符亀の「喰べたもの」 20210620~20210626

今週インプットしたものをまとめるnote、第四十回です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。


漫画

メダリスト」(3巻) つるまいかだ

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青年と少女、2つの人生を賭けて1つの夢に挑む物語。概要はリンク先か第十三回を、読みやすさを保ちつつ情報量を高めている点への考察は第二十三回をご覧ください。

この巻も、1話目の冒頭から素晴らしいです。新キャラや事件という掴みもバッチリですし、そこからキャラの成長という今までの描写を思い出させるシーンにつなげ、読者を作品世界に引きずりこんでいます。

中盤も見事で、各キャラの演技の個性という形でフィギュアスケートの周辺知識を説明し、主人公の覚醒の描写もよく、そして努力型のキャラの活躍によって主人公補正で全てが決まるのではないというリアリティを感じさせています。見事なプログラムです。

最後で「しっかり跳んで転ばずに着氷する」という意味の「降りる」を説明無しに使い、しかも初出が「2A(ダブルアクセルの略、こちらは説明有り)を降りて」というセリフのため「2A」の意味を覚えていないと本当に意味が分からなくなってしまっているのは少し残念でした。ですがそういう揚げ足取りのような部分にしか問題を感じなかったこと、そのこと自体が、本作の凄さを表していると言えるのかもしれません。


君のことが大大大大大好きな100人の彼女」(6巻) 中村力斗(原作)、野澤ゆき子(作画)

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イカれたハーレムもの。(第一回の記述より再利用)

第二十六回では各ヒロインに平等に見せ場を作ることによる画一的な展開について苦言を呈いましたが、この巻ではその問題が解決されており、何度も声を出して笑わせていただきました。そしてその解決方法が「他ヒロインのことも性的に好きなキャラの変態度を高め、雑に扱えるボケ枠として差別化することでメリハリを生む」というものだったのも笑いました。

ただ実際これは結構優秀で、特に作品の設定上もう結ばれているため、変態化したヒロインも負けヒロインにならないのが確定していて不遇感が薄いのが面白いです。だからってここまで振り切るか?いや全キャラ振り切ってるか。


わたしのアスチルベ」 あむぱか

恋愛感情がない「アロマンティック」、および他人に性的欲求を抱かない「アセクシャル」をテーマに描かれた読み切りです。このテーマで89ページの読み切りを載せられるジャンプ+が強すぎる。

話自体も面白かったですし、こういうセクシャルマイノリティが題材の漫画を読みながら次の展開を予想する際、自分の性的偏見が露呈してその存在に気づくという体験も、不謹慎かもしれませんが興味深かったです。

掴みこそ弱いものの、このテーマに真摯に向き合われている印象を受けましたし、鬱展開もなく軽やかに読める作品だと思います。ご一読ください。


諸々が修羅場ってきているので、ここ一月ぐらいはこれぐらいの読書量と考察内容に落ちるかもしれません。それでもインプットと更新は最低限続けていくつもりですので、よろしくお願いいたします。


一般書籍

一冊読んだやつはあるのですが、どうまとめるかを考え中なので今週は無しとさせてください。来週も書かなかったらボツったということで。


Web記事

自作ゲームをVtuberに実況配信してもらったらすごく楽しかったしゲームも売れたしでとても良かった……という話

タイトルそのままのnoteです。綺麗なWin-Winの形になっているので、類似の案件を考えている場合は参考になるかもしれません。

依頼されたVtuberさんの優しさや魅力が成功のカギだったところは否めないですが、依頼者さん側も愛や良いところ探しの上手さにあふれており、そこが案件を成立、成功させた大きな要因になったのではないかと思います。


いかにして文章を読みやすくするか:読点・『て、』の回避・改善案

マシュマロ公式さんによる、読みやすい文章を書くためのコツを実例と共に挙げられたnoteです。文章全体の改善部分は有料であり、そこは読んでいないうえでの紹介であることをご容赦ください。

「て、」の回避は経験則でやっていましたが、理論的な解説を聞いて理解が深まりましたし、応用もしていけそうです。投稿された文章を直しながらという形式ではありますが、投稿者さんへの敬意が感じられて嫌味な印象を受けなかったのも、書き方が上手いなあと思います。


多様性を前提とする物語とも共鳴、STUTSが『大豆田とわ子と三人の元夫』主題歌に詰め込んだヒップホップへの愛とこだわり語る

Youtubeでこの主題歌がオススメとして現れ、関連動画やコメントから毎話異なるバージョンのエンディングを流していたと知って、その経緯を調べた結果見つけた記事です。なおそのエンディングのプロデューサー(「水曜日のダウンタウン」などの藤井健太郎)さんのインタビューは見つからなかったのでその意図などはわかりませんでした。残念。ちなみに曲としては Presence IIIが一番好きです。

記事としては、構成が上手いと思います。本題であるSTUTS氏のインタビューは2ページ目以降にし、1ページ目では上記の仕掛けを各バージョンの動画を埋め込んで視覚的にわかりやすくしながら各バージョンのラッパーさんのコメントを載せることで、インタビュー前にその仕掛けについて読者の頭に叩き込んでいます。2ページ目以降も作曲の過程の動画など面白い内容が目白押しで、とても良い記事でした。

しかし、ここまで練られたドラマを視聴できなかったのが一番残念ですね。アマプラに来てはいただけないでしょうか。


ゲームなので上には挙げられませんでしたが、アイドルマスターシャイニーカラーズの新しいシナリオがとても良かったので、最後に少し触れます。そのシナリオは幽谷霧子というキャラのLanding Pointという新モードでのもので、実装されてすぐですし、まだ読んでいない方は以下読み飛ばしてスキを押してからお帰りいただけますと幸いです。

このシナリオでは、「霧ちゃん」という上記アイドルを模したSiriのようなAIが登場します。まずメインストーリーでそんな飛び道具を使ってくるのに、既に凄みを感じます。そしてそのAIをどう使うのか、霧子とどこが同じで、どこが違うものとして描くのかを考えながら読んでいたのですが、その予想には霧子をどう見ているのかというプレイヤーの思考が無意識のうちに表れています。そしてこのストーリーの凄まじいところは、そのプレイヤーの考えも組み込まれた、ある種メタな構造になっているところです。そして、そのメタがストーリーの本筋ではなく、作中で完結したメッセージやキャラの成長を描きながらも気づいた人向けのスパイスとしてメタが使われている点に、心から感動いたしました。

元々メタ的なネタは好きだったのですが、このストーリーにて主題ではないメタの可能性に気づかされました。これはいつか挑戦したいテーマですね。いやそれをやりにいった時点でメタが主題になっているという指摘はごもっともなのですが。はい。

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