中国の独裁政権支援はかつてのアメリカの姿

中国政府が発展途上国などの独裁政権を支援し、民主化を求める反政府勢力の弾圧を手助けしているという非難は、アメリカ始め西側諸国から多く出ています。

実際、中国の政府、国営銀行などから途上国への支援として多額の資金が融資され、それが債務の罠として受けた国の重要な資源、施設などの利権を奪っているという非難の通りなのですが、じゃあなんで融資を受ける側がそんなことを許しているかというと、その国の政府を掌握している独裁権力は、その資金を自身や親族が掠め取っているわけで、国家の重要施設や資源を分捕られても問題ないのですよね。

そのため、そういう独裁政権に反対する人たちは政権によって弾圧されます。その弾圧に必要な物資や武器も、中国からの資金が巡り巡って使用されている可能性もありますから、間接的に中国が民衆弾圧に加担している、という見方も出来るわけです。

とは言え、この「資金援助国が途上国の独裁者による反政府勢力の弾圧を助ける」という構図は、今の中国だけの話ではないのが問題で、冷戦時代にアメリカがまさにやっていたことです。

イラン、フィリピン、南ベトナムあるいは韓国でも同じですが、独裁者が強大な権力を握り、反対する者を合法非合法含めてあらゆる手段で抑圧していました。

もちろんアメリカにも正当かどうかはともかく独裁者を支援する理由があって、冷戦期は東側つまりはソ連の影響を東西両陣営のどちらにも属していない国から排除しないといけないため、貧しき者・持たざる者が共感しやすい共産主義思想を持つ反政府勢力の弾圧にアメリカが手を貸す構図になるのは分かりやすいでしょう。もちろん非難されてしかるべきではあるのですが。

イランはイスラム原理主義勢力に、フィリピンはピープルパワーによって独裁者が追い出されたため、一様に反ソ連のためのアメリカ支援ということでは無かったのですが、国盗り合戦のような冷戦時代においては、アメリカの言うことを聞く独裁者はアメリカにとって重要でした。

そして冒頭の話に戻りますが、現在の中国が独裁者を支援するのも同じ理由で、国際政治において中国寄りの国家を増やすために違いありません。中国が主に欧米勢力に批判され押されている状況になっても、中国の肩を持つ国の数が多ければ、結局は欧米による中国封じ込め政策は上手く行きません。中国を支持する独裁国家が、中国への資源の輸入元と、中国製品の輸出先になってくれるからです。

もちろん、世界はそんな単純な仕組みだけで動いてはいませんが、中国にしてみたらアメリカの批判は、
「昔お前らがやってたことやろ」
と反論したくもなるでしょう。

ただ、そういう反論をしてしまうと、それはそれで中国自体が非道な独裁者を支援していますと自供することになってしまいます。ですので、そうは言わずに、「現地の正統な政府を支援しているだけ」という建前を続けるしかありません。

いずれは、中国の支援が途切れて「金の切れ目が縁の切れ目」になるか、独裁政権が打倒されてしまうかによって、中国寄り国家ではなくなるのでしょう。既にスリランカはそうなりましたし。

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