叱る行為には中毒性が!?『叱る依存がとまらない』村中直人
認識がガラリと変わった書籍があったので、ご紹介させていただこう。
村中直人さんの『<叱る依存>がとまらない』。
村中さんは、臨床心理士で公認心理師。発達障害サポーター’sスクールに携わっておられる方だ。
よく、怒ると叱るは異なると言われる。
怒るは感情をぶつける、叱るは冷静に教え諭すといった違いがあると認識されている方も多いだろう。
村上さんは、怒られても叱られても、責められた側の反応は「自分を守ろう」という防衛になる。
そのため行動の改善を期待するのは難しくなると説いておられる。
つまり怒るも叱るも同じ結果を招きかねない。
僕も過去、誰かが誰かを叱っているのを目撃したり、自分が叱られたり叱ったりした経験があった。
そのとき、叱っている側がどんどん興奮することがあった。
誰かを責める際に快感が伴う。
「責める」は「攻める」でもある。
正義中毒、加害中毒に陥る人が続出しているのは、その行為自体が気持ちいいからだ。
脳内にドーパミンという快楽物質が分泌されるため、「行為へ依存する」という状態ができあがる。
叱られた側は「とにかく辛い、今の状態から逃げたい」と思って謝罪し反省をアピールする。
しかしこれは、叱られている状態から脱するのが目的のため、何で叱られたのかに目が行きづらい。
叱られた側はパニックになっていれば、内省する余裕などないだろう。
そして叱られ続けた側は、叱られることにやがて慣れ始め馴化と呼ばれる現象が起こる。
叱っている側は手ごたえがなくなり、「もっとお灸をすえてやらねば!」と感じ、さらに激しく叱る選択肢をとる。
こうして叱る依存に陥るのだ。
叱られる側は、そもそも「やり方がわからないので失敗する」というのが多い。
しかし叱るというのは、失敗後のアプローチなので、いつも後出しになるというのも、忘れてはいけない。
村中さんは人間の生理的なメカニズムをわかりやすく例に挙げながら、今の日本に叱るが横行している事実を看破していく。
ちなみに彼は「叱るのが絶対ダメ!」と言っているのではない。
叱るのが効果的なことがあるものの、叱る一辺倒だと上手くはいかないと示唆しておられる。
では、叱る以外のどのようなアプローチがあるのか?
部下がパニックにならない状態。すなわち心理的安全性を確保した上で、具体的な方法をできるようになるまで伝える。
叱る側は相手に行動を改めて欲しくて、叱っている。
叱る以外のアプローチでも、相手が行動を変容することは十分に可能なわけだ。
我々は多忙でゆとりがないときに、つい叱るを選びがちかもしれない。
今まで「怒ると叱るは違う」と偉そうに述べていた僕は、この本を読んでギャフンと打ちのめされた。
興味を持たれた方は、ぜひご一読を。
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