趣味とは言えない

四月。別れの季節であると同時に、出会いの季節でもあるといいます。

あなたはまず、初対面の人にどんなことを訊きますか?名前や所属は当たり前として、次に訊くのはきっとこう。

「趣味はなんですか?」

相手の趣味嗜好を知って、少しでも共通の話題を探そうとするためにこの質問を口にすることでしょう。

だけど私は、この質問をされると必ずと言っていいほどすぐに口が開けません。

別に趣味がないってわけじゃないんですよ。むしろ多趣味な方ではあると思います。本を読むのも好きだし、マンガを読むのも好きだし、音楽を聴くのも好きだし、イラストを模写するのも好きです。ちょっと変わっているのでいうと、野鳥観察とか(通勤中に道すがらいる野鳥を愛でるという野鳥観察と言えるかわからない程度のものですが)。

どれを言おうか迷うっていうのもあるんですけど、一番の理由は小説書くことを趣味って言っていいのかなってことなんです。

物語を考えて、小説を書くことはもちろん好きです。でも、私は本気で作家になりたくて、それを職業にしたいと思っている訳だから、それを趣味って言うのはどうなんだろう?と思ってしまうんです。

なにより、もしそれを趣味として定義してしまったら、自分が許せない気がするんです。

自分が小説を書いていることを知ってほしい気持ちはあるけど、娯楽として書いているというふうに思われるのも違う気がして、だって、私が書きたいのはただ楽しいだけじゃなくて、誰かの心に響いて、それをお守りにして生きていけるようなものだから。

この熱量を趣味という一言で収束してしまう、夢をあやふやにしてしまうのは違う気がして、いつも言えないままでいます。




──同じ作家を目指しているあなたなら「趣味はなんですか?」と訊かれて、「小説を書くことです」と答えられますか?

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