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こんな図書館を建てたい!~函館キャンパスにおけるMLA連携 その2~

北海道大学附属図書館 水産学部図書担当 小林泰名

 さて、前回は北海道大学函館キャンパスでのMLA連携について、企画展示や動画作成を実施しましたよというお話をしました。ここで改めてメンバー紹介をしておきます。
 ・M(Museum) 総合博物館分館 水産科学館
 ・L (Library) 水産学部図書館
 ・A (Archive) バランスドオーシャン
 函館キャンパスでは上記3つの部署が連携協力して函館キャンパスの教育・研究に役立つ活動を目指しています。活動だけではなくて、建物自体も一緒にしようという計画も進めています。
 今回は、M・L・A、3つの部署を一つの建物に集めたら、どんな風に活用できるのかを考えていきたいと思います。
 新しい建物の仮称は「水産科学未来人材育成館」。少々長くて覚えづらいので、私たちは「スイカミカン」と略しています。

1)全体の計画

 現在は建て替えの予算要求をしているところで、大まかな計画はまとまっています。
 1階はオープンで学外にも開かれたスペース、2-3階に図書館と水産科学館のスペース。キャンパス全体のイノベーション・コモンズ化*に向けて、函館キャンパスにおける①学修空間(まなぶ)、②ラボ(つくる)、③展示・情報発信機能(みせる)の拠点となる施設です。

2)利用者ごとの活用イメージ

 では、この新しい建物を、利用者はどのように活用できるでしょうか。ここからは、私が思い描いているスイカミカンの活用法をご紹介します。どこまで実現するかはわかりませんし、これからもっといいアイデアが出てくるかもしれませんが、現時点での「こんな図書館を建てたい!」という夢と希望をお伝えします。

 全体のイメージは、

・1階が多目的に使えるオープンなスペース。日常的にはラウンジ、必要に応じて企画展示やイベント開催にも利用できるスペースです。実験の様子をインターネット配信できるようなラボも設置したいと考えています。
・2階は図書室。古いものから最新のものまで、水産科学関連の文献を利用できます。
・3階は水産科学館。常設展をおこなう展示スペースとバックヤードがあり、バックヤードでは教育・研究活動がおこなわれます。

全体のイメージ

1.学生さんの活用方法
①知る・知識を深める(まなぶ)
 3階の水産科学館で標本などの実物資料を見て学び、2階に下りれば図書室で図書・雑誌などを読んで知識を深めることができます。1階のオープンスペースではオンラインや対面の授業を受講する・各種イベントに参加することもできます。
 実物資料と文献を行き来しながら知識を深められるのは、学生さんにとって素晴らしい環境ではないでしょうか。

学生さんの活用方法

② 発信する(つくる・みせる)
 ①で得た知識を元に、仲間達と議論を交わしたり、学会やシンポジウムなどのイベントで発表することもできます。

学生さんの活用方法_発信する

2.先生方の活用方法
①調査研究・授業準備(まなぶ・つくる)
 3階の水産科学館で実物資料を見せながら授業をおこなったり、標本作りの実習などをおこなうことができます。
 2階の図書室では文献調査をし、授業準備にもご自身の研究活動にも活用することができます。
 1階ではオンライン動画の作成、授業資料の作成などに取り組むことができます。

②発信する(みせる)
 3階の常設展、1階の企画展で水産科学研究を広く一般の方にも伝えることができます。
 1階のラボからは札幌キャンパスや海外を含む他大学・他機関と双方向で繋いで授業配信ができます。また、動画教材を作成し、バランスドオーシャンの映像アーカイブに加えることで、全世界の水産科学に興味を持った方にオンデマンドで動画を見てもらうことができます。もちろん、学生さんの活用法と同様に学会やシンポジウムなどのイベントで発表することも。発表終了後のレセプションも1階で開催することができます。

先生方の活用方法_発信する

3.一般市民の活用方法(まなぶ)
 スイカミカンは一般市民の方にも活用していただきたい施設です。
 3階の水産科学館で常設展や1階の企画展を見たり、1階でイベントに参加して、興味を持ったことがらについて2階の図書室で関連書を読んだり借りたりして知識を深めることができます。
 展示やイベントを観た後は1階のラウンジで一休み。周りの展示を眺めたり、学生さん達が勉強したり発表したりする姿を見て、リラックスした状態で水産科学研究にふれることもできます。

一般市民の活用方法

 小中学生の遠足、中高校生の修学旅行にも是非、活用してもらいたいです。函館キャンパスは国道沿いにある上、フェリーターミナルからも近いので、北海道内のみならず東北からのアクセスもよいと言ってよいのではないでしょうか。
 1階・3階で水産科学館の展示を見て、1階でイベントに参加したり、2階の図書室を見学し専門書の並ぶ本棚を見たりすることで、大学の研究にふれることができます。

4.大学にとっての活用法
 1・2で見たように学生さん達と先生方に活用してもらうことで、よりよい教育・研究活動ができます。また大学の研究活動を外に向けて発信していくことができます。
 そして3で見たように一般市民の方にスイカミカンを活用していただければ、大学としては社会貢献ができ、また大学のPRにもなります。

3)未来の図書館・博物館を考える

 こんなことを考えながら、「今よりもっと活用される、今よりもっと素敵な図書館・水産科学館を作りたい!」とM・L・Aで具体的な要望を出し合い、施設部に伝えて図面を作成してもらい、それを見てまた意見を出し合い・・・といった作業をしているところです。
 現在の水産学部図書館の建物は1972年に建てられ、もうすぐ半世紀経とうとしています。老朽化が進んでおり、あちこちに不具合が出て早く建て直したい!と思っているところですが、新しく建てるスイカミカンは、適宜修理をしながら90年間使う予定で計画を立てています。90年後の図書館・博物館はどんな建物であることが求められるのでしょうか。
 ほんの2年前、現在の状況が予想できなかったように、これからも感染症や自然環境や社会状況の変化に伴って図書館・博物館に求められるサービスやそれに合った形も変わっていくことでしょう。その時々のニーズに合わせながら、でも本質は見失わずに、水産科学研究とそれを広く伝えていく活動に役立てることのできる施設にするにはどうしたらいいのか、頭を柔らかくして、計画を進めていきたいと思っています。

4)水産学部 学生応援プロジェクト

 はじめに「現在は建て替えの予算要求をしているところ」と書きましたが、要求が通り建物を建て替えることができたとしても、その後の維持にも費用はかかり続けます。そこで、水産学部では「学生応援プロジェクト」と銘打ってご支援を募ることもしています。
 「おしょろ丸カレー」を含む五島軒食品セット、バランスドオーシャンオリジナルグッズセット、練習船オリジナルヘルメット、北水旗(本物)などなど、水産学部ならではの素敵な返礼品もご用意しています(返礼品の内容は毎年変わります)。

水産学部 学生応援プロジェクト
https://sites.google.com/elms.hokudai.ac.jp/suisanouen/home

返礼品を眺めるだけでも楽しいですよ!

 それでは、また進捗があったり、おもしろい連携企画を実施したりしたらご報告します。これからも函館キャンパスのMLA連携活動にご注目ください!

*「イノベーション・コモンズ 」とは、ソフト・ハードの取組が一体となり、対面とオンラインとのコミュニケーションを融合させながら、あらゆる分野、あらゆる場面で、あらゆるプレーヤーが「共創」できるキャンパスであり、教育研究施設だけでなく、食堂や寮、屋外空間等も含めキャンパス全体が有機的に連携した「共創」の拠点である。キャンパス全体を「イノベーション・コモンズ」へと転換することは、多様な学生・研究者や異なる研究分野の「共創」による教育研究の高度化・多様化・国際化に貢献するとともに、地域・産業界との「共創」により、地方創生や地域防災、新事業の創出等に貢献するものである。(文部科学省「第5次国立大学法人等施設整備5か年計画」より)

#エッセイ #北海道大学附属図書館 #MLA連携

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