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コロナウィルス感染者の増減傾向を「K値」が的確にとらえている理由を自分なりに考えてみた件

新型コロナウィルスの感染拡大について、北海道大学の西浦博氏の論文などを参考に「SIRモデル」をベースにエクセルシートを作って観察していたわけですが、最近、大阪大学の教授らのグループが発見された「K値」というのが話題になっているようですね。

私は note の以下の記事をたまたま拝見し、その存在を知りました。(不勉強で恐縮ですが、先生方のお名前はこの記事で初めて知りました。)

大阪大学の先生が発表されている論文だし、何かすごい複雑なモデルなのかなと思っていたのですが、拍子抜けするぐらいシンプルな計算式だったわけです。

中野教授は、累計感染者数を1週間前の累計感染者数で割った値の逆数を1から引いた値Kが、優れた指標になることに気付いた。1週間の間隔を取ったのは、曜日による検査数のばらつきが大きいことを排除するためである。一週間ごとにデータをまとめているので、日々の変動をキャンセルできる。Kを計算することで、時間に対する変化を安定的に読み取ることができる。

これを初めてみたときには、「いやぁ、さすがにこれは…」と思いましたよ、正直。たまたま「曜日によるばらつきが多いから」という理由で1週間の間隔をとって割り算しただけのグラフが、いい感じになったからと言って、あまり有効なツールにはならないのではないかと。

それにしては、現実のコロナウィルスの感染拡大動向を観察するにはすごいいい感じのグラフになってるんですよ。

使っている数値は、「累計感染者数」と「1週間前の累計感染者数」だけでなんでこんないい感じになるんだろう、と思っていたんです。でもこれって今回の新型コロナウィルスに関して言えば、この「1週間」というのがすごいフィットしているんじゃないかと。

新型コロナウィルスの感染から発症までの「潜伏期間は6日程度」と言われていて、中国の論文によると「発症の前後が一番他人に感染させやすい」そうなので、これがK値の計算においてピタッとフィットしているのではないか、と思います。

潜伏期間が3日とか、2週間とかだとかなり観察できる結果も違ってくるはずです。そうだとすると、ほかの感染症での有用性はよくわかりませんが、コロナウィルスでは手軽で最もわかりやすい指標となり得ますね。

SIRモデルの基本再生産数は、1次感染も多次感染とが同じスピードの拡散であるはずもないですし、感染感度が極めて高い母集団が少数いたり、もちろん感染症の潜伏期間なども考慮しなければならないので、正確な推定が難しいんですよね。今回はそれを海外並みの2.5を想定したので、少し大げさな感じになっちゃいましたし。

でも、このK値であれば、統計情報が正確であるならば、「おおよその潜伏期間」というパラメータだけで、感染拡大傾向、縮小傾向をグラフの傾きで瞬時にとらえられると。

なるほど。

今日から私も新型コロナウィルスに関しては「K値」肯定派です。

7月下旬 追記:K値については否定派に転じましたw

追記2: この記事を書いたときに大体わかっていたのですが、「K値」とは、SIRモデルの再生産数をいじってできる質の悪い数値に過ぎないといえると思います。まさか、終息予測に使おうとするとは・・・。


コロナでろくに仕事もできないので、暇つぶしに数理モデルで今回のコロナウィルスの動向を分析しています。