符亀の「喰べたもの」 20230716~20230722

今週インプットしたものをまとめるnote、No. 148です。

各書影は「版元ドットコム」様より引用しております。


漫画

ダークギャザリング」(1~12巻) 近藤憲一

母親の魂を取り戻すため幽霊を捕まえてより強い霊を作ろうとする少女と、自分とヒロインとの呪いを解こうとする主人公との物語です。アニメ化したのと前々から評判を聞いていたのとで、一気読みしました。

いやー、面白かったです。今週は5巻までで止めようかとも思っていましたが、続きが気になりすぎて後日届いた既刊も全部読んでしまいました。

まあまず、「霊でやるポケモン」ともいうべきコンセプトがいいですね。普通のキャラとは違い、霊には基本的に進むべき物語や目標がない (本作の霊にはありますが、明らかにサブの物語であって本筋ではない) ので、キャラが増えても物語が複雑にはなりにくいです。かといってそれぞれの過去などで掘り下げはできるので、単に能力や武器を手に入れていく形式よりは物語を描きやすいです。キャラを増やすデメリットを減らしながらメリットだけ享受している形で、いい設定を思いついたものだと感心します。

設定面では、「人形に体の一部と霊を入れて身代わりにする」形代も上手いと思いました。主要キャラの本体に傷を負わせずにダメージ描写ができますし、霊にもダメージが入ることで自然に霊同士のバトルに持ち込めます。霊側は (その場では) 倒されたら終わりなのも、バトルに緊張感を与えいていていいと思います。

そのうえで、本作一番の魅力は、ヒロインのヤバさだと思います。(以下ネタバレ注意)

本作のヒロインは、恐怖と主人公に魅入られています。そして定期的に、そのヤバさをお決まりの表情と共に見せてくれくれます。このゾクゾクが素晴らしく、霊とのバトルものだと思っていた読者の思考の外、安全圏だと思っていた身内側から全力でぶん殴ってくれます。いわゆる「人間が一番怖い」的なやつではありますが、安全ラインの内側をサクッと蹂躙してくる感じに何度食らってもビビってしまいます。今後が楽しみな作品が増えてうれしいです。


コワい話は≠くだけで。」(2巻) 景山五月(漫画)、梨(原作)

提供者のコワい話を、深掘りなどせずただ聞いて描いてまとめただけの怪談集です。No. 117以来の登場です。

14話が最高でした。(以下ネタバレ注意)

「聞くだけなら大丈夫だって思うじゃんか普通」という、本作のコンセプトとなる安全装置をぶち壊すようなセリフ。そしてこちらを指さしての「お前に言ってんだよ」。「お前だー」的な怪談あるあるのオチですが、先にメタなセリフで嫌な予感をさせていることの答えのようになっているため、陳腐に感じる前に脳が受け入れてしまう。もうこの話は破滅に向かうしかないのだと気づかされてしまう。そういう力がある話でした。この先どうなるのか楽しみです。


君のことが大大大大大好きな100人の彼女」(14巻) 中村力斗(原作)、野澤ゆき子(作画)

イカれたハーレムもの。(第一回の記述より再再再再再再利用)

この巻で登場した「暴力描写に興奮してしまうお嬢様」ヒロインが、やたらツボにハマりました。性癖じゃなくて笑いの方の。前回も書きましたが、私は痛みを伴わなそうなパワー描写が一番強いギャグだと思っているので。いやもっと単純に、ホラー系ばっか読んでて笑いに飢えてたところにハマっただけかもしれませんけども。


ダイヤモンドの功罪」(2巻) 平井大橋

スポーツを楽しみたかっただけの天才少年が、その才能のせいで自分ごと全てを不幸にしていく物語です。No. 145以来の登場です。

地獄すぎる。1巻の地獄をセリフ1つで更新できるのも、そのセリフがこれまでの流れを見ていると出てもおかしくはない本心からの言葉だとわかるのも、後々その犯した罪の大きさに気づいてしまうのも、どれもわざとらしくなくてだからこそ辛いです。なんだよ今週100カノ以外全部ホラーじゃねえか。

いやそれにしても、「トラウマ」と「良かれと思って」があれば、ヤバいセリフでも展開上言わされてる感が少ないというのは勉強になりました。こんなん使えるシーン、一度も来ないでほしいですが。


「ダークギャザリング」と「コワい話は≠くだけで。」のおかげで、「安全だと思っていた消費者の世界がメタ的な手法により予想外の方法で脅されたとき、人はホラーを感じる」という仮説ができたのが良かったですね。この仮説により、「無意識に抱いていた誤った推論 (ホラーの場合は自分が安全だという思い込み) が破られたときの快感」という点で、ホラーとユーモアの近似性が導けたのも重要です。個人的にホラーはあまり好きではなかったのですが、それが快楽をもたらす仕組みがわかった (気がする) おかげで、少しホラーと仲良くなれて好みが広がった気がします。


一般書籍

必要時間10分程度のWeb記事と思っていたら、和訳版が新書として発売されるレベルのクソ長記事 (というか電子書籍の無料公開版) でした。チックショー。


Web記事

ボードゲームだってダウンタイムの原因になる(Games Cause Downtime Too)

ダウンタイムを生じさせやすいゲームの傾向について書かれた記事の和訳版です。

後半の「ダウンタイムを減少させる、又は防止するゲームの構造」に登場するものの中で、獲得したものの使い道をラウンド終了時まで好きなだけ考えられるルールによってダウンタイムを存在させなくする方法は知らなかったので、勉強になりました。他の方法も、知ってはいましたがまとまっていることが重要なものなので、どこかのタイミングで見返すかもしれません。


開発者に訊きました : ピクミン4|任天堂

ピクミン4発売をうけて行われた、全3回の開発陣インタビューです。

Chapter 1の、誰かに決められたゴール (連れていくピクミン数) ではなく直観的に必要なこと (目標物を運ぶために必要なピクミン数)  を目標にするのがよいという部分と、各要素をゲームフロー図にまとめてそれに載っていないことは切り捨てるという部分が特に印象に残りました。といいつつピクミン4買ってませんし、なんならピクミンシリーズ自体やったことないんですけど。


ごちうさにシャロは必要か?/ストーリーテリングとキャラクターシステム

テンポのいいストーリーを作るためのノウハウ「遅く入って早く出ろ」と、魅力的なキャラ設定のための「キャラクター・システム」とを紹介した記事です。後者をこのツイートを見て知り、元のブログを引っ張ってきました。

こうしたテンプレ探しはまさに本連載の目的であり、非常に興味深く読みました。「キャラクター・システム」は敵がいるバトルものよりも身内で話を回すタイプの作品に適しているのかなとも思いましたが、これについてはもうちょっと練ってみたいと思います。

あとは、こういうテンプレ化をしてもらえたことで、これにゲームシステムを当てはめられないか考えられるようになったのもありがたいですね。もしかすると、私の目指す「ストーリーを感じるボードゲーム」の達成に使えるかもしれませんので。


弁護士芸人が名作ゲーム『逆転裁判〜蘇る逆転〜』を実況プレイ」(#1ー7)

弁護士兼ピン芸人のこたけ正義感さんによる、逆転裁判 (初代) の実況動画です。

むちゃくちゃ面白くて、1日で投稿されている分を全部見てしまいました。ツッコむところはツッコミつつ、ゲーム本編は面白いものとしてリスペクトしてくださっているのがとてもいいなと感じました。好きな作品が褒められているのを見るのは気分が良いですし、それがけなされないという安心の下で本職ならではの追加情報とツッコミがもらえるのがとても気持ちいい実況です。2のラスボスに対する反応が見たいので、とりあえずそこまでやってほしいですね。


いきつけの書店のセールのおかげで、大量のインプットができた週でした。ちなみにこれでも積読は10冊以上増えています。助けてくれ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?