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ビッグイベントの放映権仲介ビジネスの曲がり角

今回の東京オリンピックは、始めから準備していたのか無観客試合が増えたからなのか、基本的に全ての競技でインターネットでのライブ中継が行われました。日本語の字幕や実況・解説が無いものがほとんどでしたが、そのスポーツに詳しい人ならそれらが無くても、映像だけでも楽しめるものです。

その一方、これまでの五輪同様でNHKと民放各局での放送もありましたが、視聴率が必要とされる以上、どうしても
「日本選手この後登場!」
という煽りで画面を持たせる時間が長くなってしまいます。

バラエティ番組でそんな焦らしをされるくらいなら気にしませんが、生放送のスポーツ中継やニュース番組などで、もはやテクニックとも言えないそんな手法を使われると観る方は不満を抱えながらも観ることになります。

それでも観てもらえるなら万々歳、ということだったのでしょうけれど、既にネットでのライブ中継がある以上、ネットで観たいものだけ観ようと思った人はテレビを観なくなります。

むしろ、ネットで観ることが出来るリテラシーの持ち主は、既存テレビ局のターゲットから外れているのかも知れません。ネットよりもテレビが第一選択肢となる視聴者だけが顧客と見なしているのであれば、次のパリ五輪の時にはテレビでの五輪中継はどうなっているでしょうか。

スポーツのビッグイベントは3年後のパリ五輪よりも、来年のカタールワールドカップの方が先に来ます。そのカタールワールドカップでは、放映権購入の交渉がまとまっていないそうです。

放映権料が日本が初めて出た98年大会の数十倍にも膨らんでいるとのことですが、無料放送のテレビ中継ではもはやどう転んでも赤字になります。仲介している電通も悩みどころでしょうけれど、FIFAが強欲さを捨てるとも思えません。ギリギリまで交渉が続くのか、誰かが折れて妥結するのか。出場が決まった後だとさらにぼったくってくるような気もします。

もし日本国内でのテレビ放映権が獲得できなければ、日本のサッカーファンがワールドカップを観ることが出来なくなります。そうなった場合、大半の人は文句を言いつつ諦めるでしょうけれど、なんとしても観たい人は非合法というかルールを逸脱した形で、海外のネット中継を観ようとなんとか工夫するでしょう。

それを推奨するわけにはいきませんが、もしその方法でしのげたとしたら、次の放映権料は下がるはずです。あるいは、DAZNのような有料ネット媒体で買うかも知れません。そうなった場合も、既存のテレビ放送の時よりは視聴者数は激減しますが、サッカーファンなら観るでしょう。

国民的ビッグイベントだから、五輪でもワールドカップでも放映権料を吊り上げられるだけ吊り上げる、と言うやり方は、いずれ廃れるでしょう。多額のお金を払える先進国はどこの国でも人口が頭打ちで、テレビ局はネットに視聴者の時間を奪われ、広告の売上も苦しんでいます。どこかでテレビでの無料放送が当たり前では無くなる時代が来るはずです。

さしあたっての問題は来年のカタールワールドカップですが、今回の東京オリンピックでいっぱい稼いだはずの電通さんが自腹を切ってくれても良いんですけどね。

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