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メーガン妃と小室圭氏と君主制

島国でアメリカ合衆国の同盟国で、君主制を長く続ける民主主義国家という共通点を持つ日本とイギリスにおいて、皇室・王室を巡る騒がしい状況がここ数年続いています。

日本は眞子内親王の婚約とその相手の小室圭氏の問題、イギリスはヘンリー王子の結婚相手であるメーガン妃とその二人の王室離脱について、ずっとマスコミのネタになっています。どちらもスキャンダル的な、タブロイド紙と女性週刊誌のターゲットになっていますが、問題はもっと根深い気がします。

問題そのものは私個人としては特にどうということもないと言うと角が立ちますが、良い悪いを言ってしまうとなおさら角が立つのでとりあえずここはスルーします。

しかし、女王・女系でもOKなイギリス王室が男子継承に困っていない一方で、男系継承が絶対で皇室典範により女性天皇も認められない日本の皇室の男子継承が綱渡り状態なのは皮肉なものです。

日本の天皇・皇室は権威や権力がそれまで以上に高まると、その後に危機に見舞われてきました。

古くは大化の改新(乙巳の変)で蘇我氏を打倒して天皇(大王)が中心となる政治体制が確立されたと思いきや、数十年後に壬申の乱が起き、甥の大友皇子を打倒した大海人皇子が即位しました。

平安時代後半には藤原氏による摂関政治から、治天の君と言われる天皇家(皇室、王家)の家父長が院政を行い、権力を拡大させたと思いきや、武士が台頭し源氏・北条氏による鎌倉幕府が始まりました。さらには承久の乱によって三人の上皇が流刑に遭いました。

14世紀前半には後醍醐天皇が鎌倉幕府を倒して建武の新政を始めた直後に、やはり武家にひっくり返され、さらには南北朝に分裂する始末です。

その後、室町時代や江戸時代を通じて天皇や皇室の権威や権力はかなり低下していましたが、幕末にペリー来航から急速に天皇や京都の朝廷の影響力が強まりました。明治維新を経て大日本帝国が成立し、さらに昭和に入って統帥権干犯問題や天皇機関説批判で天皇の不可侵性が高められすぎた後に戦争に敗れ、場合によっては天皇制廃止もあり得ました。

自ら権力を集中し高めようとしたケースもあれば、周囲・臣下に利用されるケースもありますが、天皇制の危機を招かないためには権力も権威も程々にしておくしかなさそうです。

現行憲法では天皇は権力を持ちようがありませんが、権威、特に政治性を帯びない権威であれば高めることが可能です。権威も自ら進んでではなく、国民側が敬いすぎれば勝手に強まります。

平成や令和の時代においては、天皇や皇室に関しての言及に気を遣うことが以前よりも必要とされているようにも思えます。昭和の後半であればもっと気軽に口に出来たような気がするのですが、どうでしょうか。昭和天皇をネタにするようなことがありましたし、それに強烈な反応をするのは右翼団体くらいでしたが、今の時代では即炎上です。

自分が敬意を払うことと、他人に敬意を強制することは違うでしょう。大久保利通の孫で後に歴史学者になった大久保利謙は、著書において学習院に通っていた昭和天皇が同級生に「天ちゃん」と呼ばれていたと書いていました。

敬意を持つことは良いことでしょうけれど、あまりにやり過ぎて天皇の権威が高まりすぎると、良くない結果を招きそうな気がしてなりません。

スキャンダルだって今に限らず、戦前には宮中某重大事件がありました。後の昭和天皇と香淳皇后の婚約に際し、皇后の実家に判明した色覚異常の遺伝が皇室に伝わるかも知れないということで、当時の政界で大問題になりました。これに比べたら小室圭氏の問題なんて些細なことでしょう。

イギリス王室だって、16世紀にヘンリー8世の離婚問題がきっかけでローマ教会との決別とイングランド国教会設立にまで至りました。近年でもエドワード8世が離婚歴のある既婚女性と結婚するために退位した大スキャンダルもありました。これらに比べたらメーガン妃とヘンリー王子のアレコレも大したことはありません。

歴史の長さを誇り、これからの永続も望むのであれば、それこそ過去の歴史との比較をしてみたら、もう少し問題への大騒ぎや大仰さも減るのではないでしょうか。

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