符亀の「喰べたもの」 20211219~20211225

今週インプットしたものをまとめるnote、第六十六回です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。


漫画

でこぼこ魔女の親子事情」(1巻) ピロヤ

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見た目ロリ中身223才の魔女(右)と、捨て子として彼女に拾われマザコンに育った人間(左)とが主人公のコメディ。版元ドットコムさんでなぜか1巻だけ書影がグレー一色だったため、2巻の画像を使っています。

作者がFGOやウマ娘の二次創作ツイートでおなじみのピロヤさんなこともあってか、二次創作ネタ漫画でありがちなハイテンションパワーワードギャグにあふれています。そういうノリに慣れている人には特攻が入るタイプのギャグ漫画です。私は毎話声を出して笑いました。

主人公の一人をマザコンキャラにして、こういうオタクノリが自然に作品世界に組み込めるようにしているのが上手いですね。作者に気持ち悪いことを代弁させられているのではなく、キャラ自身の愛が暴走しているせいで結果的に気持ち悪くなっている形で、言わされている感が薄いです。「キャラ崩壊」「なんでも許せる人向け」系のギャグをなんでもは許せない人でも読めるように、同人作品の味の濃さと商業作品らしい毒抜きが上手く嚙み合った良作だと思います。


千年狐 ~干宝『捜神記』より~」(6巻) 張六郎

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中国の古典「捜神記」を原作とした、千年生きた狐などの妖と人間との交流を描く物語。第三十五回以来の登場です。

前回で唐突にぶっこまれるギャグの面白さが強みの一つと書きましたが、この巻でもそれが見事に発揮されています。前回はそれが許されている理由がわかりませんでしたが、これはおそらく、単純に本作の原作である古典の「時折不可解な展開が出てくるがそれもそういうものとして受け入れないといけない」性質と相性がいいからでしょう。というかこの巻にいたってはもう参考文献つけとけば何やっても許されると思ってる節があるでしょ。その通りだよ。そのくせ古典世界を活かしたネタで説得力と世界観の魅力を増してるのがズルいよ。そりゃ面白いよ。


超人X」(1~2巻) 石田スイ

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超常的な力を持つ「超人」が増加した世界で、人工的に「超人」を作り出す注射器により力に目覚めた高校生の物語。

正直に言って、1巻はあまり面白くないです。主人公が覚醒するのが1巻の終わりで、そこまでは超人になった気持ちよさよりも人間でなくなってしまった後悔や主人公のダメさがずっと描かれており、1話でさくっとまとめてくれというじれったさが強かったです。サブキャラの方が存在感を放っており、彼女の話(2話)は面白いのですが、じゃあダブル主人公なのかというとそうではなさそうで、むしろもう1人の主人公っぽいキャラは1話以外ほぼ活躍せずと、1巻だけ見るとなぜこういう配役にしたのかや遅々として進まない展開にモヤモヤが溜まります。

一方、2巻後半のエピソードはとても面白かったです。主人公が自分の強みを活かし、相手と因縁のある方法で決着をつける展開は、両者の人生のぶつかり合いのようでロマンを感じました。能力バトルをどうすれば面白くできるのか、そのわかりやすい例を提示してくれたなと思います。

面白さがわかりやすくなる2巻を1巻と同時発売にしたのは英断だったと思いますが、「超人X つまらない」がサジェストされていたように、1巻のテンポを良くして1巻だけで面白いようにするほうが大事だったのではないでしょうか。ヒット作の次の作品であることや2巻からようやく面白くなる点から、「戦隊大失格」と同じ雰囲気を感じてしまいます。


今回はギャグ系が多め、というかギャグ以外は面白くてもここに書けるような内容がつかめずにボツにした作品が多かったです。わかりやすくコストがかからないギャグ系だけでなく、もう少し頭を回さなければいけない魅力も言語化していかなくてはいけないと感じました。


一般書籍

今週も読めませんでしたし、たぶん来週も無理だと思います。これに割ける時間がないっす。


Web記事

ボードゲームのバランス調整

Board Game Design Advent Calendar 2021 21日目の記事です。ボードゲームのパラメータ調整を最小回数のテストプレイで効率的に調整するための知見が書かれたnoteです。

モデル化してパラメータ数を減らすというのは理系学問でもよくあり、これを自分で思いつけなかったのは遺憾ですね(私の本職は錬金術師)。まあそもそも数値調整が必要なゲームを作らないようにしていたというのはありますが。

モデルにデザイン意図を反映させるなどの応用編まで解説されており、とても役に立つnoteでした。


3すくみの突き刺すギミックが新しい!知名度ゼロで180個売れた『three』の良さをとことん考えてみた

「3すくみをノンモチーフで実現するカードデザイン」を組み込んだゲーム「three」を紹介するPR記事です。

特許出願中の上記デザインや、言語のないイラストだけの説明書など、型破りで面白い発想が見事なゲームと、それをわかりやすく伝えてくれる見事な記事でした。


ボードゲームのデジタル化の工夫 - 『レッツプレイ!オインクゲームズ』のUI

オインクゲームズのゲームのデジタル版、「レッツプレイ!オインクゲームズ」のUIデザインを説明されたnoteです。

デジタルならではの問題を、どのゲームでも同じように表示されるUIでルールの増加を極力抑えながら解決しているのが見事ですね。こういう問題と解決を羅列するタイプの記事では結局何が言いたかったのかわからなくなってしまうことも多いですが、このnoteではそういった印象を抱かなかったのも上手いと思いました。課題解決後の状態が視覚的に提示され、何がなされたのかを各章で理解してから次にいけるのが大きいのかなと思います。


平成元年発売のテトリスの世界大会が 今大変なことになっている

1989年発売のNES(北米版ファミコン)用テトリスの世界大会において、技術革新により大変なことが起きている様をまとめられたnoteです。

書く情報の取捨選択が上手く、フリまくった「大変なこと」が何度も押し寄せてくる構成も合わさり、とても面白く読めるnoteでした。というか単純に起きていることが面白すぎる。


毒入りドリンクを注ぎ分けられる『暗殺ティーポット』のトリックを解説

同じ注ぎ口から別の飲み物を出せる、「暗殺者のティーポット(Assassin’s Teapot)」の解説記事です。

このトリックを解説する際に、どうやったのかだけ述べてなぜそうなるのか(その手順を踏むとなぜ別の飲み物が出てくるか)の解説は一旦後回しにする構成が分かりやすくていいなと思いました。私はこういうのをひとまとめにしようとして情報量が増えすぎる傾向にあるのですが、思い切ってわけるのもアリなのですね。


今週はかなり師走感のある一週間で、来週も同様の忙しさが予想されます。次回更新時のスカスカっぷりがたやすく想像でき頭が痛いですが、なんとか更新だけはしたいですね。

ちなみに先週フラグを立てていた新作は無事爆死しましたが、その日のうちに直してかなり良くなりました(テスト済)。やったね。

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