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そして、中国も立ち直らない理由

先日、久々に中国へ出張する機会があり、約5年ぶりに香港経由で深圳に入りました。

まず驚いたのが香港から深圳に入る車が少ないこと。同じ経路で移動した5年前は国境(?)付近の渋滞にうんざりしましたが、今回はイミグレで並んでいる車はほんの数台で、スムーズに深圳に入ることができました。これだけで中国経済の鈍化を感じるというのは大げさだと思いますが、単純に深圳に行く必要のある人の数が減っているのは間違いないことだと思います。

深圳ではいくつかのローカルの製造会社を訪問しました。気のせいかもしれませんが以前より製造工程は整理整頓されているような気がしました。
私は以前、中国に工場のあるディスプレイデバイスのメーカーに勤務していましたが、工程の管理能力の低さは目を覆いたくなるなるレベルのものでした。クリーンルームにお菓子の包装紙が落ちていたり、日本企業の常識では考えられないことがたくさんありました。何度か改善を試みましたが、おそらく私がやろうとしていたことは、現地の人たちには理解されていなかったと思います。
あの当時の工場のあった町は、歩道は穴だらけでがガタガタ、ちょっと風がふけばホコリが舞って砂だらけになるし、毎日PM2.5で曇って先が見えにくいようなところでした。当時私の出した結論は「こんな環境で生活している人たちに、整理整頓、異物、静電気対策なんていっても無理なんだろうな。」でした。
考えてみれば私が小学生だった昭和40年代は、日本でも、車の窓からゴミやたばこの吸い殻を捨てるのは当たり前、毎日のように光化学スモッグ警報なるものが毎日のように出て、生活排水がながれるドブ川が普通に流れていました。(ちなみに私は東京23区育ちです。)今考えると家の近くにあった雨水が貯まった池にいってアメリカザリガニを大量にとってきてバケツに入れていたことがいかに不衛生なことだったかと背筋が寒くなります。多分工程管理とかいったものはそこに生活している人たちの生活環境に大きく左右されるのだと思います。道に痰をはいて、普通に外で用を足していたあの頃の日本人にも今の日本企業の工程管理なんてできないんじゃないかと思います。
あの当時は中国の生活環境が工程管理を理解できるまでに変わるのか?それともこのレベルの工程管理でもちゃんとしたものができるような製品に移っていくのか?なんて考えていましたが、先日みたかぎりではその両方が起こっていて、まるで歩み寄っているように見えました。

さてもう一つ深圳の人たちを見ていて思ったことは、「随分落ち着いたな」でした。以前はあふれるような熱気を感じたんですが、随分と落ち着いてしまって、「あれ?ここって深圳だよな」と思うことがありました。個人的には前より好印象でしたが、裏をかえせば勢いがなくなったっていうことなのかもしれません。

日本で報道されているような経済の停滞は本当のことのようで、現地のある人は「中国にはもうチャンスがない」と言ってました。大学を出ても働き口がなく、街には就職できなかった若者があふれているそうです。今は極端に大きな問題になって見えないのは、彼らは一人っ子政策のもとで生まれた人たちで、両親ががいてその両親(つまり祖父母)がそれぞれいて、2+2*2=6人でひとりの子供を食べさせればいいので、大きな負担になっていないということだそうです。でもこれってあと10年、20年経っておじいちゃんおばあちゃんが天に召されて、パパとママが老人になったときは大変です。一人で二人を養う、もしおじいちゃんおばあちゃんがご存命の場合にはそれ以上の負担になるわけです。
働き手が少なくなった国家が取る一つの方策として他の国からの移民や出稼ぎを受け入れることがありますが、この情報統制が厳しい国へ働きに来たいと思う外国人はどれくらいいるのでしょうか。

でも中国が立ち直らない本当の理由は別にあります。いま中国の労働人口の大半が、中国がある程度豊かになってから生まれて、ずっと経済的な成長を続けてきた時代の人間です。また、仕事がなくても明日から路上生活者になるという危機感はありません。実はこの点は日本も同様で、日本人は貧しくなった、生活が苦しいと言っても、デモが起こるわけでもなく、なにかのムーブメントが起こるわけでもありません。ほとんどの日本人が仕方がない、どうしようもないと現状を受け入れています。(現状を受入れちゃいけない永田町の人たちが一番受け入れているように見えるのもこの国の大きな問題ですね。)
私は中国企業に勤めていたこともあり、中国人の若者と接する機会も多かったのですが彼らの多くからから受けた印象は、問題をただ右から左へ流しているだけといったものでした。
おそらく彼らは「今のままでいいや」と思っているいるのではないでしょうか。そしてこれから先もそう思い続けるのではないでしょうか。

以上のようなことで、中国の復活は多分ない、日本よりひどいことになるんじゃないかと思っているのですが、一方で先進技術の導入は目覚ましく、無人タクシーが普通に街中を走っていました。「これが日本でも導入されれば、下衆な個人タクシーの運転手にあたって嫌な思いをすることもなくなるな。」なんて思いました。

出張の最後に香港の空港に向かうため広州から高速鉄道で香港九龍に入って空港までの鉄道に乗り換えました。乗り継ぎのため駅と駅をつなぐ通路を歩いているときに香港島の夜景が見えたのですが、LEDでより夜景が煌びやかになったとはいえ、それは昔から私の記憶にある懐かしい夜景と同じものでした。中国が今後どうなっていくかはわかりませんが、香港の夜景は変わらないままでいて欲しいです。





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