符亀の「喰べたもの」 20201220~20201226

今週インプットしたものをまとめるnote、第十四回です。
(注、今回はややネタバレ色が強めです。リンク先の試し読み以降の内容にも触れていきます。)


漫画

アンデッドアンラック」(1~4巻) 戸塚慶文

次にくるマンガ大賞2020コミックス部門第1位。簡単に言うと「アン〇〇」縛りの能力バトルです。いつもの書店さんに2巻しかなかったり注文しても出版社品切れだったりしましたが、やっと読めました。

いや無茶苦茶面白かったですね。「この世の理を否定する否定者」という反体制的な能力設定がワクワクしますし、そのカウンターとして理そのものが敵になるのも風呂敷の広げ方としてぶっ飛んでいるのに理に適っているのも素晴らしいです。クエストの設定もゲーム的でなじみやすく、風呂敷を広げきってラスボスの規格外さを知った後でも目の前の(それに比べたら格落ちする)敵を倒さなければならない必然性が生まれてダレません。なので敵自体の格をハイパーインフレさせる必要がなくなり、風呂敷は広げまくっているのに地に足がついた展開ができるのがいいです。本当に設定が上手いですね。

ジャンプ初連載ということで1話目はコマ割りやセリフ回しに粗があるのも事実ではありますが、2巻にはもう素人がぱっと見でわかるのは消えてるのもすごいですね。ジャンプ編集部の教育プログラムどうなってんすか。

主人公が局部露出しまくる(海苔修正済み)以外はわかりやすく王道な面白さなので、是非まだ読んでいない方は読んでみてください。出版社品切れじゃなければ。


僕はお肉じゃない」(1巻) 伊藤一角

トラウマから女性恐怖症になり、自分を求める女性が肉食獣に見えてしまう主人公。そんな彼が婚活アプリの広告制作チームに配属され、さらに他人の気持ちを知るために恋をするように言われてしまう。トラウマを克服し、恋をすることはできるのか。というのが出版社ページ以外の試し読みサイトで読める部分。

そして、実はこの作品は自分を襲う超肉食系女子を本当に肉食獣にみなし、その動物の習性を利用してその毒牙から貞操を守るコメディーだと発覚するのがその後の部分(リンク先の出版社ページではここまで読めます)。そんな展開読めるかバカ。他のページ3社分で試し読みして面白いかのか半信半疑で買った私に謝ってくれ。このリンク先探す瞬間まで後半の展開は買った人向けの秘密なのかと思ってましたわもう。

ですが、面白いです。「ワニは地上では遅い!逃げ切れる!→しまったワニも短距離なら速く走れるんだった!」じゃねえよお前を襲ってるのはホモ・サピエンスだ。

R17.5ぐらいの描写は普通に出てくるので人は選びますが、大人の下ネタギャグが好きな人なら声出して笑う作品だと思います。


ダンピアのおいしい冒険」(2巻) トマトスープ

17世紀の実在の航海者ウィリアム・ダンピアの著書「最新世界周航記」を基に、彼の航海と博物的関心を食を中心に再構成した漫画です。ちなみに今年のWEB漫画総選挙で第4位だったそうです。(当連載第十回より引用)

作品自体の分析は、以前やったので割愛します。今回取り上げた理由はこの巻の構成で、今巻はその半分(8話中4話)が回想の過去エピソードなんですよね。てか多分次の巻も3話以上は回想やってると思います。そんなに長々と回想をやりながら、早く本筋に戻ってほしいとは感じずに純粋に面白いんですよこの巻。長い回想って、打ち切り作品あるあるとして語られるぐらいのタブーなんですけどね本来。

その理由ですが、この作品は筋書きがどうでもいいというか、主人公が目的をとげられるのかに読者が興味ないからかと思います。なんせ主人公が航海から生還したことも航海記を出版したことも1話冒頭で知ってますからね。読者が読みたいのはその船旅の結末ではなく、その過程でありキャラ達の生きざまです。そういう意味では、主人公のバックボーンがわかる過去編こそがむしろ読者の読みたいものであり、だから何話も回想やってても面白く読める。読者の興味とマッチしていればタブーとされている手法も有効だと知れた点で、視野が広がり勉強になりました。


無二の証明」 すぅ

「見たままにしか描けない美大生と見えないものが見える女の子の話」(作者さんのキャプションより引用)

Twitter漫画は1投稿目の4枚でどれだけつかめるかが重要だと思っていますが、これはそこが特に上手いですね。1枚目でキャラの能力とそれへの自己評価を描き、2枚目で課題を読者と共有させながら1枚目で落ちた好感度を戻す。3枚目で引きのコマを入れてから、4枚目は大ゴマでもう1キャラを登場させて話の筋を見せる。リプライに繋がっている続きも、枚数を調整しながら次への引きになるコマが最後になるようにしている。2/10の4枚目や5/10の3枚目では文字密度を調整し、いいサムネイルになるような計算までしていると思われます。

話も面白いですしさっと読めるので、どうぞご覧ください。Twitterに最適化されてるので本にならなそう&なっても面白さは落ちそうなそうなのが残念ですが。


函・電網・乙女」 いとう階

なんやこれ。


今回はやはりアンデラが読めたのが大きかったですね。あれは本当にブームになる前に読めてよかったです。やっぱジャンプってすげえっすわ。


一般書籍

読めませんでした。なのに追加で2万円ぐらい買いました。年末年始はがんばります。


Web記事

【ひろゆき × 小沼竜太 対談】”童貞”力がコンテンツの伸びしろの鍵を握る!? ネット時代のコンテンツの売り方とは?
『FGO』奈須きのこと『チェンクロ』松永純が語る、スマホならではの物語の見せ方とは

電ファミニコゲーマーが21日に出したFGOなどのマーケティング戦略に携わる小沼氏の対談記事が上、22日に出したFGOとチェンクロのトップの対談記事が下です。ちなみに上の記事でFGOに触れているのは冒頭だけです。

両方とも面白いですし勉強になる良記事です。下の記事でガチャを縁の生成器として論じているのは痺れました。上の記事も、自分で自分の作品を売り込まないといけない個人クリエイターとしては読むべき内容だと思います。

この2つですが、単に同じ媒体が続けて出したからまとめたというわけではありません。たぶんたまたまなんですが、両方とも「ソーシャルゲームのIP化」という同じテーマについて触れられているのがその理由です。そして、上の記事では「難しい」で終わっているのに対し下では「難しいけどそれを受けた解があるはず」となっているのが印象深いです。これはそれぞれの立ち位置によるところが大きいかとは思いますが、一つの議題、それもコロナのような時事問題ではないものが別の対談で触れられているのは興味深いと思います。

Vol.8 なぜ田舎の水族館に人が集まるのか?高知県・むろと廃校水族館に行ってみた・前編
Vol.8 なぜ田舎の水族館に人が集まるのか?高知県・むろと廃校水族館に行ってみた・後編

高知県の廃校を水族館にしたむろと廃校水族館の体験レポートが前編、仕掛け人さんへのインタビューが後編です。

この後半がとにかく面白く、どうやってクリエイティブな仕事を実現させるかの方法が大変勉強になります。いろんな宿やお店で打ち合わせして領収書を切ることで余所者だと批判されにくくしたエピソードとか本当にクレバーですね。どっかで使います。


【練習内容公開】イラストを100日練習しました

すげえ。

筆者さんは修士課程の学生さんとのことで、おかげで初学者がどうやって学んでいったのかの言語化が高水準でなされており面白いです。やっぱ正しい練習をひたすらやるのって有効なんですね。


Amazonで『鬼滅の刃』のコミックを買ってしまったのに、どうしても読み始める気になれない。

patoさんの文だなあ。

私はpatoさんのファンで2019年に書いた記事一覧とかも目を通していた(今見たら消えてた)のですが、「ストロングゼロの呼吸」でpatoさんだと気づけなかったのは悔しいですね。なんとか「ブホーーーーー!」で気づけましたが。

気づけば完全に日記というか自分語りみたいになってますが、正直この文の内容には触れようがないと思うのでこれで許してください。Twitterで見た「文章構成は鬼滅」という分析は笑いました。


僕のしょうもない人生を紹介します

なんやこれ。



この年末年始は帰省しないことにしましたので、たぶん来週はいろいろ読めると思います。まあ漫画はあまり仕入れられなかったので一般書籍中心になるかもしれませんし、というかそろそろ数冊崩さないとやばいのですが。

そんなわけで皆様、今年もご支援ありがとうございました。

よいお年をお迎えください。

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