ウェブサービスの制限と利益

TwitterやInstagramなどのSNSでの誹謗中傷や犯罪行為などに関して、サービス提供者側の一層の規制強化は社会的に望まれることでしょう。事業者としては一銭というか1セントの利益にもならず、ただ費用だけがかかって使いづらくなる対策ですが、社会的影響力の強さや世間からの批判を考えるとせざるを得ません。

リアルな人間が投稿やそれに対するコメントの全てをチェックしていくのは物理的な速度としても、金銭的な理由としても不可能です。となると文章に含まれる文字や画像を解析して自動的に処理して弾いていく仕組み頼ることになりますが、当然ながら100%の精度で的確に処理できるわけではありません。

そうなると、問題ない投稿をアウトに判定してしまう可能性と、問題ある投稿をセーフと判定してしまう可能性が出てきます。なんかPCR検査の偽陽性と偽陰性の関係みたいな話ですが、ITサービスに限らず、何かをチェックする仕組みでは必ず直面する難点なのでしょう。

そうやって使いづらくなるとまた別のITサービスにユーザーが逃げかねないわけですが、成功するサービスは始めはそういった使いづらい制限はかけません。SNSだけではなく、YouTubeも最初は著作権侵害に対しての反応は鈍いものでした。

最初は制限を緩く、というか法的な問題などうっちゃってひたすらユーザー体験を向上することだけに特化してサービスを一気に広げて多くのユーザーを獲得し、利益が出てから社会的な貢献や義務を果たすようになる、というのはたいていのウェブサービスに共通するルートだと思います。

こういったことが許される土壌の国(例えばアメリカ)と許されない土壌の国(例えば日本)では、ウェブサービスの成長度合いも異なるでしょう。今、そういう世界的に広がるサービスをアメリカ以外で大量に生み出すのは中国くらいでしょうか。TikTokはその代表格ですが、早くも児童への性被害などで問題視もされています。これはある意味、まだ制限が緩い証拠でもあります。中国のサービスは中国政府・共産党批判の検閲が出来れば国内では生き残れるでしょうから、TikTokを運営するByteDance社は世界市場での生き残りのための必要な制限と、中国国内での事業運営は切り分けるっぽいです。

ByteDance、TikTokを中国事業から引き離す動きを強める
https://iphone-mania.jp/news-268356/

これは2019年11月の話ですが、つい最近のニュースとしてはディズニーからヘッドハントした人物をTikTokのCEOにするそうです。

TikTokのCEOとしてByteDanceがDisneyの幹部を引き抜き
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2005/19/news055.html

この2つのニュースはリンクしていると考えてしまいます。今後も似たようなことが中国発のウェブサービス・プラットフォームで起きるのではないでしょうか。世界から利益を集めて中国国内では政府に協力する(せざるを得ない)IT企業に対して、他の国々の政府や企業は太刀打ちできるでしょうか?

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