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ものづくりの原点を探して(アニメ『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』)

2023年4月ごろ、テレビ番組で「ChatGPT」が大きく報道されるようになった。『自分たちでAIを自由に動かすことの出来る』そのアプリはIT業界に限らず社会全体に大きな影響を与え始めている。

私自身は今のところ土木の世界で生きていることになるが、IT業界はものづくりを初めとした他の業界に全く追いつきそうもないスピードで成長しているなぁと感じる。『科学技術の発展によって世界はどこに向かうのか』期待と不安が交じる。

今回は
『ものづくりの原点を探す。』
をテーマにアニメ『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』
をご紹介したい。
特に自分が学んでいる土木技術をベースに様々な角度で語ってみたいと思う。

0.アニメ『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』とは

★女子高生×工具=ものづくり
DIY"初心者"女子の日常物語、活動スタート!

これは、家具や友情や、ひいては人生までも、
考え、工夫し、苦労し、失敗し、それでも諦めずに自分の手で完成させて、
未来を切り開いていこうとする少女たちの、その最初の一歩を描く物語である―――

アニメ『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』公式HPより
<https://diy-anime.com/>

アニメ『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』は2022年秋に放送されたオリジナルアニメである。(漫画・ゲームなどの原作は無い。)

DIYに用いる工具等の作画クオリティだけではなく、各キャラクターの魅力が非常に高い作品だなぁと感じた。

本当は各キャラクターの話も色々したいのだが、そのあたりの考察は最低限にするとして今回は技術の話をメインに話したい。

(ストーリー等のネタバレは最低限にしています。)

1.ちょっとだけ先の未来を描く

まずこの作品を見てとても興味深いなぁと感じたのは少し変わった「世界観」である。

具体的には2030~2040年あたりの日本の姿を想像して描いている。
そこにはタイムマシン宇宙エレベータのようなものは無い。
しかし、2023年現在、社会実験中のもの近年製品化されたものが社会に広まりつつある様子がアニメで描かれている。

例えば、交通に着目すると
無人で動くバスドローンで配送される宅配便円形をしたスクータのような乗り物などがアニメの中で描かれている。
驚くべきことにこれらはすでに実社会に存在しているものである。
これらの技術をどのように社会の中に組み込むかという課題は存在するものの10~20年後にアニメ『Do It Yourself!!』同様の世界がやってきても全く不思議ではない。

また、このアニメではアメリカからの天才留学生「ジョブ子」というキャラクターが登場するが、彼女は土木業界で今注目されている技術を巧みに利用していた。

例えば、ツリーハウスを作る際、彼女はスマホで幹の太さを計測したり(LiDARのようなもの)、ツリーハウスの設計に関する情報を予め入れ込んだスマホを使って、杭を打つ位置を特定したり(BIM/CIMのようなもの)していた。

土木業界ではこれらの技術を使って生産性向上を目指す試みが本格的に進められている。

2.アニメで提示された『ものづくり』に対するイメージ

ここからは少しアニメの内容にも踏み込んでいる。

アニメでは一般的な女子校に進み、DIY部に所属して活動する主人公「せるふ」と科学の最先端を学ぶことの出来る高校に進んだ幼なじみの「ぷりん」を中心に物語が展開されている。

序盤では「ぷりん」がDIYに対しあまり良くないイメージを抱いていた。

せるふには「カビの生えた、時代遅れのDIY部」がお似合いよね。
私はカビとは正反対。最先端の勉強をしているの!
この手で第4次産業革命を推し進めてシンギュラリティを起こしてみせる!
未来はAIによるフルオートメーション化。人間は手作業どころか何もしなくて良くなるのよ

アニメ『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』2話より

もしかしたらこのセリフが今、世間の人々がものづくりに対してのイメージの一つなのかなと感じてしまった。そして同時にこのセリフに対する回答を見つけるのがこのアニメのテーマの一つであるとも考えた。

皆さんならこのセリフを言われたとき、何と回答するだろうか。

実はこれに対する回答に値するようなセリフはDIY部の顧問の先生から言及されている。

最先端の技術で高い性能の製品を大量に生産することが出来るようになって、人類は安価で豊かさを享受できるようになりました。これからも人類は様々な困難を超え、世界はますます便利で豊かになるでしょう。
ですけど、自分の手で、みんなで力を合わせて何かを作るというのもいいものですよね

アニメ『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』10話より

これだけで納得出来る人もいるかもしれないが「自分の手で、みんなで力を合わせて何かを作る」という言葉が意味深なのでもう少しこのあたりを深掘りしてみたい。


2-1.「ものづくり」に必要な能力とは

DIY部には様々な能力を持った人がいる。

詳細な設計図を書くのが得意な人、力仕事が得意な人、IT技術を駆使するのが得意な人、細やかな作業が得意な人、人に的確なアドバイス・指導を行うのが得意な人…

部員の中で主人公「せるふ」はかなり極端な能力を持っている。工具の使い方がとても下手で毎日けがをしている。そのため幼少期は工具を使うのを親から禁止され、クレヨンを使って色々な絵を描いていたらしい。

そんな自分がDIY部で役に立っていないと感じ、自分でDIY出来ることを他の部員に見せようとする場面があった。しかし、他部員は彼女のことを役立たずであると一切思っていなかった。確かにDIYするのが得意ではないことは事実だが、空想を広げて新たなアイデアを創り出すことが出来る点で認められていた。また、のほほんとのんびりとした性格のお陰で、初対面の人と怖気づくことなくすぐ仲良くなることが出来ていた

これは土木業界にもそのまま当てはまる。
土木=力仕事のようなイメージがあるが、実際には…

計画を立てる人、それを詳細な設計に落とし込む人、設計を元に実際に造る人などなど様々な立場の方がいる。そしてどの人も土木構造物を造るために欠かせない。

ものづくりと言ってもただよりよい製品を造るだけではなさそうだ。


2-2.ものを作る過程で、様々な人と出会う。

ものを作る際は実際に使っていただく人(特定の誰かだったり、世界中の人々だったりするけど)のことを想定して製品を作るだろう。

しかし、ものづくりは製品を使ってくれるお客さんだけではなく、ものを作る過程で様々な人々との出会いがある。

アニメ『Do It Yourself!!』ではツリーハウスを作る際、地元の人々から使えなくなった本棚・タンスなどを集めて木材として再利用した。また、部員同士でお互いの能力を尊重しながら協力して製作した。

アニメでは『自分たちが作った製品を使って喜んでくれている!』ということよりも『お互いの時間を共有して製品を作った!』というところにかなり時間を割いている。

もしかしたらものづくりの楽しさの根幹は『お客さんに喜んでもらえる』ことよりも

新しいものを作る過程で様々な人と時間を共有する

ところにあるのかもしれない。


3.Do it Ourselves!!

さて改めて「ぷりん」が提示した問題(?)を改めて見てみよう。

せるふには「カビの生えた、時代遅れのDIY部」がお似合いよね。
私はカビとは正反対。最先端の勉強をしているの!
この手で第4次産業革命を推し進めてシンギュラリティを起こしてみせる!
未来はAIによるフルオートメーション化。人間は手作業どころか何もしなくて良くなるのよ

アニメ『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』2話より

これに対する私なりの回答は

確かにこれからの技術革新によってAIによって出来ることが増えてくるかもしれない。でも、新しいものを作る過程で様々な人と時間を共有する楽しさを気軽に味わえるDIYは今後も無くならない。この想いを持って新たな技術を積極的に学び、社会をより豊かにしていきたい。

なんだか私も誰かと協力して新しいことをやりたくなってきた。


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