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認知科学の知見が向かう先

あけましておめでとうございます。

2021年は、AI戦略に関する書籍『ダブルハーベスト』を4月に出版することができた年でした。あわせて、リーダーシップに関する書籍『チームが自然に生まれ変わる』を11月に出版しました。この本は、コーチングのベースとなっている認知科学的な考え方を基礎として、どのようにリーダーシップを発揮するのかを書いた本になります。

さて、この認知科学文脈における僕の2022年のキーワードはEmbedding。

この記事では、それがどういうことなのか、という話をしたいと思います。

イノベーションサイクル

認知科学の話は一旦あとにするとして、
ここでは、
「どのようにして物事が進化するか」について簡単に書きます。

その典型パターンの1つに

Unbundling → Rebundling

というものがあります。

Unbundling (アンバンドリング)とは、切り離しのことで、
Rebunding (リバンドリング)とは、再度くっつけること。

PCの世界で言えば、

もともと大きなまとまりとして存在していたコンピュータが
CPUやメモリ、その上にのるOSなど、
一旦いろいろと部品分解されることで進化が加速しました。

それが再度結合されて進化し、iPhoneにたどりつきます。
これがまさにRebundling
結合そのものが価値に変わっていくのです。

DXの本質もまた、Rebundlingです。

数多くのSaaS、API EconomyというのはまさにUnbundling。
様々な「細かい作業」が切り離されるという流れでした。

そしてこれから本格化していくDXというのは、これをRebundlingして、
End to End で顧客に向き合う商品設計に向かっていく流れになります。

要素が埋め込まれる瞬間

このUnbundling, Rebundlingというのは、
なにかが劇的に変化した瞬間に急激に起きます。

コンピュータが個人用になったときにはUnbundlingが進み、
携帯電話がスマホになったときにRebundlingが進む。

そしてコンピュータが個人用になったときの埋め込みに成功したIntelは、
"Intel Inside"というブランドで、
まさに埋め込まれたイノベーションとなることに成功しました。

このように人々の行動様式が劇的に変化したとき、
価値の再定義が始まり、その際に分解と再構築のサイクルがおきます。ここに「埋め込み」のチャンスがあるのです。

では今おきている、最大の変化の一つは何か。

それが、コロナをきっかけに急激に加速したリモートワーク化です。

これはあらゆるコミュニケーションを変化させます。
ここが、認知科学的思考のEmbedding(埋め込み)のチャンスにあたります。

様々なコミュニケーションの分解と再結合の中で

ということで僕の2022年の野望は、

様々なコミュニケーションに対して、
認知科学的思考方法を埋め込んでいくというものです。

認知科学というのは、「ヒトの認知の仕組み」を知る学問のことです。
実際、認知科学は、様々なところで活かされます。

その鍵となる最大のチャンスが、認知科学の持つ非直感性。

多くの訓練を積まない限り、どれだけ頭で理解したところで、
精神論、つまりやる気・コミットメント・モチベーションなどの
仮説構成概念に振り回された捉え方をしてしまい、
「どうすればよいか」に目が行ってしまう人生になる。
認知論、つまり「どのようにとらえればよいか」ということに
目がいかないのが現状です。

誰がどんだけ本に書いたところで、その「意味」をさとられない
まるで暗号のような考え方なのですが、
一度理解してしまえば、
世の中の仕組みがとてもシンプルに見えてくる
魔法のような思考方法です。

元々は「コーチング」の文脈で学んだものでしたが、

『チームが自然に生まれ変わる』では、
リーダーシップへの適用を基軸にした書籍となりました。

これは経営(パーパス)のレベルでも活かせますし、
マネジメントやセールス、マーケティングでも十分に使えます。

更には、AIによるPersonalizationの基盤にも十分になりえますし、
Wellbeing / Healthcare の業界、
Web3で本格的な議論が始まった自律分散型組織やコミュニティ、
はたまたUI/UXに関してですら、
認知科学的思考の応用事例は十分に大きいものだと考えています。

2021年、認知科学的思考を体験するためのワークショップを開発し
かなり少人数に絞ってそれを体験していただきました。

その効果は自分の想像を超えるほど大きく再現性のあるものでして、
この理論を強化していくことには大きな意義があると感じています。

一方で、その理解の難しさも、肌身で感じる事ができました。
おそらく認知科学の知見自体が民主化していくことはないでしょう。
難しすぎるのです。

ただそれで良いように感じます。
そもそもコーチングというのは、クライアントは認知科学を理解せずとも、
認知科学的思考に基づいて人生のゴールを設定することができます。

つまりサービスに埋め込まれていれば、
ユーザーは理解していなくても大丈夫だということ。

であれば、各Specialist (分野に精通する人)が、
自然に認知科学を埋め込んでいくことで、
ほとんどの人が余り意識していなくても認知科学的思考の
メリットを享受できるようになればよい。

だから、普及ではなく、Embedding (埋め込み) がキーワードなのです。

2022年は、より幅広く、このメソッドを多分野適用していくことで、
インパクトを出していきたいと思っています。 

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