旧版と現行の版について

文庫本を探していると同じ作品でも編集者が異なるものがなかにはある。ある著作の現行の版と旧版があった場合、後者の方がいいという人がいたりする。そうした現象はおそらく著者に思い入れがある、あるいは著者そのものの文体が良いといったように、特定の個人への思慕や表現を好むなどの理由から起きるのだろう。

それはさておき、私自身が考えている違いというのは大きく2つあり、それらが何なのかを示し、それから具体例を挙げていく事とする。

1 編集者が異なる
2 編集者は同じだが漢字や仮名遣いでの表現が異なる

まずは1から。編集者が旧版と現行の版で異なる作品はどういうものがあるのかを、岩波文庫を基準に具体的に挙げていく事とする。

・正法眼蔵
・孫子
・論語
・老子
・菜根譚
・易経
・大乗起信論
・臨済録
・碧巌録
・虚栄の市
・万葉集
・白文万葉集
・古今和歌集
・源氏物語
・マラルメ詩集

続いて2。

・緑帯所収の一部の日本文学作品(五重塔や高野山 眉隠しの霊などの定番ものが目立つ)
・断崖
・犯罪と刑罰
・正法眼蔵随聞記
・歎異抄
・ソクラテスの弁明 クリトン

他にもあるが、これ以上挙げてもきりがないのでここでとどめておく。

ここで挙げた作品の多くは旧版の方が評価が高い傾向にあるものばかりである。特に中国思想や仏教関係はその傾向がより強いと私は感じている。

旧版に関する情報をどういった方法で収集しているのかということについては、私の場合はameqlist 翻訳作品集成(Japanese Translation List)というサイト(URLはhttp://ameqlist.com/)をよく利用している。この中にある文庫一覧という項目を選択すると岩波やら新潮やらの文庫レーベルが掲載されているので、文庫レーベルごとに収録されている旧版について調べたい上では非常に参考になる。ただ、翻訳作品集成と銘打っているだけに、日本で刊行された文学や思想といった作品についてはカバーしていないのが欠点と言える。それでも記載されている情報がとても多いので有用である。

また、現行の版よりも旧版の方がいいというレビューの一例が以下のブログにあるので、ここにも目を通してみることをおすすめする。

ざら紙の『正法眼蔵』
https://blog.goo.ne.jp/tenjin95/e/d596d080c268653b95c77ec5317abc5a

新しいものほどいいという考えがあるが、古い方が評価が良いものも少なくはないので、古いからといって目を通さないのはもったいないと思う。その意味では文庫の旧版を調べてみるのはとても意義のある事だと言える。

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