符亀の「喰べたもの」 20230723~20230729

今週インプットしたものをまとめるnote、No. 149です。

各書影は「版元ドットコム」様より引用しております。



漫画

スタンドUPスタート」(10、11巻) 福田秀

「訳アリ」人材の価値を見抜き、起業によってその価値を高めようとする人間投資家を主人公とした、起業マンガです。No. 104以来の登場です。最初11巻だけ買ったら、10巻を持っていなかったことに気づいて急いで買い足しました (日記要素)。

10巻末から11巻にかけてのエピソードがとても面白かったです。まず、前の巻から暗躍するキャラを脅威として先出しし、主人公が「外法には外道で」とか言い出してもそこまでおかしくないような雰囲気づくりをしておく。そして裏技による撃退というカタルシスを与えつつも、倒した相手はちゃんと本作らしくフォローする。そして主人公にも落とし前をつけさせつつ、最後は汚れ仕事ではなく彼らしいやり方を選ばせて主人公として復活させる。外法による勧善懲悪でカタルシスを得つつも、主人公の格は下げず作品のテーマに回帰させて作品の陳腐化は防いでいる。その前からの雰囲気づくり (そしてちょうどこの巻で根回しの話が出てくること) も含め、よくできた脚本だなと感心します。


兵器少女」(1〜3巻(完)) 千田浩之

兵器として改造された少女たちと、1人の兵士との交流を描いた物語です。

1巻は、メインキャラである兵器少女と兵士とが親愛を深めていく様が大変よかったです。特に3話のコロコロと表情を変える様子が可愛らしく、やはりキャラを立たせるにはリアクションさせまくるのが一番だなと感じました。2人目の兵器少女も、2人の関係に対するスパイスとしてうまく働いていたと思います。

一方で、3人目以降が来てからはあまりメイン2人の話が進まず、どんどん兵器少女は登場するものの設定を開示しているだけのようにも感じてしまいました。このメイン2人とも積極的にラブコメを仕掛けに行くタイプではないですが、ならその代わりに長期的なストーリー牽引用の謎や目標、例えば人を殺さない兵器になるためにすべきことを探すために他の少女に会いに行く、とかが提示されるとよかったのかなとか思ってしまいます。うーん、ラブコメ系でメイン以外のキャラの扱いって難しいんですねえ。


じごくかわいいえんまちゃん」(1巻) 水野宇智

間違いで地獄に行ってしまった少年と、彼に一目惚れして現世までついてきてしまったえんまちゃんとのギャグ漫画です。

えんまちゃんのキャラがいいですね。変顔ロリが他意なく高校生にスパンキングしてアヘらせだしたらね、そりゃ面白いっすよ。キャラも世界観も崩壊させられたらね、そりゃ面白いっすよ。これ以上ボクは本作を分からないので、とりあえず2巻ください。


殺陣ロール」 小園江ナツキ

ヤクザを狩るお嬢様を描いた読み切りです。

作品全体をダジャレが貫いているのがいいですね。これだけ技名やキャラ名をダジャレまみれにするとクサくなりそうなものですが、最初に主人公がしょうもないダジャレ好きだと示すことで作者のドヤ顔感を薄れさせています。おかげでガードが下がったところに「あらすじい」のようなちょっと上手いやつがくるから、悔しいですが笑ってしまいました。そして何より、最初から最後まで一貫してダジャレでできているので、話自体も筋が通っていて高クオリティに感じやすいと思います。

ダジャレにせよ何にせよ、一本筋を通すことの重要性を感じました。ヤクザものだけに。


わたしひとりの部屋」 udn

うまくいかない人生とゲームを描いた読み切りです。

キツい話で、何も解決していませんが、単なる鬱漫画になっていないのが凄い作品だと思いました。おそらくラスト、「たいして好きじゃないものを食べて、」からの「ごはんがおいしい。」に、無理やりなハッピーエンドではない程度の救いが見えるからなのかなと思います。このセリフの直後にまだ日々への恐れがあるところしかり、直前のゲーム描写の爽快感と虚無感のバランス感覚しかり、絶妙なところで成り立っている作品だと思います。


セールで一気買いした作品をそこそこ読めましたが、面白いものでも魅力の言語化ができないものが多く、いくつか没にしてしまいました。そういうのが一番もったいなくてよくないと思うよ。


一般書籍

先週に引き続き漫画読みに時間を吸われましたが、ちゃんと読み進めてますよ!1章30ページ分ぐらいだけ。


Web記事

アークライト 野澤 邦仁のボードゲームを作るには Vol.03『モックアップ制作、クローズドテスト編』

アークライトの制作責任者である野澤さんが、「予算50,000円で、創作ボードゲームを20〜50個制作&ゲームマーケットに出展し、販売すること」を目標に据え、その条件をクリアする手法を解説する連載の第3回です。

試作品のペラペラなカードを適当な市販のカードと一緒にスリーブに入れてプレイ性を高めるのは私もよくやりますが、その時下敷き用の市販カードは裏向きにしておいた方が邪魔な視覚情報が減るというのは盲点でした。あとこの記事には書いていませんが、手書きの文字は結構読みにくいので試作品カードはwordとかで作って印刷した方がいいと思いますよ。


正方形を作るゲーム

ボードゲームの得点設計方法として、2種類の得点軸を均等に伸ばさせる方法を推奨したツイート群です。

やり方自体は既知のものですが、ゲームボリュームが倍になる、ゆえに最後までやることがあるというメリットはちゃんと認識できていませんでした。どっちかというと、関連ツイート (探しましたが見つけられませんでした) にあった「片方特化でもワンチャン勝てるようにしないと実質戦略が一択になる」というデメリットの方を感じていましたが、今後は選択肢に入れるようにしておこうと思います。


マーダーミステリーのルールブックと公正さ

誤った共通認識から来るトラブルを避けるための、マーダーミステリーのルールブックの書き方について書かれたnoteです。

そもそもの前提として、「ルールブックは、その作品を遊ぶ上で唯一『ルール上の共通認識』となるべきもの」であるというのがちゃんと意識できていなかったなと思います。各内容は基本的にマダミス用のものですが、普通のボードゲームにも応用できると思いますので、また読み返したいと思います。


AIで80点の漫画が作れるからこそ、「100点」を見極める人間の価値が高くなる!?──『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』編集者・佐渡島庸平に訊く『エンタメ業界・うまい飯といい話』第1回

「ドラゴン桜」や「宇宙兄弟」の編集者だった佐渡島庸平氏の考えるクリエイティブの真髄に迫ろうと、ご飯を食べながら行われたインタビューの記事です。

非常に学びの多い記事でした。最初2段落だけで、「本当の物語づくりって、彫刻家が作品を削り出すように、作家の記憶に残っている瞬間を削り出していく行為」(その瞬間は)「親や友だち、師匠や先生との関係っていうことが多い。記憶を研いで削って残ったものが作家自身にとって価値があるものなんだけど、それは同時に他人にとっても分かりやすい、受け入れやすいものになっている」といきなりいい内容をぶっ込んでくれています。

一番刺さったのは、「ゲームも“物語る”ことも遊びで、僕らの職業は遊びを作ること」の章でしょうか。基本的にフィクションの体験は現実には勝てないが、現実が設計されたものではないためにフィクションが勝つことがある。だからこそ、現実の体験をどうフィクションで勝るかを考えるのが重要である。システム偏重型の私は現実の体験を軽んじてしまいがちですが、確かに「普通現実には勝てない」という視点は重要だと思いました。


『ダンガンロンパ』が目指したのは“10年後も残るカルトゲーム”。『そもそも余剰時間でやるようなゲームを作っていない』小高和剛氏が説く、ニッチでも深く刺すゲームの戦い

「ダンガンロンパ」のディレクターの小高和剛氏の考えるクリエイティブの真髄に迫ろうと、ご飯を食べながら行われたインタビューの記事です。上の連載の第2回です。

こちらでは、「こだわらない部分を言ってあげることのほうがディレクション」(今の若者が台頭する方法は)「問題が勃発しているようなタイトルに自ら入っていって、このゲームを俺色に染めてやるぜ、みたいなやり方」という2点が刺さりました。後半に関しては、これが刺さりましたと公言しておくのがあまりよくない気もしますが、まあこんなところまで見られないと思いますので。


Araneid

廃屋で肝試しをした4人の顛末を、1人につき1行の形で描いた作品です。

あみだく詩」に近い書き方ですが、こちらは文字の流れと時間軸を対応させて、よりこの書き方をする意図が読者にわかりやすくなっていると思います。特に、4行が別のことを書いている部分が読みにくくて読解速度が遅くなるのに対し、彼らが逃げようとしたタイミングで行数を減らしテンポを良くしてるのが、臨場感を高める演出として上手いと思いました。


先週から見始めたこたけ正義感さんの逆転裁判実況に感化されて、2話までで止まっていた「逆転裁判5」をクリアしました。3話が一番面白かったので直前で止めた当時の私のセンスの無さが発覚しましたが、まあ許しましょう。

「大逆転裁判」をやった時にも思いましたが、3Dになったことで動きを全部アニメ化しなくてはならなくなり、テンポを悪化させている印象を受けました。そのせいで、シナリオの都合で真犯人が最初から分かっている1話と2話だと展開が遅く感じ、結果積んでしまう原因になったと思います。言い訳です。

真相が (予想はつくものの) わかりにくくなった3話以降は楽しめたので、やはり真相が知りたいという「ミステリー」は、テンポが気にならなくなるぐらい強力な誘引剤なのだなと再認識しました。6も買ってるので、タイミング見つけてやります。

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