符亀の「喰べたもの」 20201122~20201128

今週インプットしたものをまとめるnote、第十回です。


漫画

スタンドUPスタート」(1巻) 福田秀

第三回以来の登場です。ようやく単行本買いました。

日本が「サラリーマンでも起業家でも好きに選ぶことができる」(1話より)国になることを望む投資家が主人公の、ビジネス漫画です。1話がとてもよくできているので、まずはリンクから試し読みをどうぞ。

ビジネス漫画は机上論ばかりでうさんくさくなるか、理論を説明することに躍起で面白さが伴わないかが多い印象ですが、本作ではキャラクターの可能性を主人公が見抜いて発揮させる構成にしており、キャラ達の物語を中心にしているのが上手い点だと思います。キャラクターが自分の価値を見つけて進んでいく物語は共感も面白さの理解もしやすく、「このキャラだから成功した」とできる分理論を並べて展開を正当化させる必要も薄れます。以前の話のメインキャラが再登場する展開も、人を大事にするこの漫画のテーマと合っており、伏線かのように働いて漫画への愛着をわきやすくさせることにもつながっているように感じます。


ダンピアのおいしい冒険」(1巻) トマトスープ

17世紀の実在の航海者ウィリアム・ダンピアの著書「最新世界周航記」を基に、彼の航海と博物的関心を食を中心に再構成した漫画です。ちなみに今年のWEB漫画総選挙で第4位だったそうです。

先程挙げた通り、この漫画の上手さは食べものをテーマにしたことだと思います。博物学的な興味はやや共感できる読者層が狭いかもしれませんが、食べものというより普遍的なテーマを軸に据えることで、興味を持ちやすくなっています。だからって人食いサメやガラパゴス島のカメまで食べるか?とダンピアの知的好奇心の深さやその他乗組員のギリギリの食生活が際立っているのも見事です。実は彼らは現代的には海賊にあたるんですが、そんな血なまぐささや死と隣り合わせの殺伐とした面が食事をメインにしたおかげで薄れ、読みやすくなっている印象も受けました。


パリピ孔明」(1~2巻) 四葉夕卜(原作)、小川亮(漫画)

三国志の諸葛孔明、死した後に渋谷へと転生してシンガー見習いと出会う。その歌に心を動かされた孔明は、彼女をスターにするために軍師として第二の生を歩むことを決めたのであった。なお最新刊の3巻は完売して重版待ちなのであった。

ぶっ飛んだ設定に反し、話は王道のプロデュースものです。途中三国志ネタは出てきますが、「まあ孔明がいるならこれぐらい順調に成功するか」と読者を納得させるための孔明、という印象があります。

正直言って、この作品の面白さや上手さは未だ言語化できていません。斬新な設定から王道な展開を進めるのは真顔でギャグやっているような面白さがありますし、孔明という強い設定も面白さの要因の一つではあるのですが、それ以上の何かがまだある気がしているんですよね。

ちょっと続刊を読んでより分析が進むまで、これ以上はお預けとさせてください。今回はあくまで紹介と連載が続くように応援ということで。


漫画家と異星人 漫画家が婚活で数学者と出会った話」 ことり野デス子

BL系漫画家が、婚活で出会った想定外の行動を取り続ける異星人のような数学者と結婚するまでについてを書いたエッセイ漫画。

最初に彼側の異星人っぷりで読者を惹きつけておいて、作者の彼への理解が深まると共にラブコメし始めるのがいいです。作者さんと共に、読者にも彼氏さんをいとおしく感じさせる構成になっており、つかみの強さからキャラ愛に持っていって離れられなくさせる展開が見事です。こいつラブコメについてはおんなじ分析しか言わんな。

作者さんの言語化能力が高いのも魅力で、幸せを高い解像度で感じて漫画化されているので幸せのおすそ分けをいただいている気分になります。過干渉しないいい意味でドライな作風も含め、さっぱりと読める点もいいですね。


末期ガンでも元気です 38歳エロ漫画家、大腸ガンになる」(1~6話) ひるなま

タイトル通りのエッセイです。なぜか自画像が鳥獣人物戯画風の兎なのがポイント。

あまりにも語りが軽くて不謹慎ながら面白いです。リンクから見ていただけるように、各話のタイトルからしてもう何かがおかしいです。ですが重くなり過ぎない程度にしっかりした話も書いてらっしゃるので、闘病エッセイとして純粋にクオリティが高いです。

全話公開は12月10日までとのことですので、興味のある方は今のうちに全部読んでみるのをオススメします。


一気に注文した本たちがじわじわと届いてきているので、ここに書いているのよりも数が読めていていい感じです。来週も同じぐらい読めるといいですね(他人事)。



一般書籍

読めませんでした。

というか面白い本が何冊も手に入ったせいでどれも一部だけ読んでしまい、結果読破した本が0でした。

来週は読み切れるといいですね(他人事)。



Web記事

ゲームマーケット2020秋での設営の話〜バンソウ編〜

サバンナテリトリー」などを手掛けられたサークルさんの、ゲームマーケット2020秋における設営のトライ&エラーがまとめられた記事です。

良くなかった設営例と改善後とが理由つきでわかりやすく載っているため、非常に勉強になります。このサークルさんはエリア出展(区画を丸々借りる、お値段のかかる出展方法)だったのですが、ほとんどの内容は我々一般出展の者にも共通する内容かと思います。

しかし、ゲムマ当日の2日間でここまで試行錯誤されたスピード感には脱帽する限りです。


TikTok For Business オフィシャルユーザー白書 第3弾 発表! 回答から回遊へ 興味で突破する時代の再来。

TikTokの公式が、日本のユーザーの動態をまとめて分析した記事です。端的に言えば、TikTokユーザーには目的のもの以外も「回遊する」形で楽しもうとするニーズがあり、それによって他社とは異なるユーザー傾向を示しているという内容です。

とても興味深く、納得できるデータだと思います。こうなると1つのメディアの中にある情報だけでお腹いっぱいになってしまうため、どうやって複数のメディアにアプローチするか、または自分たちのところまで目を向けてもらえるようにするかが一層重要になりそうな気がします。


『視覚調整』が悩ましい

「The Last of Us Part II」の4段組みのロゴについて、1段目のTをどう2段目以降と左揃えしようものかという考察記事です。また、そこからフォントやロゴ全体の視覚調整についての概論にまで話が拡張されています。この「視覚調整」とは、目の錯覚を踏まえ幾何学的な調整から一部を崩し、より整ってみせるテクニックのことです。

ちなみに拙作のロゴも、既存フォントを使ってカーニング(文字間隔の調整)するだけでなく、そこから整えるパターンがまあまああります。最近のものですと「インヴァージョン」のロゴは「Labrit」を斜体化した後で!とeに手を加えたものでして、見比べてみていただくと面白いかもしれません。


『鬼滅の刃』大ヒットの理由が見つかることは無い

久々に、本しゃぶりからのご紹介。最初から最後まで面白くて要約するために削る部分がないので、ぜひ原文を読んでください。

あと引用されてるnoteについては、自分で言ってる(物語と解説文なので微妙に違いますが)通り冒頭に強烈な掴み持ってきた方が良かったと思いますよ。


まいにちボードゲーム 番外編 コロナに負けるなゲムマの決断

最後に宣伝です。

ゲームマーケット当日に取材いただき、そのまま写真と簡単なインタビューを載せていただきました。まあだいたいあんなことをしゃべっていた気がします。たぶん。

ちなみに、写真では可動式マスクを着けてどや顔している私の姿が見れます。推すとこがそこでいいのか?



今週は、これら以外に映画を2本(時効を迎えた劇場型犯罪に自分の声が使われていたと知った男と記者とがその真相を追う「罪の声」と、黒猫型の妖精シャオヘイががんばるアニメ映画「羅小黒戦記」)を見てきました。前者はW主人公がそれぞれ真相を追う前半と2人が出会って物語が加速する後半で、後者はひたすらシャオヘイがかわいい前半とそれで感情移入しまくったシャオヘイががんばる後半で、と共に2部構成が意識されていたのが印象に残っています。映画は2時間強の長尺をほぼ確実に最後まで見させられる(代わりにそれだけの尺をもたせないといけない)ので、複数構成と相性がいいんですよね。そのあたりもインプットできたのも、今週のよかった点に思います。

来週も同程度の漫画と一般書籍を読める予定なので、しっかり咀嚼してまとめていきたいですね。あとは、最近分量が増えて描くのが面倒に感じている分執筆も公開も遅くなっているので、それも改善していきたいところです。


あ最後に、久々にtwitterでいいね100超えるぐらいツイートが伸びました。おかげで投稿の通りいろいろと恩恵にあずかり、非常にありがたく思っております。今後とも応援の程よろしくお願いいたします。


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