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【DAY 3】タイトルが5語以上の映画 「パーティで女の子に話しかけるには」

DAY 3
a film that has more than five words.
タイトルが5語以上の映画

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「パーティで女の子に話しかけるには」(2017)
ジョン・キャメロン・ミッチェル監督
エル・ファニング、アレックス・シャープ、ニコール・キッドマン、ブルース・ウィルソン

パンク大好き高校生のエン(アレックス・シャープ)はある日、友人とライブの打上げに行こうとして道に迷い、不思議な音楽が漏れ聞こえてくる館に入ってしまった。そこでは、ラバースーツを着た人々が奇妙な言動でパーティをしていた。「おかしなアメリカ人の旅行者たちなんだろうな」くらいに思っていると、突然部屋を飛び出してきた少女・ザン(エル・ファニング)に出会う。華奢で透き通るような真っ白の肌、形よくツンと尖った小さな鼻と、気取らずに大爆笑する大きな口。エンとザンは急速に恋に落ちる。しかし、彼女たちは遠い星から来た異星人だったのだ。

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原題が「How to Tail to Girls at Parties」で7ワードだ。
監督のジョン・キャメロン・ミッチェルは、男でも女でもあるロックスターの話「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」(2001)で監督と主演を努めた。この作品は日本でも三上博史森山未來らが主演の舞台が上演されていて有名になった。
その後も、実際のセックスシーン満載の「ショート・バス」(2006)や、久々にニコール・キッドマンがアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた「ラビット・ホール」(2010)など、多様な映画を撮っている。

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パーティで女の子に話しかけるには」は、「ボーイ・ミーツ・ガール」と称するジャンルに分けられる青春恋愛映画だと勘違いされそうなタイトルや予告編だ。しかし、そんな甘酸っぱいものではないので、注意していただきたい。

とにかくパンクだ。70年代のロンドンが舞台。セックス・ピストルズダムドクラッシュなどのバンドが一度に台頭した、まさにその時代の空気感を再現している。鋲を打った革ジャンに身を包んだやんちゃなパンクロッカーたちが、画面の中をいきいきと暴れ回る。特に、ザンがボーカルで飛び入り参加する演奏シーンは、アドレナリン全開でずっと観ていたい。モッシュのごときパンクVSエイリアンの大乱闘シーンも楽しい。

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けれど、青春+音楽と言われると、「まあでも、なんとなくこんな感じなんだろうな」と、まだ想像できてしまいそうだ、「シング・ストリート 未来へのうた」(2016)みたいなことなんでしょ、と。しかし、実態は、そのずっと斜め上を行っている。だって、突然異星人たちが徐々に四肢が生えて分裂したり、あごを外して他人を頭からかぶりついたりするシーンが出てくる。油断してると唖然としてしまうこと間違いなし。

黄色の「第4コロニー」に属するザンは、48時間後には食べられてしまう。コロニーの指導者PT(ペアレント・ティーチャー)は、彼らの母星における人口増加によりエネルギーの枯渇を防ぐために、子供たちを食する慣習があるのだ。でも、ザンは「それは固定観念にとらわれた古い考え方よ」と反発をしている。これが体制への反抗だ。パンクの精神は地球外にも宿る。

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映画の中にアバンギャルドな映像の展開が多出すると、「カルト」の引き出しにいれられてしまいがちだけど、この映画は、デヴィッド・リンチの「イレイザーヘッド」(1977)とかルカ・グァダニーノの「サスペリア」(2018)みたいに、「そっち」に行き切らず、きちんとエンターティメントにとどまっている。
どうしてとどまったのか。それは、本作では、異星人が奇抜なことをするシーンには、必ずそれに対してリアクションをとる人間を配置しているからだ。

これって、日本の笑いに近いと思う。漫才やコント、ギャグ漫画などでも、必ずツッコミがいて、「破綻」に対する「注意」や「説明」をしてくれる。落語や講談など、一人で複数を演じる場合も、必ず語り手がいる。でも、海外の笑いはそうじゃなくて、舞台上には変な人と気まずい空間のみあり、それに反応するのはあくまでも観客なのだ。

映画が、観念的な表現に寄りすぎて、意味分かんなくなっちゃうのも同じことだと思う。自覚的に客観視して、観る人へ気を使った余地を残すのがエンタメ、そうではないのがアートだ。

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そんな、いろいろ混沌としてしまう映画だが、とにかく、エル・ファニングがかわいいからなんでもよし、という結論でいいような気がする。

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