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(1)描きたいことを決める

0. 初めに

 漫画を描いてはみたいけど難しい…と思ってる人は多いと思います。そんな方のために描き始める前に考えておきたいことを二つほど紹介します。

〇完成させる基準
 「お話をつくろう」とする人にはたとえふわふわな状態であっても「描いてみたいこと」はあると思います。でも、ふわっと思っている「描きたいこと」を全部完成させるなんてとてもじゃないけどできないですよね。
まずは「自分にとって作品として完成させるかどうかを決定するハードル」は予め作っておくとよいと思います。自分の場合のハードルとして「自分にしか描けない漫画になってるか」、「出したかった雰囲気が出てるか」の二つを設けています。

 芸術家みたいに少しでも納得いかなければ壊すなんて必要はないですが、ネタを色々考えていると何を完成させたらいいかわからなくなります。全部順番に完成させていく、みたいな時間と根性があればいいんですがなかなかそうもいかないですからね。

 私の場合、一時期ちょっとプロを目指したりなんかしちゃったりしてました。どちらかというと読むほうが自信あったので(今でも編集者に向いているんじゃないかとよく言っていただけています)、「自分の作品を面白くするにはどうしたらいいか」をずっと考えてました。相当な時間をかけて、そもそも「自分の作品をネームの時点で客観的にみる」ってことがめちゃくちゃ難しいことに気づきました。少なくとも今でも私には無理です。

 SNSとかブログとかみてると「完璧主義すぎて完成させられない」とか「そもそも最初の一歩が踏み出せない」って人の方が多そうな感じがします。私の場合「漫画を描く」ことが苦痛でなく「とりあえず描いてみるか」ができたのでそれはありませんでした。でも、やはり出来上がったものは「自分も納得していない」、まさに駄作でした。そのため、まずは少なくとも「この作品だったらとりあえず仕上げて損はしないな」と思えてかつ、作り途中でも判断できる基準を作る必要があると考えました。

 私はそもそもそんな駄作を「作品」と呼ぶことにすごく抵抗がありまして。「作品」の意味は「芸術活動による製作物」なんていうじゃないですか…。評価を受けたわけでもない、私みたいなレベルの人間が趣味の手遊びでやってるものに本当にそんな高尚な呼び方をしていいのだろうかと思っていました。自信をもって「作品」と呼べるようにするためにはどうしたらいいんだろう、と結構悩んでいました。結局のところ、私の作品はあまりに独善的すぎてやはり「作品」と呼べるクオリティのものではないなと思いました。そして「完成品」を「作品」にするためには客観性が必要だと思ったんです。

 感想がないものはダメだと誰かが言っていました。感想がないってことは誰の心も揺り動かせてないってことなんだそうです。「誰の心も動かせていない」が、「感想がない」とイコールかは置いておいて、誰の心も動かせいないのがダメ、というのは一理あると思います。
 でも私の場合の解釈はちょっと違っていて、結果として誰の心も動かせなかったからダメ、なのではなく、誰の心も動かなくてもいいと思ってしまうことがダメなんだと思っています。「好きに描いてるだけだから誰も見てくれなくてもいいや」はダメなんです。言葉にできるほど具体的なテーマや伝えたいことが必要なわけじゃないけど、「誰か1人は良さに気づいてくれるはず」、「共感してくれる人のもとへ届いて欲しい」っていう「気持ち」が絶対に必要だった。その気持ちをもって制作に当たれる限りその創作物は「作品」足りえると思っています。

 その気持ちがちゃんと作品にこもられていれば、私にとってのハードルをクリアしていると言えそうでした。実際は創作活動をやっていて私みたいに「誰にも届かなくていい」と思ってやってる人はいないと思うのであくまでも私のハードルです。

 私の場合はハードルを明確な基準として使うためには「何かを発信する気持ち」をもう少し具体的にする必要があると思い「自分にしか描けない漫画になっているか」、「出したかった雰囲気が出ているか」の二つを私の漫画「作品」のハードルにしました。今ではそのくらいだったらプロットの時点でなんとか把握できるようになったので、それらがクリアできていたら制作に入る、という形をとっています。こういった具体的なハードルというのは「完璧主義すぎて完成させられない」とか「そもそも最初の一歩が踏み出せない」って人にも使えるんじゃないかと思うんだけどどうでしょう。

 「自分にしか描けない漫画になっているか」は、全編通して自分のキャラクターが喋っているかとか、自分の視点で描けているかとかを見てます。オリジナリティーがある設定とか目新しい意外な展開とかそんなとこは気にしてません。っていうかできません。
 あと私は作品の雰囲気というものを大事にしたいと常々思っていたので雰囲気も別個で確認しているって感じです。空気感って言い換えてもいいです。

 どういう形にしろ、作品制作、発表をしている人はもうハードルを持ってるはずです。それが具体的になっていないだけです。漫画じゃなくても小説とかシナリオとか何かしらの「作品」を制作して、ある程度自分で納得のいく作品ができている人は、無理にハードルを具体的にしたり新しく考える必要はないかもしれません。でも、作品制作をやったことがない人は、漫画は本当に時間がかかるので絶対に意識的にハードルを用意したほうがいいです。勿論「作品」制作が目的ではなく、単なるアイディアのアウトプットならこの限りでないですが。

 ハードルの内容自体は自分が納得できていれば本当になんでもいいです。自分の創作スタンスを守れているかを自分でチェックするための指標であればよいので。魂を削って描いたとか、しっかり世界に潜って描いたとか、趣味嗜好が十二分に発揮されたとかそういうことでもいいと思います。もっと言えば別に自分の中のものではなくてもいいと思います。例えば「1~4Pくらい描いてSNSにあげてみて反応があったら」とかでも別にいいんじゃないかと思います。あくまで「完成させるかどうかの基準」でしかないので自分が使いやすいものでいいと思います。具体的な方が効力を発揮するひと、具体的だと拘束性を持っちゃうひと、色々いると思いますので、よく自分と相談してみてください。

 一度決めたら変えられないものではないく、状況が変わったら臨機応変に変更して構わないので、「とりあえず!今は!これ!!!!」って感じで決めちゃいましょう。

〇その漫画でやりたいこと
 もう一つ、漫画を描くという行為全体ではなく、そのときそのときで決めるのは「テーマ」です。よく聞きますね。私は「やりたいこと」とか「描きたいこと」と言っています。その作品で何を描きたいのか考えます。
「テーマ」って聞くと、なんか「いいこと」じゃないといけないように感じるんですよね。それに、その作品で何を言いたかったのか、とか、作品の内容を一言でまとめたもの、とかやたらと堅苦しくなっちゃう気がするんですよ。むしろ私は「やりたいこと」は基本的に言葉にならないことだと思っています。言葉にならないから、漫画作品にして別の方法で表現するのだと思っています。そしてそこには正当性もないし、根拠もない。なので「この漫画でこれが描きたかったんだ」ってのは具体的に言葉にする必要はあんまりないと思っています。そしてもし言葉になるとしても、「やりたいこと」自体が特段「面白いもの」ではなくていいとも思ってます。言葉ではない方法でアウトプットすることによって最も面白さを発揮する、だから漫画を描くんです。
 とはいえ自分の中にあるものを漫画に昇華するのはめちゃくちゃ難しいです。逆にそこが創作の楽しみだとも思ってますが。
 
 私の場合の「やりたいこと」は「シーン」であることが多いです。そのシーンを「伝える」ために漫画を描いています。人によっては「物語」だったり「設定」だったり「キャラクター」だったり、それこそ「セリフ」だったり、もしかしたら「空気感」みたいにもっと抽象的なものだったり、「この方法で読者を驚かせたい」みたいなものかもしれません。
 お話を考えているうちに「やりたいこと」ができなくなったり、わからなくなったりしたらもちろん没にしますが、それはさっきの「自分にしか描けない漫画」や「出したかった雰囲気」とは別です。ある作品の「やりたいこと」は作品にとして完成させるかどうか決めるハードルではありません。作品と作るときに一番最初に決めて「変えないもの」です。それが「変わってしまった」ら没になるんです。

 流れとしては「やりたいこと」を作り、それに沿ってお話を考える。お話がある程度イメージできてきたら「出したかった雰囲気」がでる「自分にしか描けない漫画」になりそうかを確認する。問題なさそうであれば作品として制作を開始するというふうにしてます。「やりたいこと」は作るもので、「出したかった雰囲気」と「自分にしか描けない漫画」はある程度できた後にちゃんと入ってるか確認するものってことです。このようなやり方にしてから最終的に「やりたいかったことができていない」ということはあまりありません。完成イメージと完成品に差異があって完成したらあれ?ってことはありますが。

 なお、私が絶対にやらないようにしていることとして「やりたいこと」を引っ張り出すこと、無理やり当てはめることがあります。ちゃんと決まっていれば自分からなんらかのイメージをもって外に出てきます。これはまだはっきりとはイメージできていないがこういうことだろうと決めつけたり、頭の中にあるものを改変して変にリアルにしようとすることは絶対にしません。無理な言語化(テーマ化)も、その1つです。少なくとも私にはいいことがありませんでした。頭の中にあるものを忠実に再現することに全力を注ぎます。

 「描きたいこと」として今頭の中にあるものよりこうした方が面白いだろうというのも基本的にやりません。というか面白い、つまらない、ということをあまり考えません(作った後のひとり反省会ではやります)。少なくとも「やりたいこと」をやろうとしていて、その作品が「出したかった雰囲気」がでる「自分にしか描けない」漫画であれば、ある程度制作のモチベーションは保てます(描いてる途中でコレオモシロクナインチャウ病にかからないというわけではありません)。
 プロになれなかった人間の負け犬の遠吠えですが、「面白い漫画」はよっぽど技術のある人が描かない限り「結果論的なもの」だと思います。少なくとも私みたいなペーペーが面白い漫画描こうとして小手先の技術をいくらこねくり回してもいいことにはなりません。私の場合は「面白い漫画を描くこと」よりむしろ「自己表現」を優先した方が納得のいく作品になります。

 詳しい知識や確固たる主張があるからお話を作ろう、とされる方はそれなりにいらっしゃると思います。でも自分の知識や考えをお話に反映するというのはめちゃくちゃ難しいです。歴史に関して詳しい知識を持っていたって歴史のお話が作れるわけじゃない(面白い面白くない以前に)ですし、確固たる主張を持っていたとしてもその主張が活かせるお話を考えられるわけではありません(逆にお話自体はできていて、知識や理論立った考えが必要になったため、それを調べる(探す)、ということももちろん相当難しいですが、そちらの方がまだ簡単なくらいです)。

 したがって、「やりたいこと」をやるときに「自分の知識や主張」を物語に反映するのはあまりお勧めしません。もちろん、自分の好きに作ったキャラクターですので、「結果的に一致する」ことは多々あると思いますが。
キャラクターを介して自分の主張をすることでエッセイと創作の中間の立ち位置のお話になります。実体験が元になっていると思うので共感は得やすくなりますが、その分説教くさくなったりしやすいです。また、リアリティについては極端にリアルになるか、ただの妄想になるか二極化しやすいです。やるときは十分注意してください。なお、最初に私が自分のハードルとして作った「自分にしか描けない漫画を描く」というのは私のしたい主張をするということではもちろんありません。

 難しい言い方をしましたが、例えば「悪は悪意をもって初めて悪として成立する」というセリフを出したいというのが「やりたいこと」だとして、それが「自分が言いたいこと」だったらやめておいたほうがよくて、「そのセリフをこんなキャラクターに言わせたい」って感じだったらやっていいってことです。

 では逆に完全に客観的なキャラクターはどうでしょうか。「最初のやりたいこと」以外は自分の主観が一切入らない、論理性のみで構成されたストーリーとキャラクターです。個人的には「それでモチベーションが保てるなら」って感じです。物語を作ることを楽しめて、自分が好きな要素を入れなくても、ある程度自分が好きになるキャラクターを書けるのであればいいと思います。ただ、これは自分をキャラクターに反映させる以上に難しい作業です。

 自分をキャラクターに反映させると完成はしますが客観的に面白いものにはなりにくいです。逆に主観性が0だと完全に作業になるのでよっぽど根気がないと多分途中で飽きます。

 自分とキャラクターの距離感をつかむのは最初はとても大変です。そして、その距離感をつかむのが大変だってことに気づかないまま作品を作ってる人(私含む)もたくさんいるくらい、何がどう難しいのかわかりにくい問題です。最初はあまり自分を投影しすぎず、かといって他人事すぎず、くらいの気持ちで作品を作るのを心掛けてみてください。

1. お話の作りはじめ方

〇お話は勝手にできる
 「やりたいこと」が決まったら次はお話の作り方です。お話を作るのってやったことない人からするとめっちゃハードル高いですよね。「起承転結」って言葉は聞いたことあっても、そもそも何をどう考えてったらいいか、最初に何を考えたらいいかさっぱりわからない。「お話を考える」と難しいので、必要なことを決めればお話は「勝手にできる」ものくらいに思ってください。起承転結の起の部分は…なんて最初から考えても上手くいません。考えるのはお話ではなく、あくまで「題材」です。「描きたいこと」を「どういう題材で描くか」を考えることがイコールお話を考えることになります。
「題材」っていうのは換言すれば「要素」のことです。どういうキャラクターが出て、どういう世界観で、どういう事件が起こって…というところです。まだやりたいことを決めただけなので、内容に関してはまだなんにも決まってないと思います。

 どのくらい「要素」を決めれば「描きたいこと」が「お話」に「変身」するのかという疑問が出てくるかと思います。でもそれはむしろ逆で、「お話に変身するまで要素を考える(掘り下げたり、増やしたりしていく)」と思ってください。考えなくちゃいけない「要素」の量は自分の「描きたいこと」によって大きく変わってきます。
 題材が出そろって、お話ができそうな感じがしてきて、でも作ってる途中で止まっちゃう。そんな時は題材そのものが足りないか、掘り下げが足りないかのどちらかです。要素によって勝手に出来上がったお話を直接いじるのは原則としてやめましょう。

 起承転結もあまり意識しない方がいいと思います。これは私の場合なのですが起承転結を意識すると「お話としてまとまりすぎちゃう」ことが多いんですよ。なので、「描きたいこと」をどうやって「お話」として成立させるか、ということに注力することをお勧めします。どうしても気になる場合は「起承転結を作る」のではなく、あとから出来上がったお話に「起承転結が入っているかを確認する」方がいいかと。

 お話の作り方は千人いれば千通りの描き方があって然るべきだとは思いますが、せっかくなので私の方法を紹介していきたいと思います。
 私の場合は先ほどもお話ししましたが「描きたいシーン」から作ります。言ってしまえば「描きたいシーンを最初に一枚絵で描いてしまう」んです。そのシーンの想像を具体的にして、その前後を考えていくことでその作品の「題材」を決めていくんです。そこのシーンが絵として決まってしまえば、どういう理由でそういう状況になったのか、そこのシーンにいるのはどういう人なのか、そこはどこなのか、なんかがだいたい決まってきます。そうしたら「お話」としてどんな「要素」が必要かわかってきます。お話づくり全体としては、絵的に魅せるシーン(大体最後6ページくらいにくる)を一番最初にがちがちに作ってしまって、そのシーンがどういうシーンで、どういういいところがあるのかを「紹介」するために「物語を作っていく」って感じでしょうか。

 この時、見せたいシーンをいくらイメージしてもお話にならない(語弊)ときは絵(描きたいシーン)の考えこみ(具体性)が足りないんです。なので描きたいシーンの掘り下げを頑張ります。描きたいシーンがいまいちはっきり決まらないからと言って他のところを先に考えてもいいことはありません(真顔)。
 絵を描く人だったら、一枚である程度ストーリーのある絵、というのが描ける人は少なくないと思います。好きな絵を描いてそこに設定やらお話やらを肉付けしていけばいいんです。この人はどういう人なんだろう、この世界はどういう世界なんだろう、なんでこうなったんだろう、そういうことを深く具体的に考えていけばある程度お話はできると思います。ちなみに私は「イラストを描く」ということがそれはそれは苦手です。なぜならデザイン力とか色感とかが必要だからです。なので絵ではなくお話にします。描きたいことがシーンになってしまっていて一枚絵で表しきれない場合には先にそこだけネームを切ってしまうこともよくあります。

 何度でも言いますがここで決めた「描きたいこと」はその漫画を描き終わるまで一切ぶれさせてはいけないので、しっかりばっきりきっちり決めましょう。まあ慎重になりすぎるよりはノリと勢いで行った方がよいことも多いんですが。加減が難しい。

 「描きたいシーン」から始めて作業をしていってある程度お話が出来上がったあたりで「この描きたいシーン自体がそもそも面白くないんちゃうか」病にかかって身動きが取れなくなることがよくあります。そうなったら最初にお話しした「完成の基準(ハードル)」に戻ってみてます。そのための基準です。ハードルをクリアしてたらとりあえず最低限のクオリティは保ってるので完成させて損するということはまずないはずです。でも「やりたいこと」を描くのもめんどくさいレベルだったら無理せずとりあえず置いときます。「やりたいこと」がめんどくさいレベルだったらほかのところなんてもっともっと描きたくないはずですからね。そんなん描いてられませんよ。

 私の場合は「描きたいシーン」が起承転結でいうところの「転」になる場合が多いです(例えば男の子が逆上がりができるようになろうとするお話で、逆上がりをできるようになるか、ならないのか、をやってる最後のところってことです)。

 で、たまにあるんですがその描きたいシーンが「起」だったり「承」だったり「結」だったりすると一風変わったお話になります。
例えば「起」の場合は出オチです。ばこーんとやって一気に読者をひきつけてもうそっからどんどん意外な展開を重ねていく方法になることが多いです。「承」だとキャラクター重視のお話になります。キャラクターの魅力をひたすら掘り下げるお話になります。この辺の場合「転」「結」(というかそもそもお話というもの自体が)はとってつけたものになります。「結」は落ちが描きたいお話になります。推理小説でいうと、トリックが描きたい場合は「転」が描きたいシーンになって、犯人の動機が描きたい場合は「結」が描きたいシーンになる、みたいなイメージだと思います。
 「描きたいこと」、実はたまに設定になることもあります。設定漫画好きなんだけど私には相性が悪いらしく全然かけない…。

 そんな感じで、先ず「描きたいこと」を考えたら、無理に物語を決めようとせず(もちろん勝手に思いつくのであれば出しちゃっていいですが)どんな「要素」が必要か考えていきましょう。一番重要な「要素」である「キャラクター」は次回やっていきます。

〇新しいアイディア
 長いこと一つの物語をああでもないこうでもないっていじってると、ほんとにどんどん違う方向にそれちゃいます。で、あれもこれもってなっちゃう。そこをなんとか我慢して、次に描くときのネタとしてストックして(実際ここでしか描けないネタだからと思って詰め込んだものの後で読んでみたらそんなことなかったっていうのはよくあります)、「最初」に決めた「描きたいこと」を「魅せること」に注力しましょう。

 注釈として入れておきますが、「新しいアイディア」を入れてはいけないということではないんです。ここの感覚が難しいんですが最初の時点であったもの(描きたいこと、よりもうちょっと範囲が広いと考えてください)をパワーアップさせるアイディアはむしろどんどん考えて入れていくべきです。これが足りなくてお話(作品)の深さがないことってよくあるくらいなんです。でも単に変更するだけのアイディアは入れない方がいいです。たとえ変更後の方が面白そうでも。変更するアイディアって考えるのすごく簡単なんですよ。それこそいくらでも思いつきます。そしてパワーアップさせるアイディアは考えるのがめちゃくちゃ大変で難しいんです。このパワーアップアイディアを出すのをどのくらい出せるかは作品の完成度に大きく影響してきます。

 物語を作るうえで一番難しいのはアイディアを出すことではなく決定することだということを把握しましょう。一度決めたら新しいアイディアが出てきても動かしてはいけません。それがどこかを判断するのは自分です。わからない場合は最初に決めた「描きたいこと」と、キャラクターに関わるものは動かさないようにしておいた方が無難です。

2.「描きたいこと」のまとめ

 漫画を描くときの一歩目は「描きたいことを考える」というとことでした。私の場合はシーンなので、「描きたいシーンを考える」ですね。
 当たり前っちゃ当たり前ですが、「描きたいこと」なんてぽんぽん出てくる訳じゃないです。自分の中で「完成させるハードル」なんて作ってたらなおさらです。なので常に「描きたいこと」について考えてます。大体「描きたいこと」を思いついた時点でもうハードルに引っ掛かります。
 私の場合は描きたいことは寝かせる期間も大事なので色々考えて寝かせてあります。今はハードルを越えられなくても後で超えられるようになることはよくあります。要は没ってゴミ箱に捨てて忘れ去るわけじゃないって感じです。「描きたいこと」が具体的になってくれるまでひたすら寝かせるんです。

 「題材」に影響されて「描きたいこと」を変化させることはあまりお勧めしませんが、「題材」に寝てる「描きたいこと」が起こされることは割とよくあります。貯めておくのお勧めです。
 「描きたいこと」が決まっていればそこから大体3か月くらいで24ページの漫画が描けます。ネームに1か月、作画に2か月くらいでしょうか。キャラを固めつつプロットを試行錯誤が大体3週間、そこから整理してプロットを仕上げるのに1週間、ネームは3,4日ってところです。ちなみに「描きたいこと」が固まるまではバラバラで5秒でできる時もあれば平気で数年とかかかります。描きたいことが出てきたら3日くらいでイメージがぼやけないうちにネームを切っちゃいましょう、なんてどっかで聞いたことありますが私には無理です。私がやるならそれはプロットを作ることを想定していない、いわば「やりたいことメモ」としてのネームです。

 漫画のページ数は16~48ページくらいの短編読み切りを想定しています。長編漫画や4ページ漫画は作り方が違ってくる可能性が多々あります。本来であれば投稿用などには24や32ページの漫画が良いのでしょうが24と32ページというのは帯に短し襷に長しでめちゃくちゃ難しいページ数だと個人的に思います。読んでる方が読みやすいのはそのくらいなんですけどね。なので最初は16か20ページのお話を作ってみるとよいと思います。気合いで20ページ以内にまとめましょう。どうしても20ページにまとまらない場合はいっそ48ページとかにしてしまった方がまとまります。私の場合。倍以上かよ。

 また、漫画を描いてみたいけど何を描いたら良いかわからないという人がいたら、よくあるテーマを選んで、それを自分だったらどう描くかと言うことを考えてみるってのもありだと思います。別に意外なものや目新しいもの、オリジナリティーを出そうとしたものなどを入れる必要はありません。意外性や目新しさにスポットをあてると全体が見えなくなります。ただ、必ず好きなものを入れてください。
 例えば桃太郎で桃太郎が女だったら好き、とか、BLでこんな受けが好き、とかそのくらいでいいです。
 それでも浮かんでこなければ、自分が何が好きなのか自問自答してよく考えてみてください。そこで具体的な作品の名前やキャラクターの名前ばかり出てきて、こういう感じの設定、とか、こんな関係性、こんなキャラ、こんな世界観ってのが全く出てこないようでしたら、もしかしたら一次創作にはあまり向いていないかもしれません。なぜならそれらは与えられた好きなものだからです。その好きはなかなか自分で作る好きに転換できません。なので相当頑張らないとできないかもしれません。創作とは自分で料理することです。カレー、ハンバーグ、スパゲッティといったよくあるもの、みんなが好きなものが好きなことは決して悪いことではありません。それをあなたがどのように料理するかが大事なんです。それを自分の好きな味になるように自分で作ってみることが大事なんです。食べ物の想像をしたときに外で食べることばかりイメージして全く自分で作るというイメージがわかないのであれば、外で食べることをお勧めします。

 今回は以上になります。次回はキャラクターのお話になります。ここまで読んでくださりありがとうございました。次回からは有料記事になってはしまいますが、よろしければ引き続きお付き合いください。

サポート頂けると今後の活動ができるようになるので宜しければ。