広告による無料デジタル教科書・無料タブレットが出てきたら?

もともと日本では小学校・中学校での教育は無償とされてきました。そして最近では幼保無償化、高校の無償化(制限はありますが)が行われ、大学以外の教育課程での「授業料」は無料になりました。

しかし、高校での教科書代は有償です。教科書無しで授業を受けるわけにはいかないのですから、教科書代は授業料と一緒に考えるべきだと思うのですが。小中学校では教科書代は当然無償です。これはかつて裁判で教科書代が無償なのか有償なのかということで争われたことがあり、その問題提起から国会で法律が制定されて教科書代は無料となりました。

ただ、実際には副読本や給食費や制服代などお金は必要なので、学校でかかる費用が全て無料になったわけではないのですが、義務教育ではない高校ではさらに教科書代は有償ということになっています。

この辺は今後どうなるか分かりませんが、税収と少子化のバランスによっては高校での教科書代も無償化を訴える政治家が出てきそうな気がします。

それはともかく、これらの有償無償の教科書というのは全て紙に印刷されたいわゆる普通の昔ながらの形態の教科書です。デジタル教科書は無料ではありません。そもそも紙の教科書に置き換わるものではなく、紙の教科書と併用でだったら使って良いよ、というルールとなっています。

この「デジタル教科書」の導入が大変なのは、必要なタブレットを誰が用意するのかという問題がある上に、そのタブレット上で使用するデジタル教科書自体の費用が税金ではなく生徒負担になっているところも大きいはずです。

ただ単に紙の教科書のデータをデジタル化するだけなら、リフロー型にしろ固定型にしろ電子書籍化すればいいだけで、それを読むだけならタブレットの性能的には大したものである必要はないので安く準備することは出来なくはないでしょう。

しかし、せっかくのタブレットですから双方向な学習、反転授業、音声読み上げ、あるいはITそのものの理解にも使えるようなタブレットを求めるとなると、スペックがギリギリのものだと使用時にストレスを覚え、あるいは動作不良を起こしてしまうかも知れません。そうなると「紙の教科書の方がいい! デジタルは糞!」という人が出てきてしまいますので、何のためにデジタル教科書やタブレットを導入したのか意味が分からなくなってしまいます。

そうならないように、となると比較的高価なタブレットが必要になってしまいますが、最近はAppleが廉価版とも言うべき無印iPadを出しているので、性能的にはそれを使えば十分な気がします。それでも税込4万はしてしまうので紙の教科書とは比べものにならないほどの負担感が出てしまいますが。

そして何とか手に入れたタブレットも数年たてば使い物にならなくなります。AndroidタブレットやWindowsタブレットに比べるとiPadの方がまだマシだとは思いますが、それでも10年は持ちません。経年劣化による故障よりもOSにおけるセキュリティのサポートがされなくなります。教育機関向けに機能制限した上でセキュリティをメーカー側がサポートし続けるような仕組みがあれば、もっと長い期間で使い続けられますから、学校や自治体レベルで費用負担して購入するということもあり得ると思いますが、現状は難しいでしょうね。

そうなると費用負担が各家庭に重くのしかかりますが、
「このタブレットやデジタル教科書自体の費用をこちらで持ちますから、その代わりに広告を表示させてくださいね」
とかいう企業が出てきたりするんじゃないでしょうか。

さすがにギャンブルやアダルトコンテンツの広告が載せられるわけはありませんが、教育関係の企業ですとか、あるいは子どもへの訴求力が高いゲーム・おもちゃ・お菓子といった企業であれば広告を出したいところもあるのではないでしょうか。

もちろん、「学校で使うタブレットやデジタル教科書に広告を載せるなんて言語道断だ!」という反発は目に見えていますが、もし、デジタル教科書やタブレット利用による教育効果が高く、費用を負担できる家庭と出来ない家庭での教育格差が顕著に表れた場合、無料タブレット・無料デジタル教科書の利用を否定し続けることが出来るのでしょうか?

デジタル教科書やタブレットを使っても大して効果が無いのであれば格差も出てこないでしょうが、そもそもじゃあ紙の教科書でいい、という話になってしまいます。本当に効果があるのであれば、親の経済状況がダイレクトに教育格差に反映することになります。買えない人・負担できない人に対してのサポートは最優先で考えるべきだと思いますが、そもそも何のためのデジタル教科書なんでしょうね。

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