クラブのアイデンティティ変更の問題
中国のプロサッカーでは今年2021年のシーズンから、チーム名称に企業名を入れないようにする規則を適用するそうです。
焦点:「チーム名は魂」、中国サッカーファンが変更に猛反発
https://jp.reuters.com/article/soccer-china-idJPKBN2A80S7
日本のJリーグでは90年代の途中に、クラブ名称から親会社の名前が入らなくなりました。この件では当時の川淵三郎チェアマンと、ヴェルディ川崎の事実上のオーナーだった読売新聞の渡邉恒雄氏との激烈なやり取りがありましたが、上記の記事によると中国超級リーグの変更については、サポーター側が色々反対しているようです。
Jリーグでは発足時の理念をある程度サポーターも理解していましたので、チーム名称に企業名が入らないということについては大きな反対は無かったと記憶しています。もちろん、読売ヴェルディのように全てのステークホルダーが納得したわけではないですし、今でも企業名が入るなら多額の金を突っ込みたい企業もいるでしょう。ただ、当面はJリーグにおいては変更はないと思います。企業名を入れることでの反発の方が、先述の中国の例とは逆に起こることは容易に予想できます。
むしろ今回の超級リーグでの反対運動は、ヴィッセル神戸のオーナーが楽天の三木谷社長に代わった後、チームカラーが変更になった時の反発が近いかも知れません。あの時は、クラブの経営がどうしようもなくなり、ホワイトナイトの如く買収して資金投下して救ってくれた三木谷氏に感謝しつつも、三木谷氏が好きなクリムゾンレッドにチームカラーを変更したことで、サポーターにとっては複雑だったでしょう。批判しすぎてやっぱり止めた、と三木谷氏に言われればクラブが潰れることもあり得る以上、我慢や納得して変更を受け入れる以外の選択肢が事実上無かったわけです。
あるいは、先年のFC町田ゼルビアの名称変更騒ぎも似ているでしょうか。こちらも、サイバーエージェントが買収して1年後に、藤田社長がクラブ名をFC町田トウキョウに変更し、エンブレムも変更するということでサポーターからの大きな反発を招きました。結局すぐに撤回・保留したことで収まりましたが、ヴィッセル神戸の時と異なりSNS時代であることもあって一気にTwitterなどで大騒ぎになりました。
神戸にしろ町田にしろ、運営会社が変わり、オーナーの意向やマーケティングなどのために手を入れようとするもので、リーグレベルの変更ではありませんでした。
リーグレベルの変更でちょっとした話題になったのは、昨年秋、JリーグがこれからのJリーグチームのユニフォームには、背番号・選手名のフォントを全クラブで共通化すると発表した件ですね。
こちらは私の個人的には視認性の向上のためなら賛成、としたnoteを書いたのですが、
先日、レプリカユニフォームの生産・発送が大幅に遅延していることでチェアマンらの謝罪がありました。
2021Jリーグオフィシャルネーム&ナンバー付ユニフォームをご購入いただいている皆さまへのお詫びとご報告
https://www.jleague.jp/news/article/19335/
よりによって一部クラブやサポーターらの反発を押し切って導入した件でやらかしてしまったわけですが、ただでさえコロナ禍で入場料収入を稼げないクラブにとっては、貴重な収入源であるグッズ販売でサポーターに迷惑をかけるというのはたまったものではないでしょうね。
日本のJリーグでのクラブ名称などの変更は、これら以外にも大小様々ありましたが、リーグ・クラブ・企業・サポーターらが不満はあれど折り合いを付けてやってきました。一方で、中国超級リーグでの今回の名称変更問題はどのように落ち着くでしょうか。
しかし、この超級リーグの一件では、企業側・クラブ側でのアクションがざっくり検索しても見当たりません。
日本よりも強権的な政治体制である中国ですから、中国サッカー協会の方針に対して、どこの企業も反対出来ずに受け入れざるを得なかったのかも知れません。表立って反発したところで、クラブ側はどうしようもないのでしょう。
中国に限らず、Jリーグだって先に書いた川渕・ナベツネ抗争の時も、ヴェルディが反発して脱退して新リーグを立ち上げようとしても何も出来ず、ともすればFIFAからペナルティを食らう可能性を考えれば、クラブ側は協会・リーグの意向に究極的には逆らえません。マリノス・フリューゲルスの合併のようにクラブ・企業側が強行したこともありましたが、2チームが0チームになるか1チームになるかの二択を提示されたら後者を選択するしかありません。
ともかく、最終的には逆らってもどうしようもないのは超級リーグでも同じでしょう。ファンらもブーブー言いながら結局は受け入れるしかないでしょうね。