見出し画像

ピリオダイゼーション~移行期~

皆さんこんにちは。ジムトレーニング担当の鈴木です。
本日はスポーツフォームの消失段階にあたる、移行期についてみていきましょう。余談も含め少し長くなりますが、一読して頂けたらと思います。

移行期は、「適応能力の枯渇を防止し、積極的休養により適応能力を回復させる」ことが大きな目標です。適応能力とは、トレーニングによって身体能力が向上する可能性のことを指します。これは森先生もトレーニングの原理の説明をして頂いていますが、これに似たようなものです。

消失段階である移行期は、文字通り一度築き上げたスポーツフォーム(パフォーマンス)を取り崩すこととなります。せっかく積みあげたのにどうして?と思う方もいらっしゃるかと思います。

そもそも以前もお伝えしたように、パフォーマンスを極限の高い状態を維持することは非常に困難です。それを無理に行おうとすると心身の負担が大きく、オーバートレーニングを招く可能性が高くなります。体だけでなくメンタル的にも厳しいでしょう。パフォーマンスの土台となる筋力や基礎体力と、競技専門スキルを同時に高め、かつ気持ちも常に臨戦態勢・・・それでは身体の適応能力が低下していくことは容易に考えられます。

積極的休養もとり、身体の適応能力を回復させ次のパフォーマンスの為の土台を新たに築きあげやすくする為に、移行期が必要なのです。同じトレーニングを長く続けていると、その効果はどんどん頭打ちして、効果が小さくなってきます。これをトレーニングの馴化現象と言います。適応能力が枯渇してしまっている為、それを回復するための移行期を設定する必要があるのですね。

また、移行期の目標に積極的休養と書いてありますが、これは完全にトレーニングをストップするという意味ではありません。もちろん、ケガや酷使した箇所があるのであれば、安静にして治癒に専念する時期でもあります。
休養だからとだらだら過ごしてしまえば、それこそ土台が完全になくなってマイナイからのスタートになってしまいます。あくまで、心身の負荷を取り除き土台の土台部分は保つことは必要になります。そこで、試合期にやっていたようなトレーニングとは様式をガラッと変えて、基礎の基礎となる部分は保つ運動、心理的負担が少ない運動をしていくことが良いのではないでしょうか。移行期の積極的休養は、登山や、歩行が中心の運動でも良い
とされており、トレーニングというよりは、心身を健全に保つための適度な運動と捉えるのがいいかもしれません。

さて、上記に書いてある移行期は、シーズンオフ等に自分の意志で移行期を定め、消失段階をあえて創ることが前提ですが、自分が意図していなくても消失段階は訪れることがあり、体内時計のように周期的に訪れるものでもあります。スランプと捉えるとイメージしやすいでしょう。トレーニングを続けているのになかなか身体能力が向上してこない、寧ろどんどんパフォーマンスが悪くなっている、ということは皆さんも経験があるのではないでしょか。シーズン中の大切な時期にそれが訪れることもあるでしょう。その場合の考え方として、上文のように、いま継続しているトレーニングに身体が適応していないことが考えられます。思い切ってトレーニング様式を変えてみるのは解決の1つかもしれません。少し休養(積極的休養)を入れることも1つでしょう。

また、何か新しいトレーニングや取り組みに挑戦することで、身体に違和感が出て、一時的にパフォーマンスが低下する、ということはよくあることです。技術的なことなら、フォームを変えるなどです。フィジカル的な改善も同じようなことが考えられます。トレーニングの効果は、効果が出る適応期間があるので、すぐに成果に繋がらなくても一定期間継続は必要なので、もし新しい取り組みをするなら、いつから初めていつ頃には習得できている状態にしたいのかその見極めは必要です

少しピリオダイゼーションとはそれますが、例を紹介致します。私の知人のゴルファーの選手が胸回りの可動性を高めたいと思い、シーズン直前で可動域向上に取り組みました。比較的短期間で胸回りの可動性が向上したのですが、ドライバー時のスイングでコントロールが効きづらくなり、悪い時には空振りさえしてしまう時もあり、試合で結果を残せないということがありました。これは、今までの可動性に合くんかわせたスイングの感覚が定着している為、今あるフィジカル(可動性)に専門スキル(ドライバーのスイング)が追いついていない、という状況になっていました。

ポイントは2つで、1つは、フィジカル状態と競技パフォーマンスは必ずしも一致するとは限らない、同時に高めていくことは難しいということ。普通に考えれば、可動性が向上することは良いことだと思われますが、このケースではそれが一時的にパフォーマンスを低下させる要因となっていました。
2つ目は、身体感覚が変わるどの新しい取り組みであれば、その時期を考える必要がある、ということ。その後この選手は徐々にスイング感覚がフィットし、最終的には以前よりも飛距離もアップし以前より良い状態にはなりました。しかし、改善に取り組んだのがシーズンの直前であった為、そのシーズンは低調なパフォーマンスで終えてしまいました。長い目でみたらこの一時的な後退は進歩の為には必要なことでした。
ピリオダイゼーション的に考えれば、進歩の為には後退も必要です。しかし、今シーズンを棒に振る覚悟で取り組んでいたというよりは、今シーズンも結果をだそうとしていた中での取り組みでしたので、そう考えると新しい取り組みをする時期を早める必要があったかもしれません。

ピリオダイゼーションについてこれまでお伝えしてきました。どんなスポーツでも当てはまることですし、スポーツではなくても同じようなことはあると思います。
物事を前に進める際の1つの考え方として、皆さんの参考にして頂けたら幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?