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はじめてピッチする人に読んでもらいたい。ピッチのコツ。


自己紹介

はじめまして、かさいと申します。僕は現在、株式会社batton(https://batton.co.jp/)というDX、AI企業の創業メンバーとして2019年11月から参画させてもらっている。battonとの出会いは、代表の川人とアルバイト仲間でだったことが理由。学生時代、新聞勧誘のアルバイトをお互いしていて、楽しい学生時代を過ごしていた。その際、いつか一緒に会社をやろうという約束をしていたらしいのだが、僕はすっかり忘れていた。battonに誘われるときに、「あのときの約束覚えているよな?」と言われて、全く覚えていなかった僕は、さすがにそれは申し訳ないということで、battonに参画することを決めた。あれからもうすぐ丸4年。会社として海外進出も積極的に進める中、国内でのピッチやアクセラレータープログラムで投資家との接点を持たせてもらう機会が増えた。僕がピッチしたり参加したプログラムを具体的に紹介をすると、

2020年東邦ガスのアクセラプログラムに参加
東邦ガスが東海エリアに展開する企業に対して、DXを仕掛けるプログラム。数ある応募の中から3社に選ばれた。

スタ★アトピッチJapan登壇企業とのオープンイノベーションでのピッチ
きらぼし銀行、横浜銀行、東日本銀行が主催するスタートアップ支援プログラムイベント。90名の投資家、大手企業の前でピッチを実施。

3段目真ん中のFAXバスターズがbatton

に出ている。おかげさまでさまざまな反響をいただき、このあと、東海地区の医療機関様とお仕事をしたり、金融機関との連携ができるようにもなってきた。

FRONTIER PITCH TOKYO for Startupsに参加

上段左から2番目の「FAXバスターズ」がbattonのロゴ

そして、2023年9月15日に大きなイベントでピッチをするチャンスをもらった。それはFRONTIER PITCH TOKYO for Startupsというもの。主催はプライムのサンフロンティア不動産株式会社。全体のプランニングはこれまた東証プライムの株式会社ベクトルというプライム上場企業がタッグを組んで企画した大きなイベントだ。このピッチの審査員は早々たる顔ぶれだった。

サンフロンティア不動産株式会社
代表取締役社長 齋藤 清一様

サンフロンティア不動産株式会社
執行役員 小田 修平様

株式会社ベクトル
代表取締役会長兼社長 西江 肇司様

Z Venture Capital
代表取締役社長 堀 新一郎様

Skyland Ventures
General Partner 木下 慶彦様

株式会社StartPass
代表取締役CEO 小原 聖誉様

East Ventures 
金子 剛士様

株式会社ウツワ
代表取締役 ハヤカワ 五味様

渋谷区議会議員 
橋本 ゆき様

IVS株式会社
CEO 島川 敏明様

やっぱり有名な人たちなので、とても緊張した。しかも今回のピッチはいつもとは違う。優勝者にはものすごいプレゼントがあった。それは渋谷約80㎡のオフィスが1年間無料。1,140万円相当がタダなのだ。そして、沖縄でのリゾート券もあり、battonメンバーからの期待はマックスに達していた。社員のみんなはリアルタイムでピッチを聞いてくれていたようだ。その期待を受けて、今回はピッチを100回以上も練習したし、スライドの内容はもちろん、頭の中にすべて叩き込み、サラでも言える状態になっていた。

1年間渋谷オフィス無料で使える特典(1,140万円相当)→欲しかったー!

ピッチが始まった。さて結果は!?

ピッチが始まった。そして、僕の順番。開口一番、「FAXなんてもうオワコンだと思っているみなさん…そうなんです。年平均11%で成長しているんです!」という掴みから入り、会場は一気にどよめく。そして、審査員は携帯で画像を撮影して、なにやらスマホを触っていた。(あとから知ったことだが、この画像をX(旧Twitter)で引用リポストしてくれていたということで、手ごたえはあった。

補足をしておくと、FAX市場が伸びているというと違和感があるかもしれない。しかし減っているのは、あくまでも紙。現在、eFAXクラウドFAXによって、全世界でのFAX流通量は上がっている。

ということで、この流れで、ピッチは進み、すこしカミカミなところもあったが、時間も5分ぴったりで終了。やり切った形で結果を待つことになったが、最終的に結果は8社中、6位と惨敗。僕の力不足が露呈された。そしてbattonのみんなはslackで励ましてくれたが、渋谷オフィスは夢と消えた。もしよければ、イベント当日のy-tubeがアーカイブで残っているので、視聴してもらえるとありがたい。

優勝はしたのは、株式会社Solafune(https://solafune.com/ja)。事業内容は衛星データ解析コンテストプラットフォーム。今話題のディープテックだ。社長はアメリカからの戻ってこれないということで、社長室 政策企画課 政府渉外役の前原さんがピッチをしていた。ツカミは、衛星を使ってコンゴの違法採掘をなくすという話から。スケールが大きいと感じた。

ちなみに、前原さんとはピッチ前後で話をしたが、22歳とは思えないご経験を積まれていて、顔つきは修羅場をくぐってきた感が存分に出ている。しかし、謙虚でとても素敵な方。ソラフネ以外でも自身で会社を持ち、テクノロジーで、世界のテロをなくしたいという強い想いを語っていた。高い志だ。

経験だけでは終わらせない、ここから何を学ぶかである

とはいえ、今回のピッチ登壇で学んだこと。改めてピッチとは何かを考える
きっかけを作ってくれた。ピッチは以前からある程度、型があることは理解をしていたが、次回は勝ちたい。もっと洗練されたピッチができるようになりたいということで、研究を重ねた。そこで分かったことがある。ピッチは事業を成功させる登竜門であると同時に、ピッチを磨きこむこと=ビジネスを創ることに精通することが分かった。ビジネスを創り、そのエッセンスを分かりやすく、短い時間で分かりやすく伝えるのが、ピッチなんだと。

そこで考えた。どうせなら、このエッセンスを共有して、これからピッチをする人たちの役に立てればうれしいと。ここから書く内容が少しでも読者の役に立てると幸いである。

ピッチのコツを考える

・ピッチとは何か

ピッチの語源は英語のpitchで「投げる」「設営する」「調節する」「設定する」という意味である。

・ピッチとプレゼンテーションの違い

プレゼンテーションは主に「特定の顧客に向けて行われること」が多いのに対し、ピッチは主に「初めて会う相手や不特定多数の人に向けて行われること」が多い。また、ピッチは多くの場合その分野に興味・知識がない相手に向けて行われるため、共感しやすいことや内容がわかりやすいこと、簡潔であることが求められる。

・ピッチにおいて重要なこと

-ピッチは相手に優れたストーリーを伝えること
例えばショートピッチの場合、限られた時間で多くを語るのは不可能だ。であれば、聞き手のインサイトを揺さぶり、記憶に鮮明に残ることが大切だ。人の脳は、点と点を線にして覚える特徴がある。であれば、その特徴を逆手にとって 進めよう。

-課題に対してなぜ自分が取り組むのかを伝える
次に重要なのは、必然性だ。なぜ、いま、自分がこの課題に向き合う必要があるのか、ここに理由があればあるほど、聞き手はそのピッチに心惹かれる。

-なぜいまなのかを伝える
これまた必然性だ。数年後でもなく、数年前でもなく、なぜいまなのか?具体的な事実やリアルな声を証拠に伝えると良い。人は明確な理由と締め切りに弱い。

-ピッチは事業の氷山の一角である
強い思いをもって事業を立ち上げていれば、伝えたいことはたくさんあるだろう。一晩中、自分のビジネスの話をしていても飽きない。それが起業家だ。しかしピッチという数分のチャンスで全部を伝えるのは無理だ。なので、絞り込まれたエッセンスを伝える必要がある。ではそのエッセンスをどう絞り込むか?それは、事業に対してどれだけ多くの仮説検証を繰り返し行なうこと。ユーザーの声を聞きまくり、壁打ちをしまくって、戦略解像度を上げる。その内容をピッチに反映させる。

-大風呂敷を広げず事実ベースで伝える
聞き手、特に投資家は多くのピッチを聞いている。なので、常に性善説と性悪説を上手く使いこなしながら聞くプロだ。よくあるケースは事実や実績がない中で、思いや市場の大きさだけで、仮説検証をせず曖昧なままビッグマウスだけで、乗り切ろうとするピッチ。これは通用しない。下手に大風呂敷を広げるのではなく、しっかりと戦略解像度を上げてプロにも納得してもらえるように事実ベースで進める必要がある。

-自分が自分のビジネスの一番のファンになる
自分自身がそのビジネスに一番惚れ込み、主観的にも客観的に納得性のある状態でのぞむ。そうなるまで誰かとの壁打ちを繰り返し、ピッチを磨きこみ練習する。

-エモさを残す
起業家がビジネスを立ち上げて、ピッチイベントに出るレベルであれば、そのビジネスの秀逸性や実現度も高いはず。聞き手は、そんなレベルの高いビジネスモデルとピッチをたくさん聞いている。つまりレベルが高いということだ。そこで何が必要か。それはエモさだ。ハイレベルな争いの中で、頭一つ出るには、エモさで感情を揺さぶることが求められる。では、エモさとは何か、社会課題の大きさや原体験。最近はディープテックなどがどんどん立ち上がっているが、ディープテックは解決したい社会課題の規模が大きい。この時点で投資家からの評価は上がる。

・ショートピッチ

ピッチは時間が短くなればなるほど、難易度が上がる。これは、伝える中で無駄をとにかく省き、内容を洗練させる必要があるからだ。それぞれのピッチによって目的とゴールが違うので、ピッチの場面になったら、ピッチの種類は?誰が聞き手か?一緒に戦うスタートアップはどんな会社か?を調べよう。その中でもピッチでメジャーなショートピッチについてまとめてみた。

-ショートピッチ(3分~5分)
各イベントや投資家向けに行うメジャーなピッチ。
1、タイトル/サマリー:一言でいうと何か
2、課題:どんな課題が生じている?事実ベースで
3、解決策とデモ:どんな解決策を提示する?
4、市場規模:どれくらいのマーケットか?
5、トラクション:実績は?
6、投資家が知らない事実:実はこんな事実がある
7、チーム:ボードメンバーの経歴、実績
8、競合優位性:他社にはできない何か
9、ビジネスモデル:どのように収益を上げる?
10、ビジネスの拡張性:どのように拡大していく?

短い時間ですべてを盛り込むのは難しい。現在の事業の状況から何を選択するのが、ベストかを考えてストーリーを設計する。ただ、インパクトが強いのは、投資家が気付いていない事実だ。ここは入れたいところ。

起業の科学 スタートアップサイエンスより

ピッチを磨くことはビジネスモデルを磨くことにつながる

ピッチは氷山の一角という内容を記載したが、表面的に第3者に情報を伝達する上で、そこには壁打ちと仮説検証を繰り返すことが求められる。そして、市場の大きい所に、リソースを展開して、参入障壁を何らかの形で上げる。これってビジネスを立ち上げて成功に近づく内容そのもの。

つまり自分の事業を成功させたければ、どんどんピッチに参加して、ぼこぼこにされながらも、洗練されていくことは必要なのではないか。であれば、起業家、事業家は積極的にピッチに参加していく中で、ビジネスモデルも磨けるし、投資家とのつながりも作れるというスパイラルができる。

これはつまり、ピッチのスキルだけを磨いても仕方がないということでもある。ビジネスの磨きこみをしまくって、その結果をピッチで伝えていこう。

その上で、積極的にピッチにエントリーをする。それが起業成功の道ではないか。


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