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砂浜トレーニングについて考える

皆さんこんにちは。
ジムトレーニング担当の鈴木です。
そして、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

陸上選手、球技系の選手どちらも取り入れることがあるトレーニングに、「砂浜トレーニング」があると思います。和田校長もビーチフラッグスの選手ですね。特に、シーズンインする前の鍛錬期のような時期に取り入れる方も多いのではないでしょうか。

この「砂浜トレーニング」、良いトレーニングと聞きよく取り入れられますが、そもそも何が良く、どんな効果があって取り入れているのか、理解して行っている人は意外と少ないのではないでしょか?なんとなく「不安定な場所だから、足腰体幹が鍛えられそう」…という理由で砂浜トレーニングを実施している選手は意外に多いでしょう。
そこで今回は、この「砂浜トレーニング」の特徴、考えられるメリットについて紹介していきます。

まず、砂浜と平らな地面(道路や陸上トラックなど)の違いから予想されることを考えてみましょう。サーフェイスが違うのですから、砂浜での走りと、陸上競技場のトラックでの走りは当然異なるはずです。その主な違いとして以下の2点が考えられます。

まず1つ目は、「後ろに蹴るだけではなかなか前に進めない」点です。これは、平な場所で走る時もそうですが、砂場は後ろに蹴ろうとすると、砂ごと後ろに抜けてしまうため力を入れている割に余計に進むことが出来ません。
平らな場所だと、このような走りでも、最悪パワーがあるとぐいぐい走れてしまう人もいます。さらに、坂道は速いけど、平らな場所ではそうでもないという人は、砂場を走ると後ろに蹴り込む傾向が強くでて、なかなか前に進まない状態になることが多いでしょう。砂場で走ることで、走りの特徴が出るかもしれませんね

2つ目は、「滞空時間が短くなり、素早く脚を切り返す必要がある」です。これも当然ですが、平らな場所よりも、砂場は柔らかく反発をもらえない為、高くジャンプできません。
そのため、走っていても反発で弾むことが難しくなり、滞空時間が短くなると考えられます。滞空時間が短くなるということは、平らな場所よりも早く脚を切り返す必要があるということです。その短い滞空時間の間に、素早く動作を切り返すような走りをする必要が出てくるということが考えられます。

実際に砂浜スプリントとトラックでのスプリントのフォームの違いを調べている研究があります(Alcaraz et al:2011)。その違いをまとめたものが以下になります。

・速度の低下度合いは男性で15.8%、女性で12.4%ほど。
・ストライドの低下と、接地時間の増加度合いは顕著。
・ピッチ、滞空時間の差はわずかだった。
・接地期に身体がより前傾し、重心が落ちたようなフォーム。
・離地時にかけて、股関節の伸展域が小さくなっていた。

まずこれらの違いは、良い悪いではなく、どう解釈するかが大切です。

最初に、この研究では「砂場トレーニングはスプリントフォームに悪影響があるかもしれない」として、砂浜スプリントトレーニングに対してはやや否定的です。その理由は、接地時に重心が落ちたフォームになってしまうということからです。つまり、実際のスプリント動作とは動作が大きく異なってしまうということですね
しかし、このように動作の違いだけに注目して良い悪いが決まるとなると、坂道ダッシュやウエイトトレーニングは悪いもの?ということにも繋がります。少なくとも「本来のスプリント動作とは違うから、トレーニングとしては良くない」と決めるのは早計かもしれません。
負荷的な観点から見ると、フォームが大きく変わるくらいの負荷がある方が、トレーニングとしては効果が高いのではないかとも考えることができます。筋力トレーニングでも、本当に負荷の高い重量を扱うと、フォームを保つのが難しく自然と理想とさせるフォームとは違うものになることが多いですね。スプリントも、スピードを上げれば上げるほど、その人の癖が出てきます。見た目だけではなく、目的の部位や動作、機能に、適切に負荷をかけられているかどうかで判断すべきでしょう
とは言え、動作が違うということは、感覚も異なります。したがって、大切なレース前の調整期間や、シーズン中に砂場トレーニングを多くこなすことは良いトレーニングとは言えないでしょう

以上のような特徴から、砂浜トレーニングから得られると思われる効果について考えてみます。
短い滞空時間で動作を切り返す能力の向上
平らな場所よりも滞空時間が短くなるという特徴は先ほどお伝えしました。そのため、その短い時間の間に脚を切り返す能力を高めるのに効果的であると考えられます。つまり、脚を早く切り替えなければならない環境に身を置くため、その環境に適応するには、脚を早く切り返さなければならず、その能力が身についていく可能性があると考えられるのです。
また、地面を後ろに大きく蹴ってもうまく進まない環境であるということから、「脚が流れる」現象を改善する効果も期待できるかもしれません。大腿部分が後ろに大きく動くようなフォームでは、腿を前に引き出すタイミングは遅れてしまいます。後ろに腿を大きくスイングする手前でブレーキをかけて、素早く次の接地の準備をする、それができるための筋力をつけるのにはもってこいのトレーニングだと言えるでしょう。

身体全体を使って、真下に地面を捉える能力
ここでも、滞空時間が短くなることから考えられることになります。これは、砂場が平らではなく柔らかいので、地面の垂直方向に力を伝えづらくなっているとも捉えることができます。
なので、少しでも反力を得るためには、平らな場所を走る時よりも、脚の位置だけでなく上半身も含め全身が確実に重心移動をする必要があります。そこで重要なのが、地面に着いていない方の脚(遊脚)の使いかたです。これは、走りの学校でも特に重要されていることですね。ベースポジションは、遊脚(浮き脚)の位置をしっかり確認する為のものです。接地する際の浮き脚の位置で走りの速さに大きく影響します。接地のタイミングに合わせて、腿を挟み込むように、遅れずに引き出すことで、地面垂直方向に力を伝える補助ができます。
また、脚だけでなく、肩、腕も少し下に抑えるようにリラックスして振るようにできれば、さらに垂直方向に力を伝える補助ができるかもしれません。

考えられる結論として、「砂浜トレーニング」は、動作を積極的に切り返し続けるフォーム、そのための筋力を高めるのに、効果的なトレーニングであると言えるのではないでしょうか

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