鬼滅まったく知らない奴が『劇場版・鬼滅の刃』を観てきた感想

※※※一応、ネタバレありなので注意。※※※

『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』を観てきました。

タイトルの通り、『鬼滅の刃』のことをほとんど何も知らない状態での鑑賞です。漫画やアニメはもちろんのこと、Wikipediaも公式ウェブサイトも何もチェックしてません(敢えてそうした理由があるのですが、それは記事の終盤に書いておきます)。そんな筆者の視点から感想を書いていこうと思います。

結論から言うと、私のような新参者でもめちゃくちゃ楽しめました。

何も知らない奴による『鬼滅の刃』のあらすじ

劇中の描写から、「鬼滅の刃って、たぶんこういうお話なのかな?」と読み取れたのが以下の通り。

〜〜〜

舞台は大正時代ぐらいの日本。雪山に住む少年・炭治郎は家族と幸せに暮らしていたが、ある日「鬼」と呼ばれる異形の存在に家族を惨殺され、唯一生き残った妹も鬼にされてしまう。炭治郎は失った家族の無念を晴らすため、持ったこともなかった刀を握りしめ、鬼と戦うことを決意する。

〜〜〜

劇場版では、鬼討伐の任務のため、炭治郎とその仲間たちが「無限列車」に乗車するエピソードが描かれている。……合ってますかね?

いずれにしても、私のような新規にも優しい構成で、説明がすごく丁寧。おかげで置いてけぼりにならずに済みました。とてもありがたい。

良いなーと思ったところ

まず、キャラクターが良いです。味方サイドも敵サイドも魅力的。「少年漫画はキャラが命である」と誰か偉大な漫画家が言っていた気がしますが、まさにその通りで。主人公は悲劇を背負っていて目的がハッキリしていますし、他の登場人物もそれぞれキャラが立っており、劇中でのびのびと活躍する。少年ジャンプはこれでいいし、これがいいんですよ。

あとは、美しい画面。Fateシリーズが好きなのでufotableの技術力は知っていますが、それが遺憾なく発揮されておりました。鬼滅の刃では「呼吸」と呼ばれる能力で剣術を強化するという設定が出てくるのですが、炭治郎は水属性の呼吸を使うので、波飛沫のようなエフェクトが刀の周りに描かれている。これがまるで葛飾北斎の浮世絵のような、はっきりした線のコントラストが高い絵で描写されていて、めちゃくちゃオシャレ。観てるだけで楽しいんです。アニメーターって凄いですよね……。

キャラクターについて

前項で「キャラクターが良い」と述べたので、この作品の登場人物一人一人にフォーカスして感想を書いていきます。

■炭治郎
家族を鬼に殺され、生き残った妹も鬼に変えられたという悲しい過去を持つ少年。

炭治郎は、肉体や能力ではなく、精神的な強さが輝いている主人公。鬼を斬る者としての実力は自他共に未熟であるという評価な一方、敵の能力を攻略するため、夢の中で何度も自分の首を斬るなんてことをやっていました。いくら夢の中とはいえ、そんなの生半可な精神力で出来るもんじゃありません。炭治郎の魅力は「困難に直面しても立ち向かえる、並外れた胆力」なのかな、と。

あとは、一貫して利他的な人物です。中盤、敵に操られた一般人に、千枚通しで腹部を刺されて深傷を負うシーンがあるのですが、自分が死にそうになった時に「俺が死んだら、彼が人殺しになってしまう!」と発言していたのが印象的でした。仲間から「そんな奴ほっとけ!」と言われたにも関わらずです。不幸な生い立ちもあって、なるべく周りの人たちには幸せでいて欲しい、と考えているのでしょうか。その徹底した利他的な姿勢は、どこか恐ろしいとさえ感じます。こういう主人公、だいたい劇中のどこかでとんでもない無茶をして、それを仲間に嗜めらたりするんですけど、たぶん漫画の中ではそういう場面もあるんじゃないかな。そうして仲間とぶつかって、成長していく。これもまた少年漫画の王道でしょう。

■イノスケ
炭治郎の仲間その1。漢字表記は「猪之助」で合ってるかな……?まさに「猪突猛進」タイプのムードメーカーですが、弱音を吐く炭治郎に檄を飛ばしたりするとても熱い奴。主人公にないものを持ってる名脇役といったところで、この劇場版ではかなり目立ってました。頭がイノシシなので見た目はイロモノだし、空気も読めない奴だけどどこか憎めない。見た目のせいで最初の印象は良くないけど、段々好きになってくる、みたいな。沼ですよね、こういうキャラって。

■善逸
炭治郎の仲間その2。炭治郎の妹のことが好きで、彼女の前だとデレデレする。この劇場版では残念ながらあまり活躍の場はありませんでしたが、一回だけめっちゃ短いけど格好いい戦闘シーンがありました。「女好きで普段はデレデレしてるけど、やる時はやるしちゃんと強い」、ワンピースのサンジの系譜ですね。彼が活躍するお話読んでみたいなあ。能力も雷系でスピードタイプっぽいの、個人的な趣味で好きなんです。

■禰󠄀豆子
鬼にされてしまった炭治郎の妹。この子は炭治郎とセットでよく見かけるのでヒロインってことは何となく知ってたのですが、初見の目からして意外なことがありました。禰󠄀豆子は戦えるんですね。しかも炎の能力を使えるという。まあ、鬼にされてるし、戦闘適性があってもおかしくないわけです。納得。愛嬌があって可哀想なところがあるから守りたくなる存在だけど、守られるだけじゃないヒロイン。後述の煉獄さんも戦う彼女の姿を見て、彼女を鬼を狩る者として認めていました。むしろ、最近は「守られるだけのヒロイン」のほうが珍しくなってきている気がします。時代なのでしょう。

■煉獄さん
炭治郎たちの師匠ポジにして、この映画における実質的な主人公とも言えるキャラクター。目がイっちゃってるし髪型も真・豪鬼みたいになってるので勝手に敵キャラだと思っていたのですが、そんなことはなく、とても芯の通った頼もしい味方キャラでした。「柱」と呼ばれる、鬼を斬る者達の中でもランクが高いと思われる称号を持ち、実力もかなりのもの。「強き者は、弱き者のためにその力を使うものだ」という母の教えが彼の核にはあり、それを全うすべく刀を振るい続ける。映画の主役に相応しい魅力を持つキャラクターです。もう「煉獄さん編」と言ってもいいんじゃないでしょうか。

どうでもいいんですが、煉獄さんのお父さんと弟、髪型も顔のパーツもみんな似すぎじゃない?もうちょっと個性出たっていいじゃん、片方は母親似とかさ。そこだけはちょっとジワっちゃいましたけど、もしかしたら何か理由があるのかも。煉獄家の男子はあの髪型にする伝統がある、とかね。いや知らんけど!深読みしすぎかもしれんけど!

■夢野郎(名前わからん)
この劇場版における敵で、人々を眠らせる能力を持つ鬼。「人をもっと食って強くなって、ボスに認められたいわあ……せや!列車の乗客全員眠らせて、まとめて食えばええやん!」ということで計画を思いつき、無限列車をグログロな状態にした張本人。かなり用心深い性格で、周到な準備を以て炭治郎達を追い詰めました。てっきりこの劇場版のボスかと思ったら、彼の退場後にさらに強い鬼が出てきた上に、劇中ではついぞ名前も出てこなかった気がするので、中ボス・噛ませ感が強い。……が、最期まで「高みに登ることだけを考え、人間の命を奪うことに毛ほども良心の呵責を感じない」悪役を貫き通した姿勢には、一種の清々しさを感じました。こういうタイプのキャラは、最後に改心とかしたら妙に可哀想になっちゃうからね。同情の余地が無いくらいが良いんです。

ところで、鬼ってみんな元人間なんでしょうか?だとしたら、夢野郎も人間だった頃があるのかな……。

■アカザ(?)
夢野郎を倒した後、無限列車の現場に闖入してきた鬼。漢字表記が分からない。この劇場版ではラスボスとして君臨し、手負いの炭治郎に代わり煉獄さんが彼と対峙します。鬼の中にもランクがあり、彼は「上弦」と呼ばれる強い鬼にあたるらしい。実際にその強さはチート級であり、斬っても斬ってもあっという間に身体が再生する。

そして、戦闘狂なんですよね。こいつもこいつで、悪役として芯が通っている。手負いの炭治郎に向かって「弱者」と言い放ち、逆に「強者」と認める煉獄さんに向けて、「殺すのは惜しい。お前も鬼になれ。鬼になって俺と戦い続け、高みに昇ろう」としきりに声をかけます。よくあるよね、強い味方キャラが更なる強さに溺れて闇堕ちしそうになるっていう。でもそこはさすが煉獄さん、終始彼の言葉に耳を貸すことはなく、人間として戦い続けました。

劇場版の中では、結局彼を倒すことは叶いませんでした。炭治郎、強くなって、煉獄さんの代わりにぶっ倒してくれよな……。

まとめ

鬼滅の刃では、鬼のように寿命も長く、傷ついてもすぐに再生するような肉体的な強さではなく、儚い命の人間だからこそ持ちうる「心の強さ」の素晴らしさが描かれています。心の強さは、家族や仲間を守るために自分を奮い立たせてくれる。炭治郎が鬼と戦う理由は、世界平和や社会のためではなく、他でもない家族や仲間のため。PG-12が付くぐらいなので描写がやや過激だったり、舞台が大正時代だったりと見方によっては尖った部分がありつつも、やはり中身を紐解いていけば王道の少年漫画。この作品が多くの人に愛される理由が分かった気がします。

最近、会社の図書館に鬼滅の刃の単行本が並んでいるので、これを機に読んでみようと思います。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

余談:何も情報を入れずに観た理由

以前YouTubeで以下のような動画を視聴して、面白いなあと思ったのが、主な行動の動機です。

この動画の投稿者・沖田遊戯さんは、劇場版Fate HFの三部作の第三部をFateのこと何も知らずに観たという猛者です。あんな一見さんお断りの作品、よくミリしらで観ようと思ったな……。でもこの方の考察はだいたい合ってて、映画好きって凄いなと思いました。よろしければ是非ご視聴ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?