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世界へ ~WSC2022 SE日本代表の挑戦~

サービスコンクール archive

会報誌「HRSnews」2022年秋号他に掲載された、技能五輪国際大会エキスパートを務める細野 晃一さんと、代表選手である杉浦 悠月さんのエピソードを時系列でご紹介します。今大会は新型コロナパンデミックと世界情勢の混乱の中での臨時開催となり、想像以上の大変なご苦労がありましたが、世界を舞台に貴重な経験を持ち帰ってくれました。
そしてその経験は、2024年9月開催の「WorldSkills Competitionリヨン大会」、その後のHRSサービスコンクール出場選手はじめ、料飲業界にも刺激を与え道を開いてくれました。今後コンクール出場を目指す方、企業の教育担当の方のご参考にご紹介します。

*技能五輪国際大会(WorldSkills Competition)のご紹介はこちらから


「WorldSkills Competition 2022 Special Edition」レストランサービス職種(以下、WSC2022 SE)が、ルツェルン(スイス)で2022年10月に開催が決定いたしました。エキスパートを務める私と選手の2名で大会に参加をしてまいりますが、その前にこの場をお借りして、これまでの大会の経緯、競技についてなど、現状お伝えできる点をお話しさせて頂きたいと思います。

■延期、中止を経ての代替え大会の開催

この度のWSC2022 SEは世界15か国にて開催されます。全62職種の競技に世界約60か国、1,000名を超える選手が参加し日頃鍛え上げた技を競い合います。私たちのレストランサービス職種の競技は10月23日から4日間の競技日程で開催されます。

本来、この大会は今年の10月に中国・上海で開催される予定の「WorldSkills Shanghai 2022」が、長引くコロナウィルス感染症の影響で中止になったことから、その代替え大会として急遽開催が決まりました。2020年の技能五輪全国大会にて金賞を受賞した杉浦選手が、本来なら2021年の上海大会に参加する予定でしたがコロナのため1年延期になり、さらにその2022年の上海大会が中止になるという経緯をたどり、今回の大会WSC2022 SEに参加する事となりました。

目標が定まりきらない中でも日々の訓練を続けて努力をしてきた選手のためにと、大会の主催者をはじめ各国の協会や関係者が一つになり作り上げてくれたのがこの大会です。5月31日の上海大会中止の一報から、半年足らずでこの様な世界的なイベントを作り上げていくということ自体、近くで見させていただいた者として、大袈裟でなく驚きと共に感動を覚えました。一度は諦めた大会ですが、国内のみならず世界中の方々のお陰で晴れて出場できることとなり、私としましても選手には悔いなく力を発揮してもらえる様にしっかりとサポートをして大会に臨みたいと思っております。

■未だ発表されない競技課題

8月31日現在、今大会の競技課題の詳細は公表されておりません。7月の上旬に正式にルツェルン(スイス)での大会実施が決まり、会場はメッセ・ルツェルンという展示場で行うとの発表がありました。急遽決まった大会でもあり競技に関わる全ての準備を、限られた時間の中で行っていることもあり、1か月前位まで公表が出来ないのではとの情報もあります。その様な中、先日、大枠の内容だけ職種の責任者から公表され、競技4日間で4つのモジュール分けがされております。
・ ファインダイニング
・ カジュアルダイニング
・ バンケットサービス
・ バー&バリスタ 
となっており、前回のカザン(ロシア)大会に近いモジュール分けとなっています。詳細が解らない中、手探りではありますが前回大会の課題や審査のポイントなどを参考にして準備だけはしっかりとしていきたいと考えております。

■挑戦する場として

皆様もご存知の通り昨年度より技能五輪国際大会、今年度より技能五輪全国大会もHRSが管理、運営を行う事となりました。HRSサービスコンクール、技能グランプリも加えまして各年代に亘って、我々サービスパーソンの技能を競える場がHRSのもとに整いました。
その様な中、技能五輪国際大会は23歳以下の若者が世界を目指せる大会として今後より大きな価値を持っていくのではないかと感じております。今回、選手と共に精一杯大会に挑戦してまいります。その結果として、今後業界での活躍を志す若い方はもとより、ホテル、レストランの諸先輩方、企業の皆様のご理解のもと是非ともこの様な大会を挑戦の場、成長の場として捉えて頂き益々発展していく事の良いきっかけとなればと思っております。結びにWSC2022 SEに参加する選手よりメッセージを添えさせて頂きます。精一杯がんばって参ります!行ってきます!

■杉浦 悠月 選手の大会前のコメント

WSC2022 SEの日本代表として大会に参加をさせて頂きます。これまでを振り返りますと、国際大会に向けての日々戸惑う事やモチベーションを維持すること等、辛いことも沢山ありましたが、練習を積み重ねていくうちに出来ることが増え、上達していることを実感する事ができ、新しいことを学ぶことが楽しいと思えるようになりました。
こうして沢山の経験をさせて頂けているのも会社のバックアップはもちろん、上司や先輩方など、関係し協力してくださる多くの方々のお陰です。
国際大会では結果を残したいという気持ちはもちろんですが、大会で自分が経験したこと、学んだことを次の選手や、レストランサービスに興味を持っている方に伝えられればとも思っております。そのためにもまず私自身がこの大会に精一杯の力で挑み、楽しんできたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

*2022年10月5日発行の会報誌「HRSnews秋号」より転載


■HRS森本会長が激励


右から 訓練指導員 鈴木 秀明 さん、日本代表選手 杉浦 悠月 さん、HRS会長 森本 昌憲、技能五輪日本代表エキスパート 細野晃一さん(森本会長以外は株式会社シャインズ所属)

10月23日から4日間の競技日程で、ルツェルン(スイス)で開催される技能五輪世界大会(WorldSkills Competition 2022 Special Edition)に、日本代表として出場する杉浦 悠月 さん(株式会社シャインズ)が、HRS森本会長を表敬訪問。

2020年の技能五輪全国大会で金賞を受賞した杉浦氏は、本来であれば、2021年の世界大会「上海大会」に出場予定でしたが、世界情勢の影響で上海大会が延期、更に延期から中止となりスイスでの代替大会が決定したのは、この7月のことでした。混乱するなかで準備をし、モチベーションを維持することはとても大変なことであったと推察します。HRS森本会長は、杉浦選手はじめ、日本代表団の皆様には、世界のステージでしか体験できない気付きや学びを、日本の料飲業界に持ち帰っていただきたいと激励しました。

*2022年10月19日配信の「HRSメールマガジン」より転載


■「WSC2022SE」を振り返って

この度は、「WSC2022 SE」に参加させて頂きまして誠にありがとうございました。HRSはじめ所属企業、国際大会分科会のメンバー、その他多くのご支援ご協力を頂いた皆様に改めまして御礼を申し上げます。 
誌面をお借りして今回は皆様に大会の報告をさせて頂きます。
まず、大会結果から申し上げますと残念ながら目標としていた敢闘賞の獲得はなりませんでした。選手も私達も大変悔しい思いもありますが、コンクールの舞台では精一杯やり切ることができ、これまで経験したことのない充実感も同時に味わわせて頂きました。私自身も各国のエキスパートとともに互いの文化や考えなどの違いを尊重しつつ、円滑な大会運営と厳正な審査を行ってまいりました。その中で感じた日本選手と他国の選手の違いをお伝えさせて頂きます。

<日本選手のもつ優れた点>
・基本的なサービススキル 
・作業の正確さ 
・正しい作業の進め方 
・所作の美しさ

<日本選手の改善が必要な点>
・ゲストとのコミュニケーション 
・料理、ワイン、カクテル等のプレゼテーション 
・フレキシブルな対応力

杉浦選手の大会得点は689点(700点以上が敢闘賞、金賞フランス 745点、 銀賞台湾 739点、 銅賞スイス 736点)

特に優れた点で挙げた4つの点は日本人の持つ強みだと思います。各国のエキスパートからもこの点は褒めて頂くことが多く、評価を頂けたと思っております。しかしながら改善点でも挙げた通り各国の選手はコミュニケーションやプレゼンテーションの点をかなり重要視して取り組んできており、日本としては言語の問題もある中、大きく溝をあけられてしまった部分だとも感じました。そして何より改善が必要な点は対応力です。今回は代替え大会ということもあり、我々が現地入りしてからも器材や備品、食材に至るまで準備が追い付かず、揃っていないものが大変多くありました。
選手には本番当日に説明や変更を伝えられる点が本当に多くあり、かなりの混乱があったかと思います。
しかしながらその様な状況下でも上位入賞した選手は、与えられたものと状況で自分自身のパフォーマンスを最大限発揮するすべを持っておりました。様々なイレギュラーがあっても動じず、冷静に対応している様子を見て、今後の日本選手の訓練にも是非意識して取り組んで頂きたい点であると感じました。

■レストランサービスの更なる高みへ

今大会は規模も縮小され各国での分散開催ではありましたが、各選手は一生に一度の機会を大切にし、精一杯ベストを尽くし、多いに楽しみ、最後には互いを讃えあう。そんな素晴らしい光景がいたるところで見受けられました。
それに加え各国の選手たちのこの職業に賭けているという強く熱い気持ちがひしひし感じられました。どの選手も自分の可能性を信じており、自分の将来を楽しみにしてイキイキとしている所にすごく刺激を受けました。

WorldSkills Competitionは今後も2年ごとに開催されます。次回大会は2024年9月にリヨン(フランス)にて開催されます。経験させて頂いたからこそ思うのですが、本当に素晴らしい大会ですし若い選手達が情熱をもって参加する価値のある大会だとも思います。事業者の皆様、学校の先生方、業界関係の方々、そして何よりこれからサービスパーソンを志す皆さん。是非、WorldSkills Competitionに挑戦をしてみてくだい。志を同じとする世界中の仲間が皆さんを待っています。そして皆さんと共に近い将来、日本選手が表彰台の一番高いところで日の丸を掲げることが出来る様、オールジャパンで取り組んで行きましょう。改めまして皆様の多くの励ましとご支援に感謝申し上げます。この度は本当にありがとうございました! 

■杉浦 悠月 選手の大会後のコメント

皆様からの多くの励ましのお言葉を頂き、WSC2022SEに参加させていただきました。現地入りしてからは、緊張もなくスッキリとした気持ちで競技にのぞむことができ、開閉会式をはじめ大会の雰囲気も含めて全てを楽しむことが出来ました。目標としていた敢闘賞を獲得することは出来ませんでしたが、それでも人生の中で価値ある経験をさせて頂けたことを大変うれしく思います。今大会の悔しさをバネに自身のスキルアップと知識向上に努め、次の国際大会の選手へのサポートもしていければとも思っております。

*2023年1月17日発行の会報誌「HRSnews冬号」より転載


■動画で見るWorldSkills Competition

WorldSkills Competitionはまさに技能のオリンピック。
国際大会にふさわしいカザン大会の開会式の動画と、
ルツェルン大会のレストランサービス職種の動画をぜひご覧ください。


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