倒的な速さで、視聴した人間をニヤニヤとさせてくれる。
ルリ子さんとの邂逅はごく短時間なのに、渡されたマフラーすっごく気にするし引きずるのもすごく良くないですか?
あと、ポイントなのは身長差。
柄本佑さんは身長182cmで、池松さんは172cm、この10センチの差がすっごい良くて1号2号が並んだ時に凸凹するのが狂おしいほど愛しい。
あまりに顔が良すぎるルリ子さん
顔が良すぎて永遠と見ていられるというか、顔がよすぎるあまり意識がそっちに向いてしまう困った人たち。(ハチオーグ含めて)
説明パートとかも、顔を見て声を聞いているだけで目と耳を幸せにしてくれる恐ろしい存在。
改造人間にされた人たちのパゥワ(物理)とは違い、この人らは顔面が凶器なんだわ。
ルリ子さん役の浜辺美波さんの笑顔が本編でめっちゃ希少やとか思ってたらメイキングで大安売りされて大草原だけど、可愛すぎてすべてオッケーです、みたいな気持ちになる。
でも、素の浜辺さんを見ると全然キャラが違う感じで、舞台挨拶かなんか見た所見では「うぇ」って思わず声が出てしまった。
男性陣が演じているキャラの延長線上に本人の性格や容姿があってキャストとして選ばれているように感じるのに対して、浜辺さんはキャラに完全に変身してる感があるのこわい。
インタビュー動画とかで同一人物だと認識できずに脳がバグったわ。
ニーサンの呪いにかかった兄さん
妹とのハグが長すぎませんか?
おのれおのれおのれおのれおのれおのれッッッ……! おのれディケイド!
ストーリーとかいろいろ
ストーリー
分かりにくいけど理解できるを内包した構成になってて面白かった。
はじめは「なんで普通に変身できないんだ?」と平成ライダーのお約束が足かせになったけど、バイクにライド・オンして風を浴びないとプラーナ(エネルギー)が吸収できなくて変身できないとか、戦闘服はただの強化服で脱ぐことができるとか、徐々に話の中で疑問点が開示されていき、自然と物語に没入できるようになっていく構成が好みだった。
ルリ子さんが知らないショッカーの怪人がいたり、緑川博士とは別の勢力が生んだコウモリオーグのような内ゲバがシレッと差し込んであるのも良い。
選択肢に「逃げる」があるのも好ましい。
戦わなければ生き残れないんだけど、ちゃんと戦略的撤退を選んで策を講じるカッコ悪さがあるのが、カッコイイ。
2号が単体で怪人と戦う尺がもう少しあったら良かったなぁと思うけど、気になったのはそれぐらいだ。
最後の1+2号になったシーンではホモ味を感じてしまい余韻が汚れてしまったと思ったけど、家に帰って漫画版を買って読んでみたら再現描写だったので、原作リスペクト美しすぎると手のひら回転したよ。
というか、原作漫画版の本郷がいちばん自分の中にあった本郷のイメージから乖離してて、なんか笑ってしまった。
アクションシーン
ノスタルジィと仄暗さを感じて全体的に好きだし、昭和特有の謎効果音も聞いていて小気味よい感じがたまらなく、ライダーの必殺技が文字通り殺しにいっているのもポイント高い。
バトルを四段階で評価をするとしたら、下のような感じ。
冒頭:◎
クモ:◎
コウモリ:○
サソリ:草
ハチ:◎
ライダー:△
KK:◎
量産型:×
蝶:△
総合:○
要所でクオリティにムラがあって、刺さるとこはすごい刺さるけど、よくわからんとこはよくわかんないし、クオリティ低いとこはクオリティ低い。
いちばん好みだったのは、冒頭のショッカーを蹴散らすシーン。
崖から落ちて無傷なルリ子さんよりも頑丈そうなショッカーの構成員を蹴散らす仮面ライダーの恐さに感動したし、クモオーグの「バッタオーグ、完成してたのですか」という微妙にエヴァを感じてニヤリとするセリフよ。ワクワクがとまらんかった。
次点は悩むんだけど、ハチオーグ戦が良かった。
ライダーにコートという奇跡的にマッチングする羽織物をするだけでは飽き足らず、日本刀を持たせるという……くっそ映えるんだが?
2号ライダー戦はスト―リーや台詞回し的にはむちゃくちゃ好きなんだけど、ここだけCG感が目立ちすぎていて浮いてしまったのがあまりに残念すぎる。
こういうの見ると、どこがCGでどこが本物か劇中で区別つかなかったのに、2号戦だけはマジでCGがコマ送りで悪目立ちするんだ。
どうしてこうなった……
最悪だったのはショッカーライダー戦から蝶オーグの流れ。
ここもストーリー的にはすっごい良くて、死闘を繰り広げてプラーナを使い果たして泥臭い命を燃やした戦いに――という流れなのに暗くて何をやっているのかイマイチわかんないのでノリ辛いのだ。
すまないサイクロンから、一文字の何としてでもぉ→ヘッドバッドの流れとか最高すぎるのに、良い場面が視認しにくいの何なのさ!
(※ゲームでも明暗の設定を明るく調整する人間の感想です)
世間の評価を下げている原因は絶対にここだと思っている。
この暗さだけは、本当にマイナスなんだわ。
性癖を叫ぶぼく
ハチオーグは絶対にポニーテールのほうがよかった。確実にうなじをみせて殺りにきたほうがよかった。清楚じゃないけど清楚系感を醸し出すことができて、サイコレズ属性とも調和することができたと思っている。
シン・仮面ライダーのキャストは全員ハマり役で本当に最高だったけど、この髪型の選択だけは間違っていたと異を唱えたい。
おわりに
過去作品のリブートとしては、テレビ版エアプの人間からすればほぼ満点だったように感じる。平成ライダー初期に感じた暗い匂い、玩具に媚びていない硬派な変身ベルト、格好良すぎるバイク、古いけど新しいライダーのデザイン、全部がよくてなんかノスタルジィ最高! ってなった。
デザインワークスも楽しすぎるし、トミカも重量感あって満足度高いし、仮面ライダースピリッツを買い直すぜぇ! と異様にテンションあがってきているし、ぜひとも続編を作って欲しいところ。
しかし、そのまえに……
庵野監督、次はシン・ゲッターロボの企画とかどうですかね!
もうすぐ周年企画があるけど、その時に開発着手が発表されるペースで良いので……
何卒よろしくお願いしますと、脳内から緑色の毒電波を送っておく。
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