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【内定者エッセイ】今を貫く

日本SPセンター採用note編集部です。
このnoteは、22卒内定者の声をお届けする連載です。
内定者本人にエッセイを書いてもらいました。

第二弾は「今を貫く」です。
就活時代に考えていたことを正直にお話してくれました。


 

「学生時代に力を入れていたこと」、そんなの勉強に決まっている。 

 そう思っていたから、就職活動を理由に講義を絶対に休まない、という誓いを立てていた。大学は職業訓練校ではないし、学生の本分は勉強で、それ以外を一番に据えることなんて私にはできなかった。好きなこと、やりたいことを問われたって、今私がしたいのは研究で、就職活動を疎ましく思いさえしていた。

 でも、現実はそんなに甘くはなかった。先に就職活動を終えた友人からは、「ガクチカが勉強なのは普通すぎて弱いから書き直したほうがいい」と言われた。OB訪問や面接では、どんなに研究や、研究のために行った留学の話を事前に用意していても、たまたましていたテーマパークのアルバイトのことばかり訊かれた。こうした状況に諦めを抱いた私は、次第に、アルバイトのことばかり流暢に話せるようになって、大切な研究のことにはあまり触れないようになっていった。

 

 そんななか臨んだSPセンターの役員面談で、突然こう訊かれた。

 

 「あなたが研究している詩人について、ここにいる、そのことについて詳しくない人たちにもわかるように説明してください。」

 

 面接官の笑顔は、自分が研究している詩人のこと、そしてその説明のしにくさを知っていて、それでも訊いていることを物語っているように見えた。研究について聞いてもらえそうなことへのよろこびと、予想していなかった質問が飛んできたことへの焦りで、口のなかは急に水分を失って、カラカラになった。

 

 「やってみます」

 

 そう答えた私の声はきっと震えていただろう。面接官の反応を見ながら、いつも通り用意していた受け答えをかき分けて、ひとつひとつ頭のなかを探るようにして説明していった。面接では端的に答えることがいちばん大切だと言われていることは知っていたはずなのに、「もう少し話してもいいですか」と言っている自分がいた。

 

 他者に評価付けされるために考え出した好きなことではなく、自分が今本当に好きなこと、夢中なこと。多くはないけれど、それを面白がってくれる人がいるのだと知った。

 

 今を大切にしながら就職活動をしてもよいのだ。数か月後社会に出て、何ができるか、何に向いているかは、自分自身にだって未知数なのだから。


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