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干渉作用のメカニズム

前回の投稿で、トレーニングの干渉作用についてお伝えしました。特に、持久トレーニングが筋量、筋力、パワーに影響を与える可能性が高いというものでした。今回はなぜそうなるのか、その原因やメカニズムを見ていきましょう。

■エネルギー収支・トレーニング量要
特に高負荷の持久トレーニングはより多くのエネルギーを消費します。より多くのエネルギーを消費するということは、体重が減りやすい状態、筋肉が分解され減りやすい状態になるということです。また、より多くのトレーニングを行った後は食欲がなくなることもあります。皆さんも、このような経験はあるのではないでしょうか。この状態だと、より体重が減りやすい状態に陥りやすくなってしまうでしょう。このことが、持久トレーニングの量が増えるほど、筋量増加に悪影響が出やすい1つと考えられます。エネルギー収支の観点を考える際は、トレーニング量もセットで考える必要がでてきます。筋力トレーニングと持久トレーニングを両方行えば、当然全体のトレーニング量は多くなります。その結果、身体の回復が追いつかず、オーバートレーニング状態になることで、筋力トレーニングの効果が薄れてしまう可能性が考えられます。

■活性酵素・ホルモン要因
少し難しい言葉ですが、持久力を高めるために重要な酵素にAMPK(アデノシン1リン酸活性化タンパク質キナーゼ)と呼ばれるものがあります。持久トレーニングを行うと、このAMPKが活性化し、脂肪や糖の利用を促すことで持久能力が改善されることが知られています。
一方、筋力トレーニング後は、mTORC1(エムトール1複合体)が活性化し、筋肥大に重要な役割を果たします。しかし、持久トレーニングと筋力トレーニングを同時に行うことで、AMPKの活性がmTORC1の活性を抑制してしまうことが明らかになっています。その結果、持久トレーニングが筋力トレーニングの効果を阻害してしまうと考えられています。
また、上記と同じようなもので、持久トレーニング後は遊離脂肪酸が血中に放出され脂質の代謝を促し、筋力トレーニング後は成長ホルモンが促され筋量向上が期待できます。ここでも、遊離脂肪酸がすでに血中に多くあると、成長ホルモンとは同時に多く血中に存在することができず、有酸素トレーニング後に筋力トレーニングをすると、筋量向上には適さないとされています。
もし、筋力トレーニングと持久トレーニングを同じ日にやる必要があるのであれば、筋力トレーニング後に持久トレーニングという順で、ある程度時間間隔をあけて実施することが、それぞれのトレーニング効果を保つのに必要かもしれません。

■部分的・急性的な疲労
ランニングやスプリントなどの運動は、当然、下肢へのダメージが大きくなります。
特に球技などにみられる急な方向転換や、ハイスピードでのスプリントでは、動作にブレーキをかける強い負荷がかかります。
急な方向転換やスプリントでは、ブレーキをかけるような筋収縮がかかり、これをエキセントリックな筋収縮と言いますが、その収縮速度が高いほど筋肉を分解するタンパク質が多く発生するとされています。
これが影響し、下肢に局所的な疲労が蓄積しやすくなり、その部位の筋力向上に悪影響が出てしまうと考えられます。走行距離が多いマラソン選手、サッカー選手などの下半身が永久的にムキムキになっていかない理由はこのような要因が考えられます。
また、持久トレーニングでも下肢にダメージを与える持久トレーニングは、上半身の筋力向上には影響を及ぼさなかったと言う報告もあり、部位を分かれていれば、干渉作用は小さくなることが考えられます。そのため、私が所属しているサッカークラブでも、試合翌日や試合当日でも、上半身メインで筋力トレーニングを実施しています。

このように、干渉作用の原因として考えられることは様々です。また原因は他にも可能性はあるかもしれないですし、また複雑に絡み合っていると考えるべきだと思います。
と同時に、原因がある程度把握できると、干渉作用の対策も知ることができます。次回は、この干渉作用を最小化する戦略も多く考えていきましょう。

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