短期的利益を追う上場企業の失敗が市場を活性化させる

上場企業が株主配当のために短期的な利益を追うことのみ考えてしまい、長期的な計画に基づく経営が出来ないという問題は20世紀の頃から指摘されていました。

イノベーションのジレンマは成功した企業が新しいチャレンジを出来ない説明でもありますが、短期的利益を追わねばならない上場企業には尚更起こりやすい事象でしょう。

それでも生き残る大企業もあれば、失敗して潰れたり事業規模が小さくなる企業もあります。

株式会社や資本主義の考えから言えば、株主の為に経営するということは当然ではあるのですが、そのために大企業が長期的に利益を稼げなくなる、ということは、その企業の関係者にとっては不幸ですが、社会全体から見ても不幸かどうかは分かりません。

大企業が失敗することで、生まれた隙を中小企業やベンチャー企業が生き残れる糧に出来るという見方も出来ると思います。

そしてそれは、市場全体から見れば新陳代謝が行われているとも言えます。

大企業が長期的な視野に基づいて事業運営できない一方で、中小企業が株主配当の圧力にさらされずに、その分を将来のための研究開発に当てることが出来ます。そのためには、中小企業の株主(たいていの場合は創業者一族)兼経営者が、個人的な利益よりも会社の発展を優先させる必要がありますが。

そう考えると、株主からの圧力の強いアメリカ企業の方が、そこまでではない日本企業と比べて大企業における入れ替わりが早いのでしょうか。

80年代初頭に「ジャパン アズ ナンバーワン」と称された日本型経営は、バブル景気とその崩壊によってほぼ消滅しましたが、大企業が生き残りやすい素地は残ったままです。株主からの圧力は、政府、マスコミ、世論によってはねのけやすいかと思われます。株主が企業に圧力をかけると「金の亡者」呼ばわりされるのは日本では日常的です。

そのために市場において企業の入れ替わりが出来ていないことが、失われた30年の理由の一つになっているかも知れません。

シェアを持っていて資本も持っていて人材も持っている大企業が、短期的な利益も長期的な計画も十分に満たした経営を行えるとしたら、逆に市場にベンチャーや中小企業の余地がなくなります。

非効率的・非合理的な経営を大企業がやってくれれば、隙間がたくさん生まれるということになります。ただ、現実は中小企業も十分非効率的・非合理的な経営をしてしまいます。

人材募集の点で大企業にブランドイメージや福利厚生では負けますが、逆に手厚く出来るところもあるでしょう。経営者が短期的利益を最重視しなくても良いことで、従業員へのプレッシャーも大企業とは異なります。もちろん、利益が出ていればの話ですが。

創業オーナーや株主兼経営者が無茶なことをしやすい環境でもありますが、逆に言うと無茶をしなければ大企業の隙間をかいくぐって生き残り、大きくなることも出来る余地があるわけです。

さて、70年代から80年代にかけて日本企業はアメリカ企業に覇権をかけて挑み、結果としては様々な原因から敗れました。今、その地位には中国企業があり、両国政府を交えての激しい競争(もしくは戦争)を行っています。

アメリカ企業は株主のプレッシャーにさらされる一方で、中国企業は共産党・政府の介入リスクが存在します。民間レベルではいざという時だけでしょうけれど、地方政府による国営企業では庇護とトレードオフの汚職のために非効率性が存在します。

中国が急激な人口減少に入り、また習近平独裁体制による経済の悪影響が出始めるまで、アメリカが覇権を握り続けていればアメリカ企業の勝ちと思いますが、果たしてどうなるでしょうか。

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