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NFTによる古本流通とサッカー選手の移籍への応用の可能性

今年前半のIT系ニュースで話題になったNFT(非代替性トークン)は、早くも詐欺が横行し始めているようです。アーティスト本人ではなく赤の他人がアーティストを名乗り、NFT付きの作品を販売するという手法や、取引で入力されたクレジットカード情報や暗号資産のアカウント情報を盗むやり口での詐欺が多いそうです。

NFT自体はアナログの現物が存在する芸術品や宝石などに付与されることもありますが、手っ取り早いのはデジタル作品と紐付けて販売する方法です。NFTを元にそのデジタルデータの鑑賞や利用を認めれば良いわけです。

NFTを巡る詐欺やその対処はこれからさらに進んでいくでしょうけれど、多くの詐欺と同様にイタチごっこの繰り返しになるんじゃないでしょうか。

ところで、NFTは今のところ、高額な一点もの、あるいは少数のものだけに利用されていますが、この世に一つしか存在しない芸術作品以外でもNFTを利用することはできるはずで、一般的に中古販売ができない、オンラインでダウンロードした電子書籍、ゲームなどに使えば、それらを購入者が下取り、買取り、転売など出来るはずです。

電子書籍では読む権利を購入した後は、転売など基本的には出来ません。紙の本との大きな違いでもありますが、紙の本なら古本屋に売ることが出来ます。そして売られている古本を買うことも出来ます。

NFTで「読む権利」を他者に販売することが出来るようになれば、紙の本と同様になるでしょう。ただし、これだと新品の電子書籍を販売している著者・出版社・電子書籍プラットフォーム提供企業が得しませんので、NFTを使って中古売買した時に、例えば1%が著者・出版社・電子書籍プラットフォーム提供企業に入るようにすれば、中古売買を認める動機付けになるはずです。

もちろん、それだと中古売買によって値段が下がった分、新品の電子書籍が売れる可能性が減りますので、中古売買の場合は一部機能が使えなくなる・読めなくなるといった機能制限を付けても良いでしょう。紙の本が新品の本と比べて黄ばんでいたり、すり切れていたり、汚れていたり破れていたりするように、新品の電子書籍と中古品の電子書籍で差を付けるべきです。

ここまですれば電子書籍も販売側にとっても中古売買にメリットが出てくるでしょう。ただ、中古売買のためのプラットフォーム自体が必要になりますし、理想としては電子書籍プラットフォームのように分裂せず、一つの規格に基づいて売買できるようにしないと、多分誰も使わなくなります。いっそのこと、既存の電子書籍プラットフォーム自体が共通規格を採用して、同じ本は同じ電子書籍という扱いになってくれれば良いのですが。

中古売買時の価格の一部が著者に入るというのは、著作権の一部である追求権の理屈から法的問題は無いはずです。追求権は最初の販売時に安かった芸術作品が、後になって高騰した時にその一部が芸術家やその遺族に入る、という権利ですが、当然ながらごく普通の紙の本でそんな権利を適用することは出来ません。だからこそブックオフが全国に広まった時に出版業界や作家たちが非難していたのですが、NFTを用いた電子書籍の中古売買が出来るようになれば、中古売買時にチャリンチャリンとその都度、著作者の実入りがあるように出来ます。

実際にそんなことが出来るかどうかは、業界の偉い人が考えるでしょうけれど、そう言えば追求権ってサッカー選手の違約金に伴う連帯貢献金と似ていますよね。

連帯貢献金というのは、国際移籍をする選手が移籍に伴う違約金発生時にその一部を若い時期にプレーしていたクラブに支払うものです。人身売買のように聞こえますが、事実上の追求権を元の所属クラブに認めるようなものです。

サッカー選手の移籍と言えば、毎年2回の移籍市場オープン時期に活発になりますが、その移籍期限当日の時間ギリギリに交渉が妥結してFAXでサッカー協会やFIFAに書類が届く、というニュースが毎年のように出てきます。電子メールでは証明にならないでしょうし、郵送では間に合わないのでFAXになるんでしょうけれど、いっそのこと、サッカー選手の移籍市場自体もウェブ上にデジタル化して、NFTで結びつけてしまえば良いんじゃないですかね。

移籍証明書が発行された、発行していないというトラブルも無くなるでしょうし、クラブと選手の間に揉め事が起きて選手が勝手に移籍を決めてしまうということも無くなるでしょう。

ただし、先日の浅野拓磨とパルチザンのように、給与未払いとかクラブ側の問題が起きたときに選手の逃げ道が無くなってしまいますので、その辺もカバー出来るように選手給与の支払い状況もNFTと結びつけて……とか言っているとキリが無いですね。

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