符亀の「喰べたもの」 20221225~20230101

今週インプットしたものをまとめるnote、No. 119です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。

あけましておめでとうございます。(1月22日執筆)


漫画

ぼっち・ざ・ろっく」(1巻) はまじあき

アニメが面白かったので。版元ドットコムさんに5巻しか書影がないので今回は雑にリンク埋め込みです。

1話からだいたい5話ぐらいにかけて加速度的に面白くなっていき、そのまま1巻最後まで走り抜けているのがすごいなと思いました。そしてその面白くなってからのパワーで1話を再編集したアニメスタッフの方々もいい仕事してくれたなと思います。

その「面白くなっていき」ポイントですが、1話は火力のある変顔やギャグがほぼなく、あまりにもサラサラ読めすぎるんですよね。一方面白くなってきてからは、きらら系という文脈にそぐわない激しい否定 (主人公の奇行に対する「面白かったの最初のうちだけでしたね」など) や顔面崩壊という想定外のギャグで驚いて目が止まり、結果そこが印象に残って、面白かったと感じるための拠り所になっていたと思います。

あーこうやって思い出すためのとっかかりとなるシーンを作るのが、面白いと感じるために必要なのかもしれません。書きながら流れで思いついた理論ですが、結構重要なことな気がしてきたのでじっくり考えたいと思います。


金色のガッシュ!!2」(1巻) 雷句誠

「金色のガッシュ!!」の第二部、魔物を滅ぼそうとする敵と、それに立ち向かう清麿との話です。

正直に言って、2話から3話までは何の話なのかわかりにくく、無印のガッシュのファンなこともあり結構不安な読み心地でした。無印ガッシュの一番白眉なところを「魔物が人間界に来て、力を使うために必要な魔本を読める人間とパートナーになるが、魔本が燃えると魔界に帰る」という死でない形で永遠の離別を描ける設定から来る「死の作劇的いいとこどり」だと思っていたこともあり、思いっきり1話でキャラを殺してその良さを投げ捨てたように見えたのも不安をかりたててくれました。だからって9月の発売からこんなに積むなって話なんすけど。

ですが、4話ラストから5話のカタルシスはすごかったです。もう文句なく素晴らしかったです。ぶっちゃけこの話でも本作における目標、何の話なのかはわからない (魔界の危機を退ける話なのはわかっても、どうやるのかはわからない) ままなのですが、とにかく見たいものを見せてくれたので満足です。この連載でひたすら理屈をこねてきましたが、やっぱり気持ちいいシーンの火力には勝てないなと思いました。

(以下ネタバレ)
そのうえで理屈をこねますが、5話のご褒美タイムがだらだらとしたうざったいものに見えない理由は、それまで「何の話」なのかを読者に誤解させていたのが大きいと思います。上記のように、確かに4話までにおいて何をすればいいのかは曖昧だったのですが、それでも「2は清磨と新しい魔物との話なのかな」という雰囲気はありました。それを4話ラストで「2も清磨とガッシュの話です」と見せつけたからこそ、「ではその名コンビの活躍を思う存分楽しんでください」と言わんばかりの5話にノリノリになれたのかなと思います。このように誤解を解消させつつ正解のご褒美タイムを作るやり方は、「ロマンの作り方」、というより「すべらないロマンの作り方」として覚えておきたいですね。


HUNTER×HUNTER」(20~32巻) 富樫義博

せっかく帰省したので、実家にある蟻編と選挙編の分を読みました。

前回考察した通り、非常に論理的に展開されるだと思いました。その中で「本当はこうしたらいいのはわかっているが、どうしてもやりたい/できない」というキャラの思いが話を動かして起承転結の「転」を作るのが、キャラの性格や意志を印象付けて魅力的に感じさせるのに役立っているのかもしれません。


正直「ぼっち・ざ・ろっく」を読むまではきらら系にいいイメージを持っていなかったのですが、今回言語化を試みた結果、なんとなく苦手な部分 (読み味が淡々としすぎている) が自分でわかってきた気がします。ありがとうぼっち・ざ・ろっく、全巻買ってるから続きはまた来週以降な。


一般書籍

江戸の学びと思想家たち」 辻本雅史

江戸時代の思想史について、思想家の思想形成プロセスである<知のつくられかた>とその<思想を語るメディア>の観点から紐解いた新書です。

思想家1人1人への考察が基本ではありますが、タイトルにもある通り、「江戸の学び」についての部分も面白い本でした。明治の近代化の成功要因として庶民の高い識字率については知っていましたが、手習い塾に通い書くことから学んでいた庶民が全国的にいたことを示されると、想定以上に学びが普及していて驚きました。

各思想家についての部分も、その人の考えを知るための「何によって学び」「何によって誰に伝えようとしていたのか」という視点の有用性を思い知らせてくれる内容で、とても有意義でした。これまでメディアについてはあるものを使う程度にしか考えていませんでしたが、もっと意識的に選択すべきだと考えなおすべきですね。


Web記事

もうゲームマーケットに持ち込む数を(あんまり)悩まない

ゲームマーケットへの持ち込み数として、およそ合理的な値の出し方を考察されたnoteです。

新作は予約数の2-3倍、旧作は前回の30-150%というのはおおよそ実感にも合っており、適切な値だと思います。まあそれでも私は絶対売り切れないような数持っていくんでしょうけども。


オインクゲームズらしいトリテってなんだろう

オインクゲームズらしさを『デザインにルールを含められる』『駆け引きがある』『他人の行動により、自分の打つ手を考える』の3点とし、それを満たしたトリックテイキングができないか考察されたnoteです。

作品自体の良さでなく製作者のらしさを考えるのはあまり好きでないのですが、実際にやってるところを見ると面白そうだなと思い直しました。やっぱ食わず嫌いは良くないですね。


🦊『かいけつゾロリ』🦊の原ゆたか流 物語のつくりかた

原ゆたかさんが「かいけつゾロリ」を書かれるやり方をまとめたnoteです。

他作品の分析や製作方法が、完全に映画脚本の文脈で驚きました。また完成稿のレイアウトが読みやすくもダイナミックで、第一線で活躍している人のすごさを改めて思い知らされました。


あみだく詩

あみだくじ状になっている詩です。

詩のプラットフォームとしてこういうのもあるのかと驚かされたので紹介します。特に、横線部分が進行方向に読む (つまり回文的な面白さもある) のがスパイスとしてよく利いていると思いました。


年末年始の帰省にかこつけて、京都の「芭蕉と蕪村と若冲」展に行ってきました。ぶっちゃけ3名ともあまり作品を見たことがなかったのですが、特に若冲の「鶏図押絵貼屏風」と芭蕉の「朝顔に我は飯食う男哉」が好みでよかったです。え?「朝顔に」の句は正岡子規にボロカス言われてる?うるせえ俗気にあふれてようが元ネタがある系の洒落が好きなんだよこっちは。

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