符亀の「喰べたもの」 20210117~20210123

今週インプットしたものをまとめるnote、第十八回です。
(昨日寝落ちしたため日曜日に更新しています)


漫画

ヤンキー君と白杖ガール」(2~5巻) うおやま

先週宣言した通り、既刊全巻買いました。

弱視だけでなく、多様な生きにくさへの真摯な取り扱いが見られるのが魅力的です。特にヤンキーのキャラ付けに思えた目元のキズがハンディキャップとして再定義した点は、読者の目を覚まさせつつキャラに厚みを持たせるのに効いていると思います。

ラブコメ系ってキャラにハマったらもう何されても面白く見えるので正当な評価を下せていない可能性はありますが、それでも今年読んだ漫画でベスト5に入りうる面白さかと思います。


スタンドUPスタート」(2巻) 福田秀

第十回で1巻を読んだ際にも述べましたが、起業した後のキャラをガンガン再登場させる構成にしたのが上手いと思います。起業したキャラのその後を描くことで、起業がゴールなあとは野となれ山となれ式の薄っぺらい漫画になっていないのが上手いです。キャラ達の掛け算で物語が生まれるのも、話を作るために必要な経営トリビアやアイデアの数を減らしてネタ切れを防ぐ効果があり、作話コストの面でも効いています。


スポットライト」(1巻) 三浦風

カメラが趣味の陰キャ大学生が、一目惚れした同学年の女子を盗撮し、彼女の参加する花見やミスコンのカメラ係になり、盗撮がバレながらも必死に青春をもがく話。

自分のやりたいことのために他人を使ったり努力の方向を間違っていたりと大学生の嫌なところがリアルに描かれているせいで、正直3話まではあまりハマりませんでした。ですが、主人公とヒロインとの関係が大きく変化した4話ラストで続きが気になってしまったので2巻は買います。ちゃんとした分析は、2巻が出た後で。


それでもしますか、お葬式?」(1巻) 三奈仁胡(原作)、岡井ハルコ(漫画)

おくる人たちの様々な事情を受け止めながら、葬儀社の新米社員が自分にできることを探し奮闘する物語。

面白い。面白いです。仕事ものに求められる裏側の話を描きつつ、キャラが立っていてしっかり泣ける。

特に構成が上手く、1話目冒頭のあれも、2エピソード目のあれも、描かれた時点でしっかり機能しながら伏線としても働いている。伏線を回収する際も、それだけに頼らず十分盛り上げてからトドメで使うのでクサく感じにくい。葬式という思いとお金が交錯するテーマも、シビアさと情のそれぞれを各キャラに割り振るところも、話作りが上手いと感じますね。見事です。


ダブル」(1~5話) 野田彩子

天才役者である宝田多家良と、彼を支える役者仲間の鴨島友仁とが世界一の役者を目指す物語。全話無料公開がされていましたが、5話まで読んで単行本買おうってなったのでここで止めました。

1話の構成が面白く、中盤まで多家良はほぼ出ず友仁がメインなのですが、セリフやモノローグによって読者は常に多家良の存在を意識させられます。そして多家良が登場し演技した瞬間、話の全てが持っていかれる。よく読めば友仁もいい役者なのですが、初見だと多家良にしか目がいかない。設定の通りに読者が動かされる作りが上手いです。

ただ一点難色を示させていただくと、1話冒頭の作りは不親切です。1話は「友仁の自分への語りかけを意識しながら、多家良が夢の中で次演じる舞台の演技を反芻する」という場面から始まるのですが、入れ子構造かつ名前だと分かりにくい「多家良」の語がいきなり出てくるなどの理由で、何が起きているのか掴みにくいです。PCだと2クリックで終わりますが、1ページずつ表示されるスマホだと5タップ分くらい意味不明な描写を見せられるのは地味に苦しいです。なので、リンクから試し読みされる場合はそこを踏まえてしばらく我慢していただければと思います。そっからは面白いので。


ぼくとねこ」(1~25話(最終話)) you

世界が吸うと死ぬピンクの霧で覆われ外出できなくなった世界で、ネコを求める「ぼく」の話。

「犬と旅に出るアメリカ人」の日本コンバート版としての「日本的なポストアポカリプスもの」であるとする分析がまさにその通りな作品。こういう批評がしたい。

蛇足ながら、別の観点からもう一点。ネコというのは「どっかにいっててもいってなくてもおかしくない存在」であり、Web連載においてはそれが強力なハラハラとヒキの製造機として働いていると感じます。そういう意味でも、引用した蟹春さんのおっしゃる通り、「猫と暮らす日本人」という新たなテンプレートを生みうる可能性を感じる作品でした。


続巻も第一巻も共に面白いものが摂取でき、非常にいいインプットができた週でした。巻数で見れば量も悪くなく、定期的にこれぐらいのインプットを続けたいところです。



一般書籍

がっつり漫画読みつつ一般書籍も読むのは、無理ってものよあなた。



Web記事

『えんとつ町のプペル』はなぜ売れたのか? キングコング西野亮廣が語る“お金”と“広告”

『えんとつ町のプペル』や炎上騒動だけ見てもわからない、西野亮廣が「信者」を生み出し離さない理由

プペル系から2本。両方とも2018~19年の記事なのでご了承ください。

少なくともマルチっぽいやつとかをマネする気はないですが、この辺りは普通に勉強になると思ったので挙げました。それ以上はヤケドしたくないので触れません。


個人開発者、Steamでゲームをリリースしたが初週で10本も売れなかったと悲しむ。情報を発信する難しさ

2年費やしてSteamでリリースしたゲームは初週で10本も売れなかった」が話題になりましたが、それへのメディア側からのアンサー的な記事。

前半の「売れなかった」の部分は結果論的な面もありますが、後半の「AUTOMATONに載らなかった理由」は興味深いです。一言で言うと発売日とかのニュース価値があるタイミング以外でニュースリリースもらっても取り上げにくいという内容ですが、これはリリース直前まで働き詰めでそこから広報をしようとする個人製作者には刺さるものかと思います。逆に言えば取り上げやすければ個人開発のゲームでも取り上げる可能性があるとのことですので、今後はそういうのも視野に入れたいと思います。


いよいよアナログゲームフェスタが近づいてきました。それへの準備とゲムマのカタログ〆切とその他諸々が重なって現在繁忙の一言という感じですが、文化芸術活動の継続支援事業に通ったおかげで次回作のコンポーネントのクオリティを高められるようになりましたので、頑張らさせていただく所存です。

ちなみに、アナログゲームフェスタの私のブースページはこちらです。まだ午後の部のチケットはあるそうですので、是非感染対策を行いながらお越しください。

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