2021年を振り返って -幸福の科学とコロナ、宗教2世など-
2021年も、もう終わりました。
少し出遅れましたが、新年を迎えるにあたり、2021年の幸福の科学、宗教2世界隈の出来事を振り返りたいと思います。冒頭のコロナ関連の話題は、なるべく全体像を示すため2020年も含めています。
今回は、特に大きな事件だった3つの出来事を扱います。
幸福の科学と新型コロナ、2020年
2020年に始まった新型コロナ禍は、全世界に甚大な被害をもたらしました。多くの死者を生み出し、私たちの生活は一変。
しかし、その中にあって幸福の科学という宗教団体だけは、常軌を逸した行動を取り続けています。
2020年2月、幸福の科学・大川隆法総裁は「(マスクは)実際全然要りません。(中略)コロナウィルスを死滅させることも可能です。そういう法力を持っております。だから全然気にしないで、治しに来たと思った方がむしろいいかもしれません」と主張*1。法力、つまり大川の霊的なパワーがあるからウイルスを除去できるし、マスクなどいらない。むしろ積極的に大川の講演会に行くべきだというのです。
そんな調子で2020年、全国の幸福の科学施設は、ほぼ例年通り運営されたようです。ある教団施設の行事予定表は、平時となんら変わりなくイベントが目白押しです。
さらに、全国の宗教施設を参拝する信者たちは、外出時に外ではマスクを着用しているが、いったん教団施設内に入るとマスクを外したり密集しているとの指摘も相次ぎました。実際に筆者が去年夏、とある大型教団施設を訪れたときも、信者の目測約8割がマスク非着用。職員は確認した限り全員ノーマスクでした。また、ある現役信者が「某施設内で集会終了の折、過半数の信者らがマスクをせず密集しながら移動していた」と語るのも聞きました。
次に、関連する教育施設です。生徒が寮に住む幸福の科学学園は、全国の学校が休校する中、日本で唯一、通常通りのスケジュールで運営したと大川が豪語。これに聴衆(大半が信者とみられる)は拍手を送っています。まるで賞賛されるべきことかのような雰囲気です。ハッピー・サイエンス・ユニバーシティー(HSU)も”通常営業”。
老いも若きも、教育施設、宗教施設それぞれの環境でリスクのある行動をとっています。特に親が信者で、自身も幼少から宗教教育を受けて育てられたいわゆる”2世”信者は、親に連れられて宗教施設へ行ったり、親の意向で幸福の科学学園やHSUに入学したケースもあるとみられます。
親という名の、ある種の”不可抗力”"強制力"のもと、2世は"幸福の科学が生む衛生上のリスク"に否応なく巻き込まれている模様です。
加えて、大川は2020年御生誕祭の法話「信仰からの創造」の中で「私の講演会を聞いて、コロナウイルスなどにかかるわけが無いでしょう。当たり前です」 「「こんなものに倒されてたまるか」という気概を持っていれば、絶対に大丈夫です」*2と言い放ちました。
さらに2020年12月、さいたまスーパーアリーナで行われた法話「“With Savior”―救世主と共に―」では
大川「今日、本会場は埼玉県の要請により(聴衆は)マスクいっぱいしてますけど、まあしても無駄ですけど、出来るだけしておいてください。会場貸してくれないといけないから、なるべくしておいてください。かかることはありません(会場拍手)」と述べました。
マスクをつけるのは感染対策上「無駄」だし、そもそも「かかることはない」が、着用しないと会場を利用できないから仕方なくつけろ、というとんでもない論理です。
以上が2020年の出来事です。このように、幸福の科学は社会性が欠けており、新型ウイルスへの認識が著しく歪んでいることがよくわかります。そして同教団は2021年も色々と問題を起こしました。
2021年
1月7日。その日は突然訪れました。大川が法話「『秘密の法』講義」内で、複数の信者・職員らが新型コロナに感染したと発表したのです。この中で大川は「まあ、会員だって信仰のレベルはいろいろありますしね、悪いことしてる人もいますからね。全部が全部は守りきれませんので、その時はその時だと思って下さい」*3と語りました。
先述の通り、法力で「コロナウイルスを死滅できる」と言っていたのは大川です。ですが、いざ感染者が出ると、個々の信者の信仰心の問題にすり替えて責任を逃れる態度には、唖然とさせられました。結局、法力云々などという妄言は信用ならないと実証された格好です。その上「全部は守りきれない」として信者まで見捨てる神なんて聞いたことがありません。しかも信者や職員が「悪いことをしてる」と教祖自ら告白。ここまで色々めちゃくちゃだと、もはや幸福の科学は宗教として成り立っているのかさえ疑問です。
さらに、感染症は一宗教ではなく日本全体の問題です。信者が感染したら、ウイルスを非信者に移す可能性もあります。コロナを軽視した、無責任かつ危険な発言で信者を煽ってきた大川は、”公衆衛生の敵”と言わざるを得ません。これは信者だけでなく、全ての国民にとって関係のある話です。
しかしそれでも、幸福の科学は懲りません。2021年7月、大川総裁は法話「エローヒムの本心」で、聴衆(≒信者)がマスクをつけていないことをネタにして笑いを取ったりしました。信者の皆さん、まだマスク着けてないの…。
9月には、幸福の科学がホームページ上で「聴くワクチン」と称して、大川隆法・作詞作曲の楽曲の宣伝を行いました。大川にウイルスを撃退する力などない事は、実証済みだと思うのですが…。
ここで紹介された信者の体験談から、この教団が信者らの感染を経てもなお、性懲りも無く異常性を発揮し続けていることがよく伝わってきます。これを引用して本件を締めくくります。
「"聴くワクチン" 実感の声!
今年に入り会社で2度のコロナ濃厚接触者となり、さらには先日、家族・親族全員(計10人)がコロナに感染してしまいましたが、私自身に陽性反応が出たことは一度もありませんでした。感染した職場の同僚や家族・親族と異なっていた点は、信仰心をもっていたことと、楽曲「コロナウィルス撃退曲」を定期的に聴いていたことです。
改めて信仰の素晴らしさや大川隆法総裁の楽曲の威力を実感しました。(沖縄県Kさん・20代男性)」(強調は筆者)
「小田原市成人式スピーチ事件」
大川が、信者で感染者が出たと認めた3日後。2021年・成人の日。幸福の科学2世信者とみられる新成人が、小田原市の成人式の抱負スピーチで、突如壇上で幸福の科学の教義を宣伝し始めるという衝撃の行動に出ました。筆者としては、2021年のカルト界隈でトップクラスの事件だったと考えています。
同成人式は無観客開催で、YouTubeで一般公開されました(現在は削除済み)。スピーチ登壇者は公募で4人が選ばれ、当該人物がトップバッターでした。
パッと見る限り比較的地味な、どこにでもいる大人しそうな青年。彼は、およそ常識的に「新成人の抱負」と聞いて想像するような内容はほとんど語っていません。では、やや緊張気味の素振りで、約6分間にわたって何を話したのでしょうか。一部を引用します。
「自分は高校では栃木県の、大学では千葉県の宗教系の大学に通っていて、そこでエル・カンターレという神の教えを学んでいます。去年、コロナの影響で世間の学校ではリモート授業になったり休校になったりしたそうですが、自分の学校では1年間普通に授業を受けたりサークル活動をしたり、また入学式を行ったり文化祭を行ったりすることができました。しかも、感染者は1人も出ていません。さらに、コロナウイルスを怖がっている人は殆どいません。それはなぜかというと、エル・カンターレを信じ、その教えを学ぶことによって、私達はコロナウイルスに勝つための最強の方法だと言われているからです。神様とかあの世とか、目に見えないものは信じないという人も多いと思いますが、ウイルスも目に見えない存在であり、人々に恐怖を脅かしています。それに対して神様は私達に確実に希望を与えてくださっています」(やや日刊カルト新聞より)
まさに特定宗教団体の宣伝です。市が開催する公的なイベントでの出来事なので、憲法が定める政教分離原則に抵触しかねません。しかもその内容は、式の事前リハーサルで打ち合わせされていた内容とは異なるもの。いわば”ゲリラ的布教”です。小田原市はやや日刊カルト新聞に対し、男性の"だまし討ち"行為は「信義則違反であり受け入れられない」とコメントしつつ、政教分離原則との兼ね合いについては言及を避けました。
当該男性は幸福の科学学園の卒業生で、現在は「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(略称HSU)」の生徒であることが、スピーチの内容から伺えます。HSUとは、幸福の科学が作った大学もどきの無認可校です。
そして何より強烈なのは、スピーチ内容が幸福の科学の教えを反映しているか、それに沿ったものばかりだということです。カルト宗教の信者は、教団に染まれば染まるほど、みな一様に思考回路や発言内容が世間一般と乖離し、独特のものになっていきます。その様子はよく「どの信者も金太郎飴のように同じことを言う」とか「教祖の”お言葉”や教団の主張を繰り返す」と表現されますが、彼も例外ではありません。
「(HSUで)コロナウイルスを怖がっている人は殆どいません」という驚きの実態や、信仰心が「コロナウイルスに勝つための最強の方法」など科学的根拠のない主張。さらにHSUは宗教系の「大学」であるという、明白に事実に反する事まで述べています。
そこにあるのは他でもない…
「カルト宗教に毒されてしまった人間」の姿そのものです。
幸福の科学側はデイリー新潮の取材に対し、彼がHSUの生徒だと認めた上で、「公の場で自らの信仰について情熱をもって(中略)述べることは、『信教の自由』『信仰告白の自由』の観点からも尊重されるべきものであると考えます」と答えています。
学園とHSUで2世信者を”純粋培養”し、このような人材を輩出する。彼の暴挙を「尊重されるべき」などとうそぶく。
幸福の科学とはどんな団体なのか、身にしみてよくわかる事件でしたし、教団は厳しく追及されるべきです。
「宗教2世報道」
こうして、新年早々から騒がしかった今年。もう一つの大きなトピックは、NHKが宗教2世をテーマとする報道を相次いで行った事です。まさか、大手マスコミがここまでしっかり扱ってくれるとは考えていなかったため、筆者にはとてもインパクトがありました。
主にエホバの証人と統一教会の2世の苦境が(教団名は伏せて)多く取り上げられました。やがてNHK以外のメディアも宗教2世を扱うなど、にわかな盛り上がりを見せました。こうした影響で、あらたにTwitterで宗教2世を名乗るアカウントが増え、漫画やイラスト形式で発信する人も出てきました。
さらに、カルト問題に詳しいジャーナリスト氏らが、カルト問題について考える学習会を開くなど、新たな動きが着々と出てきています。
まとめ
コロナ禍により、大川隆法が公衆衛生を顧みず、信者を危険な方向に煽っておいて責任も取らない人物である事が判明しました。
成人式での事件は、幸福の科学学園やHSUの「宗教教育」がどんな人間を生み出すかを、悲惨なまでに浮き彫りにしました。
一方で、日本の公共放送・NHKが宗教(カルト)2世問題にスポットライトを当て、これを機にあちこちで問題提起の動きが出ています。今後、宗教(カルト)2世問題を社会問題として的確に捉え、解決を試みていく動きが育っていくかどうかが問われます。それはすなわち、何かとカルト宗教に無関心だったり無理解だったりする日本社会が、今後それとどう向き合っていくかという問題をも含みます。
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