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飛ぶ鳥跡を濁さず

一年という月日は、鳥のように思える。
一日一日がどんな日だったかは、鳥の1枚1枚の翼の色鮮やかさが証明し、全体を通してどんな年だったかは、その一つ一つで構成された鳥がどんな体形をしているのかで分かる。それはもちろん人それぞれ違う。

 私の場合、基本的には小鳥で、采色のない灰色なのだが、その中に特別綺麗な色の羽根がある。ピンク、オレンジ…人の優しさに触れたり、感動したり、彼らは温かな色に色付いていく。今年は特にまさに私の前から飛び立っていった人達によって、羽根は色を変えた。

 一人目は、就職する前にいた就労支援事業所で担当してくれた支援員さん。出会った頃、彼女はサバサバとした印象で、正直苦手なタイプの人だなと思った。けれど、そんな偏見もすぐになくなった。
 週に一度面談をする機会があって、彼女はヒアリングシートに熱心に聞いたこと、それに対するコメントを書き付けてくれたり、超がつくほど口下手な私の答えが出るまで根気強く待っていてくれたり、私に対して真っ直ぐに向き合ってくれた。時には良いところがあったら素直に褒めてくれたりもしたし、例えば新しい靴を履いていったら気づいてくれるような、ちょっとした変化にも敏感な人だった。彼女はちゃんと私を見てくれていて、どう思ったかをしっかりと目に見える、感じることができる形で伝えてくれた。
 彼女が別の事業所に転勤にしてしまった後、私は改めてその優しさに気づいた。そして、彼女と過ごした日々は私の胸に軽やかに滑り込み、思い出として温かに色付いた。

 二人目は、今年始めたTwitterで知り合った方。彼女は青春真っ盛りの高校生で、普通に生活していれば私みたいな者が決して出会うことはない人。けれど、誰とでもつながれる今だから出逢えた。彼女は純粋でとても素直な感性を持っている。綴る文章は、とろけるようなチョコレート、キャンディ、エクレア…甘いお菓子のつまった小箱のよう。楽しさが溢れるキラキラした世界。私には書けないような、まだ何にも染まっていないからこそ書くことができる恋愛の物語を綴っていた。
 そんな可愛らしい彼女と個人的に話す機会をもらい、好きな漫画の話、創作についての話、いろいろなことを語り合った。その言葉のひとつひとつは、私の心にほんわりと温かさをくれたし、私も彼女に応えたいなと思った。
 まだつながりは途絶えていないのだけれども、もうアカウントは消されてしまって、あのキラキラした魔法の世界は見ることができない。けれど、まだ甘い余韻は私の中に残っている。しゅんわりと、胸に溶け込んで。

 彼女達によって染め上げられた鮮やかな色の羽根は、私がいつか大きく羽ばたくための支えとなり、これからも記憶に残り続ける。

今年はもうじきゆっくりと飛び立っていく。広げられた翼は彼女達との思い出を、陽の光に見守られながら明るく瞬かせるだろう。
そして、来年がしっぽを振ってやってくるのを楽しみに待とう。

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