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バイロイト音楽祭とTannhäuser タンホイザー

ある朝、嬉しそうに、『あぁああぁ!当たった!』、とあなたのツレが叫んだとすればきっとなんかすごくいいことがあったのだと思うかもしれませんが、必ずしもそのいいことがあなたにとってもいいこととは限らないというお話です。

当たったのは宝くじに当たったわけではありません。ワグネリアンのための(リヒャルト・ワーグナーという作曲家を愛する人のためのドイツのバイロイトで開催される1年に1回の夏、音楽の祭典)バイロイト詣のチケットを購入する機会、が当たったとそういうことでした。数ある音楽祭の中でもチケットがかなり取りにくい部類、いや、噂によると一番取りにくいとも言われており、申し込んで平均10年待ちという。夫が申し込み始めてから5年目のことでした。

「一生に一度は行きたいXXX」というお題があったとしたら、このXXXには「バイロイト音楽祭」と迷いもせず答えるそういう夫は、13~14歳の時に初めてワーグナーを聴いたときに、すぐに「Understand」したそうです。普通は背景を読み、何回か聞くうちにパターンやテーマを知り、聴きながらわかるように、そして好きになっていくものですが、ワーグナーだけは別物だったという話。

その反面、私は . . . まるで知識なし。全てが異国の音楽です。ラインを送った知人(クラシック音楽に詳しい)が

クラシック音楽通の友達から来たライン

と言っていたので

「ついていかれない」→寝る

というパターン
(ちなみに私はスターウオーズを見ながら映画館で寝た人です、どうしてワーグナー体験がスターウオーズ的なのか、これは異世界という意味?そうならほんとに激しく同意するばかり)

ワーグナー自らが創設した音楽祭であり、ワーグナー自らがデザインした劇場で、上演されるのはワーグナーのオペラ作品に限られるのですが、約1週間、毎日、長い>3〜4時間のオペラを聴くことになります。その一つがタンホイザー。

ほら、と言って、夫が1998年に東京で上演されたタンホイザーの25年前のプログラムを出してきた。25年前って、物持ちの良さは本当にすごい(荷物が減らないはずですよね)。

タンホイザーは簡単に言えば、2人の女性の愛の間で揺れる男性=騎士。愛と官能の女神ヴィーナスか、かつての恋人エリーザベト(人間)か。伏線に中世における、キリスト教 vs それ以外か、の対決を示唆しています。
ヴィーナスはギリシャ神話でアフロディーテで、中世キリスト教社会におけるヴィーナスは異教の神(アニミズム、精霊信仰)であり、またキリスト教では享楽的な官能に浸ることは忌むべきこととされていたというテーマが隠れているわけです。

広末さんが2人の異なる男性の間で揺れたように、やっぱり愛というのは本当に昔々から永遠の謎に包まれている。世の中は結婚した男女が他の人と恋愛することを忌み嫌いますが、私は、あって然りと思っています(すみません、個人的見解です)。

タンホイザーは官能の女神ヴィーナスの地=ヴェーヌスベルクでの幸せすぎる日々にちょっと飽きてしまい、友人のヴォルフラムに再会しかつての恋人のエリーザベトが彼を待っていると聞かされ、エリーザベトの元に行くことを決意してヴェーヌスベルクを去ります。

しかしタンホイザーが下界で天上の愛ヴィーナスを讃える歌を歌う(反逆者)ことで、罪に問われます。清らかなエリーザベトはそれでも自分の命と引き換えにタンホイザーの罪が許されるように祈り [エリーザベトの祈り]、死んでしまいます。エリーザベトは最初から最後まで清らかな本物の愛(現生の愛)を貫いてみせるのです。ローマ教皇から許されない半ば盲目となったタンホイザーはヴェーヌスベルクに帰る、と言いつつ、最後にエリーザベトの名前を呼びつつ、彼女の亡骸を収めた棺の前に倒れこみ息絶えます。そして、タンホイザーも許される=愛による救済でフィナーレ。(懺悔するものを許すというキリスト教の神の言葉通りということを暗示している)。

さて、あらすじを頭に入れたら次は三部、歌詞を読みながら、音楽を聴きます。途中でちょっと寝ましたが(笑)、ワーグナーが大好きだったという金管楽器(ホルンとかラッパ系)がゆっくりとしたリズムに乗って始まるOvertureと最後のコーラスがいい感じ。

特にこの人の感想を引用しておきましょう

最後のコーラスで泣かないやつは人間じゃないぜ
“Tannhauser” Bayreuth 1989 Giuseppe Sinopoli Act 3


ということで時々自分用にオペラの話が出てくることとなりますが、どうぞお付き合いください。また、バイロイト音楽祭は8月の終わり、飛行機のチケットも宿も取ったので、その時は更新します。今年は色々忙しいな〜。


おお、タンホイザーのnoteを発見


いつもありがとうございます。このnoteまだまだ続けていきますので、どうぞよろしくお願いします。